マネタリーベースを増やしてもマネーストックが増えない理由

2018年3月7日

お金が銀行の信用創造でつくられることは、前回の記事で説明した通りです。

そして不景気のとき、つまり経済成長率であるGDPの伸びが鈍いときは、お金の量の増え方が鈍いことを意味します。

ということで、2013年に日銀による異次元の量的金融緩和の導入が決定し、市中に出回るお金の量を増やすことで2%のインフレに誘導する試みが始まったのです。

異次元の量的金融緩和ってなに?

量的金融緩和とは、金融機関が保有する国債を日銀が引き受け、代わりに金融機関にお金(マネタリーベース)を供給することです。

金融緩和には金利を下げる効果があり、企業がよりお金を借りやすくなります。

このマネタリーベースの伸びをみれば、まさに異次元の金融緩和であることが理解できます。

マネタリーベース
マネタリーベースの1970年から2018年までの推移 出典:日本銀行

量的金融緩和と聞けば、日銀が輪転機をフル回転し大量にお札を刷るというイメージを持つ人もいると思いますが、実際にはお金のデータが日銀当座預金に記録されるだけです。

金融機関は国債を保有しているときは金利がついていましたが、基本的に当座預金には金利がつかないので大変です。

日銀当座預金のお金をどこかに融資し利息を得なければ、預金者に利子を払うことができなくなります。

銀行の主な仕事が、集めた預金を誰かに貸し出し、貸し出し金利分の利息を得ることだからです。

※実際には日銀当座預金に0.1%の金利をつけています。そうしないと国債を手放してくれないため

量的金融緩和の効果はあったのか?

しかし企業は、いくら日銀が2%のインフレ目標を設定し金利を低く抑えたとしても、お金を借りて設備投資しようという気にはならないようです。

それはマネーストックの伸びが、マネタリーベースの急激な伸びに対して反応していないことからわかります。

マネーストック
マネーストックの2003年から2018年までの推移 出典:日本銀行
マネーストック前年比
マネーストック前年比1980年から2018年までの推移 出典:日本銀行

それも当然でしょう。

日本では金融緩和をする以前から超低金利であり、企業はお金が借りやすい状態であったにもかかわらず、お金を借りていなかったのです。

そんな環境で、2%のインフレ目標を設定したところで「今のうちに設備投資しておこう」という企業があるとは信じがたいのです。

金利
金利の1980年から2018年までの推移 出典:日本銀行

今説明したロジックが正しいとすれば、今騒がれている出口戦略(量的金融緩和の縮小)が行われても、危惧されている金利の急上昇が起こらないことになります。

多少の金利上昇や株価・為替の変化はあるかもしれませんが、金利が急上昇する理由が見当たらないからです。

そこで疑問が沸き起こります。

では、一体なんのための異次元量的金融緩和だったのか?

超低金利時代には、金融緩和だけではインフレ誘導できないという社会実験だったのかもしれません。

まとめ

  • マネタリーベースを増やしても、金融機関の貸し出し先がなければ日銀当座預金に積みあがるだけ
  • 超低金利時代に量的金融緩和をしても効果が薄い
  • 量的金融緩和を縮小しても、金利が急上昇する理由がみつからない

次は、マネーストックを増やすという経済対策は効果があるのか?について考えていきます。