郵政民営化は国民にとってメリットはあったのか?「官から民へ」の虚構

日本郵政グループの決定が、メディアを騒がせています。

正社員の待遇下げ、格差是正 日本郵政が異例の手当廃止

日本郵政グループが、正社員のうち約5千人の住居手当を今年10月に廃止することがわかった。この手当は正社員にだけ支給されていて、非正社員との待遇格差が縮まることになる。「同一労働同一賃金」を目指す動きは広がりつつあるが、正社員の待遇を下げて格差の是正を図るのは異例だ。

 

2007年10月日本郵政公社が民営化し、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命が日本郵政グループとしての経営を開始しました。

郵政民営化といえば小泉政権の郵政解散が思い出されるように、まさに小泉元首相の政治生命をかけた悲願だったのです。

2005年8月7日に参院で郵政民営化法が否決されると、その日に衆院解散を強行しました。当時は小泉劇場と呼ばれる政治ショーを国民は無批判に受け入れることで郵政民営化を強力に後押し、郵政民営化のみが争点という異常な選挙で自民党は大勝し、選挙後の臨時国会で郵政民営・分社化法が成立しました。

イメージだけで郵政民営化を支持した国民

当時は多くの国民が郵政民営化を支持しましたが、その理由はと問われると、「民営化により非効率な郵便事業が改善され、サービスが向上する」といったイメージのみだったように思います。

当時の小泉首相が発していたメッセージも、まさにイメージ先行の「官から民へ」のスローガンのみでした。

小泉内閣メールマガジン「らいおんはーと~小泉総理のメッセージ」

郵便、郵貯、簡保は国民生活になくてはならない便利なサービスですが、果たして公務員でなくてはできない事業なんでしょうか。民営化すれば、民間の知恵と工夫でもっと便利なことができるはずです。

「官から民へ」が正しいと疑わない世界では、「独立採算制の郵政公社には税金を一円も投入していないのに、何で民営化する必要があるんだ」、「3事業一体経営だから成り立っているユニバーサル(全国一律)サービスを、分社化すれは維持できなくなる」、「他国で郵政事業を民営化してうまくいっているケースはない」との正当な声はかき消されてしまったのです。

今冷静に考えると、あの国民的狂騒は何だったのかとうすら寒く感じます。本当に日本国民は、空気に流されやすい性質を持っているようです。その流れはその後も、民主党政権樹立や東京都知事選の小池劇場で繰り返されることになります。

郵政民営化のメリットデメリット

郵政民営化から約10年が経過しましたが、国民にとってどのようなメリットとデメリットがあったのでしょう?

民営化のメリットとして、自由な経営ができるようになり国民の利便性が高まるというものがありました。確かに窓口で取り扱える商品が増え、対応が良くなったとの声も聞こえてきますが、劇的に良くなったというわけでもなさそうです。しかも日本郵便が提携して窓口販売している保険が、米国の保険大手アフラックというのも腑に落ちない感はあります。

経営に関しても、2015年に買収したオーストラリアの物流会社の業績不振により赤字計上するなどしたためか、国が保有する株の売却も予定通りに進んでいないようです。

国の関与が薄れることで民間との競争が始まり、サービスの向上と低価格化が進むとの見立ても外れているようです。日本郵政グループは40万人の従業員と2万4000の事業所を擁する日本最大の企業グループです。しかもはがきや手紙などの信書を独占的に扱える優遇処置もそのままです。

電電公社(現NTT)や国鉄(現JR)は民営化の際、地域間競争を促すため地域分割されましたが、なぜか日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命と業務別分割はされましたが、地域分割はされていません。

これで公平な競争が始まるとは、とても思えませんし、信書の取り扱いについて不公正だとヤマト運輸は訴えています。株の売却が進み国の関与が薄れても、ユニバーサルサービスを維持できるのかも不透明なままです。

今回の正社員待遇の削減だって、当時の国民は想像していたでしょうか?

郵政民営化はそもそも小泉元首相の私憤から?

独裁的な手法を使ってまで、お世辞にも喫緊の課題でなかった郵政民営化を強行したのは、小泉元首相の私憤が理由との声もあります。

実は小泉元首相は、急死した父小泉純也氏の後釜を継いで出馬した選挙で落選をするという苦い思いを経験しています。その原因に特定郵便局側の造反があったようです。

また小泉元首相が郵政大臣に就任した際、いきなり官僚の進めていた法案を止めたために埋めがたい溝が生じ、国会答弁などで嫌がらせを受けたため郵政に対して恨みを募らせていったというのです。

小泉元首相が郵政民営化を進める際に発足した研究会の議事録では、小泉元首相が郵便事業のユニバーサルサービスの仕組みを理解していない様子もみられ、郵政民営化による国民へのメリットに対する無関心さが伺われます。

とにかく在任中に郵政民営化を実現したいがために、官僚や自民党内からも反対が少ない骨抜きの郵政民営化法を通した、というのが最も説得力のある実情のように感じます。

そこには筋の通った新自由主義の理念や、国民のための政治をするといった政治家の信念はまったく感じられません。日本国民も、「なんとなくがんばているから」といった、ふわふわした雰囲気で郵政民営化を支持したのではないでしょうか。

そのような風に流される国民性は、インターネットが普及して情報格差がなくなってきた今でも変わっていないように感じます。明るい未来のためにはそのことを国民が認識し、根拠薄弱な風潮をむやみに支持しないことが大切なのです。

一つの安易な決定が将来世代のツケになるというケーススタディを、近頃頻繁に目にします。

まとめ

  • 2005年の郵政解散・選挙を、日本国民は熱狂的に支持し自民党が大勝
  • 郵政民営化して2017年で10年が経過したが経営は不調で、株の売却は予定より低調
  • 郵政民営化のメリットは顧客サービスの向上だが、今後もユニバーサルサービスを維持できるかは不明
  • 日本郵便は巨大な組織と信書を独占的に取り扱える優遇を維持したままなので、公正な競争が難しい
  • 郵政民営化の強行は、小泉元首相の私憤から?