国債金利が上昇したら発行済み国債の利払いが上昇するという悪質なデマ

2018年4月4日

Yahooニュースで時々、財政健全化の必要性をもっともらしい理屈で解説している記事が流れます。

典型的なのがこれ。

歴史的に特異な状況にある日本財政:中長期の社会保障の姿を示せ

法政大学経済学部教授の小黒 一正さんの記事です。やはり、財務省関係者(元財務省財務総合政策研究所主任研究官)です。

発行済み国債のほとんどが固定金利

記事の中で明確な間違い、好意的にとっても言葉足らずの内容がこれです。

国債の利回りが1%程度(発行済み国債の加重平均金利)で済んでおり、約1000兆円の政府債務の利払い費が約10兆円に抑制できている。しかしながら、金利が5-6%に上昇しただけで、利払い費は50-60兆円と5-6倍に膨らむ。

ヤフコメで以下の指摘をしたのはぼくです。

「そう思わない」が9票あるのが気になりますが、ぼくが間違っていたら指摘してほしいところです。

まさか大学教授が、発行済み国債のほとんどが固定金利であることを知らないわけはないと思います。

ということで、この記事は財務省の財政健全化の必要性を嘘を交えて説明する悪質なデマである可能性が高いと言わざるを得ません。

悪質なのは、様々なデータを駆使し、ある一つの目的のために結論を誘導しているところです。

一つ一つ指摘していくと、とんでもなく長い文章になってしまいそうなのでいくつかピックアップしたいと思います。

戦中後の日本と現在の日本を、総債務残高(対GDP)で比較しても意味がない

日本財政は、歴史的かつ国際的に極めて特異な状況にある。現在、国・地方を合わせた政府の総債務残高(対GDP)は200%超に達している。これは第二次世界大戦末期の1944年度をも超える歴史的水準にあるが、考え方によってはこの時よりも深刻かもしれない。理由は単純で、第二次世界大戦末期の債務は、戦争さえ終われば、後は改善の方向に向かっていくが、現状の債務問題は、高齢化の進展で社会保障費が膨張する中、さらなる財政赤字の拡大圧力が生じていくからである。

記事の冒頭から突っ込みどころ満載ですが、空襲などで国内のインフラがズタズタになり、生産能力が大きく棄損した時代と総債務残高(対GDP)を比較することの意味がまったくわかりません。

どうしても比較したかったら、当時のGDPとインフレ率、金利という重要な指標も比較するべきでしょう。

「現状の債務問題」とありますが、何が問題なのでしょう?

「国際的に極めて特異な状況」とは、どこの国との比較でしょう?

民間の貯蓄不足のため国内で国債を消化できず、海外から借金をしている国が普通なのですが、日本もそうすべきなのでしょうか?

「国際的に極めて特異な状況」といえば、日本以外の国ではGDPが20年間で、最低でも1.5倍増えています。

小黒さんが主張する緊縮財政に舵を切った1990年代後半から20年間、日本では成長がとまってしまったのです。

「高齢化の進展で社会保障費が膨張する」とありますが、社会保障費はGDPの成長に寄与します。

社会保障費を削減し、保険料を上げるという緊縮財政がGDPの成長を阻害した可能性もあります。

もし日本が他国並みに成長していたら、少なくともGDPは750兆円、税収も75兆円程度確保でき、いわゆる「債務問題」も緩和できていた可能性もあります。

その重要な可能性を記事で紹介しないのは、まったく経済成長による財政健全化の可能性を感じないということでしょうか?

冒頭だけの突っ込みで疲れてしまいましたので、この辺でやめにします。

ただ、この大学教授が集めたデータは利用価値が高いので参考にさせていただきます。

残念なのは、このぼくと同世代の公共経済学教授が、財務省の目的達成を国民の不利益より価値のあることだと考えている可能性が高いことです。無意識にそれをやっているとしたら、それも問題なのですが。とにかく、明確な間違いがあるニュースには今後も目を光らす必要がありそうです。

まとめ

  • 国債金利が上昇したら発行済み国債の利払いが上昇するというのは明確な間違い
  • 間違いを認識しながらデマを流布する財務省の御用学者がいる
  • 「政府の総債務残高(対GDP)が200%超」の何が問題なのかを誰も説明できない
  • 膨張する社会保障費はGDPの成長に寄与する側面もある
  • 20年間で日本が他国並みに成長していたら、いわゆる「債務問題」は緩和していた