「デフレは名目賃金の低下の結果であって原因ではない」だそうです

いろいろ突っ込みネタを提供してくれるインターネットメディア『アゴラ』。2014年と古いのですが、池田信夫氏による下記の記事を読みました。

デフレは名目賃金の低下の結果であって原因ではない

正直、「卵が先か、鶏が先か」の話で、まったく頭に入ってきませんでした要は、「名目賃金が下がったことが、日本がデフレになった原因である」ということです。

記事に掲載されていた図を拝借します。

賃金と物価(1990年=100)と失業率(右軸)出所:厚労省・総務省 出典:アゴラ

グラフのように、物価の下落(デフレ)より名目賃金が下がりはじめるのが早いため、「名目賃金が下がったことが、日本がデフレになった原因である」と主張しているのです。

なぜ名目賃金が下がっているのか?

池田氏は、以下のように名目賃金が下がる理由を説明します。

グローバルな単位労働コストの収斂によって先進国の賃金は下方圧力を受けるが、日本では賃金交渉力の弱い非正社員が増える一方、中高年社員の賃上げも抑制されたため、名目賃金が下がった。

名目賃金と物価が下がり始めたのがそれぞれ1997年と1998年です。グローバル化は以前から進行していたはずですし、以下のグラフからも明らかなように、1997年(平成9年)前後の非正規雇用労働者の比率は今ほど高くありません。

正規雇用と非正規雇用労働者の推移
正規雇用と非正規雇用労働者の推移 出典:東洋経済

池田氏は故意にかはわかりませんが、1997年と1998年に何が起きたのかに言及していないのです。1997年は消費税が3から5%にあがり、公共事業などの政府支出が大幅に削られる緊縮財政が本格化した年なのです。

アゴラが提示したグラフは、1990年代前半にバブルが崩壊し、緊縮財政が始まるまで財政出動で景気を下支えしていた事実を如実に表しているのです。

以下のグラフでも、1998年(平成10年)をピークに公共事業が削減され続けていることがわかります。

公共事業関係費の推移
1978年~2019年(案)の公共事業関係費の推移 出典:国土交通省

バブル崩壊後に民需が低迷する中、官需まで削減して名目賃金があがるわけがありません。「バブル崩壊」、「消費増税」、「緊縮財政」というキーワードにまったく触れていたいため、何を主張したいのかわからない記事になっているのです。

アゴラは景気に与える財政出動の好影響、消費税の悪影響を認めない

アゴラが一貫しているのは、景気に与える財政出動の好影響、そして消費税の悪影響を認めないところです。

池田氏やアゴラ執筆者たちが、政府支出とGDP成長の相関関係をグラフを使って比較した記事をみたことがありません。

財政出動が景気に好影響を与えないと証明したければ、せめて比較グラフを提示した上で否定するのが筋ではないでしょうか?

一方で、減税と巨額のインフラ投資を決定した米国への批判は一切聞こえてきません。

日本が借金大国だからでしょうか?いえ、本当の借金大国は米国なのです。今や対外純資産のマイナスを一国で引き受け、その額は1000兆円に近づいています。

アゴラには、ぜひ米国に対してもその一貫した姿勢を貫いてほしいものです。

まとめ

  • 池田氏は、名目賃金が下がったことが日本がデフレになった原因であると主張
  • 池田氏は名目賃金の減少は、グローバル化と非正規雇用者の増加が原因と主張
  • 池田氏はなぜ、1997年に名目賃金が減少し始めたのかは無視
  • 1997年は、消費増税され緊縮財政が本格化した年
  • 池田氏は日本のインフラ投資を無駄と主張するが、米国の巨額なインフラ投資決定に関しては無言