民間と政府の消費が低迷する中、今後も続く増税と緊縮財政で景気回復はさらに遠のく
NHKで、以下のニュースが流れていました。
国の財政について政府の経済財政諮問会議は、歳出の効率化は進んでいるものの、税収の伸び悩みや消費税率の引き上げ延期などで悪化しているとして、今後3年間程度を構造改革期間と位置づけ、健全化に向けた具体策の検討を本格化することにしています。
「歳出の効率化」とは要するに、公共事業や社会保障費などの政府支出を削減する緊縮財政のことです。
この報道では財政健全化が進まないのは、「税収の伸び悩みや消費税の引き上げ延期」を主な原因としてあげています。
しかし本当に緊縮財政をし消費税を引き上げて、税収を伸ばすことは可能なのでしょうか?
税収を伸ばすために必要な経済成長
そもそも税収は、国民経済(名目GDP)が成長しなければ伸びません。
GDPは生産面、支出(消費)面、分配(所得)面の三面等価の原則が成立しています。税金は、支出面では消費税などで、分配面では所得税や法人税などで名目GDPがら徴収するからです。
確かに消費税を引き上げることで、民間消費からの税金が増えます。しかし、消費税を上げることにより民間消費が落ち込み、企業活動が減速することによる税収の押し下げ効果も必ずあります。
景気が過熱してインフレ率が高いときは、スタビライザー(安定装置)として消費税は効果的ですが、日本はデフレ傾向が約20年も続いているのです。民間の需要が不足しているときに消費税を上げるのは、明らかに経済政策として間違っています。

また財政健全化のために緊縮財政により政府支出まで絞ってしまうと、全体の消費が落ち込むことで景気が悪くなりGDPの押し下げ効果が生じ、税収がさらに下がってしまいます。そうするとさらに歳出を削ろうという話になり、景気が断続的に縮小する恐慌スパイラルに入ってしまいます。政府の経済財政諮問会議がやろうとしていることは、そういうことです。
経済財政諮問会議の目的は構造改革
これは経済財政諮問会議の目的が、経済成長をすることで税収を伸ばし、財政健全化を図るというデフレ期には正しい経済政策を推進する気がないことを意味します。
彼らの目的は、あくまで構造改革なのです。
構造改革をするためには組織を弱体化し、そこに外資などを呼び込み新たな仕組みを作ることが有効なのです。公共事業を減らすことで、土木建設業がひどい状況になっているのが典型的です。

土木建設業が衰退することで東日本大震災のような大災害が起きたとき、国内の業者では対応しきれなくなりそこに外資が入り込むチャンスが生まれます。国民の税金が、海外資本に奪われることになるのです。最近では大雪の除雪作業さえままらなない状況が露呈しました。
弱体化の対象は、分配(所得)面のGDPが増えない国民にも及びます。小泉内閣のとき、「今の痛みに耐えて明日を良くしよう」という構造改革のためのスローガンを国民が熱狂的に受け入れたのは、今思えば異様な光景です。
アベノミクスの第二の矢である「機動的な財政政策」は、大規模な公共投資(国土強靱化)を意味していたため多くの国民が支持したはずです。しかし今自民党のHPをみると、「機動的な財政政策とは、まさにメリハリのある財政政策を意味します。」と紹介しています。
メリハリとはどういう意味でしょう?緊縮財政と解釈することもできそうですが、ぼくの感想では国家的な詐欺でしかありません。
米国ではトランプ大統領が、巨額のインフラ投資を決定しました。これまでの行き過ぎた構造改革のより戻しと捉えることができます。一方日本では、今後3年間もグローバリゼーション、つまり新自由主義信奉者による構造改革が進むようです。
残念なことに、グローバリゼーションに反対の声が日本ではあまり聞こえてきません。
まとめ
- 国は財政健全化のために必要なのが消費税増税と構造改革(緊縮財政)と判断
- 消費税増税と緊縮財政は、GDPの押し下げ効果があり、結果税収が落ち込む可能性が高い
- 税収が落ち込むとさらに緊縮財政を進め、財政健全化を追求するあまり不況スパイラルに入る可能性も
- 経済財政諮問会議の目的は、経済成長による財政健全化ではなく構造改革
- 構造改革により民間に競争原理を持ち込んでも、国民に不利益になる可能性が高い
- 米国では行き過ぎた構造改革を反省し巨額のインフラ投資を決定、日本では構造改革によるグローバリゼーション政策が今後強化される
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