実質賃金を上げながら経済成長するために必要な設備投資による生産性向上

日本では、大企業を中心に業績が改善しているようです。しかし近年は、利益を設備投資や従業員の給与に還元するより、内部留保を増やす傾向にあります。

金融機関からの貸し出しの推移をみると、大企業では2002年の水準に戻りつつありますが、中小企業では低いまま横ばいが続いています。

 

企業規模別に見た金融機関からの貸出の推移
企業規模別に見た金融機関からの貸出の推移 出典:経済産業省

景気が回復の兆しを見せていますが、中小企業は依然として設備投資を控えているようです。

企業の割合は、大企業が0.3%に対して中小企業が99.7%と、世の中の企業はほとんどが中小企業す。中小企業が積極的に設備投資をして生産性を向上しないと、実質賃金上昇を伴う経済成長は難しいでしょう。

借金にはネガティブなイメージがありますが、経済成長するためには企業がお金を借り入れて設備投資をし、生産性を高める必要があります。誰かの生産は誰かの所得になりますので、借り入れにより生産量を増やすことで所得が増えるのです。

人手不足は生産性向上のチャンス

日本では生産年齢人口の減少により、人手不足が深刻化しています。

景気が上向ているときは、人を増やせない企業は設備投資をすることで生産性を高めようとします。同じ労働力で生産量が増えるため、従業員の所得も増えるはずです。

しかし景気の先行きが不透明なときは、設備投資ではなく派遣社員外国人労働者など安い労働力という選択肢がある場合、企業は設備投資より手軽に生産を増やせる、安い労働力で対処しようとするでしょう。

実際に日本で働く外国人労働者と非正規労働者の数は増加の一途です。失業率が低いにもかかわらず、実質賃金が上昇していない原因のひとつと考えるのが自然でしょう。

正規雇用と非正規雇用労働者の推移
正規雇用と非正規雇用労働者の推移 出典:東洋経済

設備投資不足による景気の低迷

経営者が設備投資に踏み切れない事情もわかります。人手不足ではありますが、将来的に需要が回復する傾向もみえないからです。

設備投資のリスクをとるより、短期間で人手不足を補える非正規労働者を雇うのは自然の流れでしょう。その判断が設備投資による需要増加を抑え、結果設備投資できないとう悪循環になっているのです。

とはいえ、企業の設備投資は増加の傾向がみえますので、民間需要の回復がさらに設備投資を呼ぶ好循環になる期待もありますが、消費税10%への増税を控えており楽観はできません。

やはり景気低迷は、1990年代後半の消費増税と緊縮財政の影響が大きいようです。

バブル崩壊の影響で、民間企業は設備投資を控えて借金の返済に努めました。1990年代前半は、民間投資の不足を政府支出で補っていましたが、緊縮財政をとることで回復しかけていた民間需要も政府支出も落ちてしまったのです。

なぜか日本では、政府の借金は毛嫌いするのに、民間企業の借金に対しネガティブなイメージを持っていないようです。経済成長するとは、誰かの借金が増えることと同じことなのです。

民間が借金をしないときは政府が、民間の借金が増え景気が過熱し始めたら政府の赤字を減らすという、まともな経済対策をしていたら、今の20年間ゼロ成長という状況は回避できていたのではないでしょうか。

まとめ

  • 近年、大企業は設備投資のための借入金を増やし始めた
  • 中小企業の借入金はピークの70%程度と低迷のまま
  • 人手不足は設備投資による生産性向上のチャンス
  • 雇用環境の規制緩和で低賃金労働者を雇いやすくなったのが、実質賃金の伸びを抑制
  • 民間が借金をしないときは政府が、民間が借金をして景気が過熱してきたら政府の赤字を減らすのが適切な経済政策