GDPをわかりやすくブレークダウンしてみる。やっぱりGDPの大きさは需要が決める

辛坊治郎さん、辛坊正記さん兄弟共著による「日本経済の真実」は、経済をわかりやすく解説してくれる良い本だと思います。

ただ、サブタイトルに「ある日、この国は破産します」とあるように、破産するという結論を導くためにデータを解釈しているので注意が必要です。

データ自体は間違いはないので参考にしてもいいのですが、結論は参考にしない方がいいです。

本が出てから8年経ちますが、破産(国債デフォルトのこと)を示すような経済指標の兆しはありません。一般的にデフォルトの心配が出てくると、国債金利が上昇しますが、日本では20年ほど世界最低水準で推移しています。

GDPを理解するためにブレークダウンしてみる

慶応大学、コロンビア大と華々しい学歴を有する辛坊兄ですから、データの集め方と扱い方がとても上手だと感じました。

そこで本書の「これがGDPの内容だ」を参考にさせていただき、日本のGDPをブレークダウンしてみたいと思います。

2016年名目GDPの生産面の総額は、約540兆円です。ちなみにGDPは、生産面、支出(消費)面、分配(所得)面が等しくなる、三面等価の原則が成立します。

2016年に日本で生産された540兆円は、家計(給与など)、企業(設備・利益など)、その他(政府の間接税など)に分配されます。そこから家計(民間最終消費支出)が300兆円、政府(政府最終消費支出)が106兆円、民間・政府の設備投資(民間企業設備・民間住宅・公的固定資本形成)が127兆円、純輸出(輸出-輸入)に5兆円が支出されます。

2016年GDP内訳
2016年GDP内訳 内閣府データより作成

政府支出の106兆円は、防衛・警察、教育、医療などの公共サービスや公務員給与などに使われた合計です。民間・政府の設備投資127兆円は、民間企業の設備投資や公共事業による道路や港などの社会インフラ整備のために使われた合計です。純輸出の5兆円は、海外との取引で黒字になった合計です。

デフレ期のGDPは需要が決める

そして、同書はこのように説明します。

「企業」が生み出したGDPが、先ず家計と企業自身に分配され、さらに政府と家計と企業に再分配されて最終的な消費や投資に使われます。(中略)
これらを増やすためには、ます、国内の「生産」を増やす、すなわち、その大半を担っている「企業群」が生み出す「付加価値」を増やすしか方法はないのです。「家計も政府も豊かな日本を作るには、元気な産業と企業を育てる以外には方法がない」ということを、しっかりと押さえておいてください。

「確かにその通りだなあ」と、聞き流してしまいそうになります。

しかしここには、新自由主義の基本的な考えが表されています。それは、需要の増減についてまったく考えていないことです。

需要が旺盛なインフレ時には、生産すればするだけ売れるので、生産を拡大することで経済成長できます。しかし需要が減少しているデフレ期に生産を増やしても、価格が下がり続け、企業の業績が悪化するだけです。

ぼくは、製造業の生産管理をしていた経験があります。生産を増やすのは簡単でしたが、基本的に受注生産だったので無暗に生産を増やすわけにはいきませんでした。余剰在庫が増えると決算前に値下げで投げ売りしなければならず、可能な限り在庫は持たないようにしていたのです。

それがマクロ経済になると、単純に生産を増やすだけでGDPが拡大するとは信じ難いのです。

それよりケインズ経済学的に、民間需要が低迷しているときは政府赤字の一時的な増加を許容し、政府支出により需要拡大すべきとの理屈の方がしっくりくるのです。そして、民間需要が回復してきたら政府支出を減らすことで、財政健全化を目指すのが正攻法ではないでしょうか。

新自由主義を信奉する人たちは、需要を増やすには供給を増やせばよいという「セイの法則」が成立する経済学の下で生産面の重要性を説き、小さい政府やグローバリズム、規制緩和を推奨します。

デフレ期には財政出動すべきと主張する人たちとの意見の相違は、そもそもGDPの解釈が違うことが根本原因にあるようです。

まとめ

  • GDPは、生産面のGDP、支出面のGDP、分配面のGDPが等しくなる
  • 新自由主義者は、生産面のGDPが経済を左右するもっとも重要な要素だと考えている
  • デフレ期には生産を増やしても、モノやサービスの価格が下がるためデフレが加速する
  • 民間の需要が低迷するデフレ期には、政府支出で総需要を支えるべき
  • 新自由主義者と財政出動すべきと主張する人たちのと意見の違いは、GDPの解釈の違いが根本原因