女性や高齢者が働く社会って素直に喜んでいいのだろうか?

アベノミクスを評価している人は、失業率の低下と就業者数の増加を主な成果とする一方、評価しない人は実質賃金の低下をその理由としているようです。

どちらの根拠とするデータも正しいのですが、前者は「景気回復の初期段階ではどうしても実質賃金は低下する」と主張しており、解釈に違いが表れています。失業率、就業者数、実質賃金それぞれのデータだけでは、何が正しいのかを判断するが難しいのが現状です。

そこで、公開されているデータ「[PDF]第1 就業状態の動向 1 就業状態別人口 – 総務省統計局」から年齢別、産業別、正規・非正規雇用者数などのデータからアベノミクスの成果をみていきたいと思います。

生産年齢人口が減る中、就業者数は増えている

自民党がHPでアピールするように、安倍政権が発足した2012年から2017年の間に就業者数は増えています。しかも、生産年齢人口が減少する中、就業者が増えているのは確かに成果といえると思います。

特に15~24歳、65歳以上、女性の就業者数の増加が顕著なのがわかります。若年者層の就業者数が増えるのは素直に喜べますが、女性と高齢者に関してはどうでしょう?見方を変えると、女性と高齢者の異常な就業者数の伸びは、「不本意ながら生活のために働かざるを得ない」人が増えているとも考えられます。

それと、他の年齢層と比較し25~34歳、35~44歳、45~54歳の就業者数の伸びの鈍さが気になります。本来この年代は、企業や社会を支えるべき年齢層です。人口減少が進んでいるとはいえ、各年齢層で200万人以上が労働に参加していないのがわかります。

「一億総活躍社会の実現」を掲げるアベノミクスですから、就業者数全体の増加は安倍政権の進もうとしている方向なのでしょうが、本来働くべき人たちを、どうやって労働市場に引き出すかが課題のようです。

若年者層の正規社員は増えている

未来にとって明るい材料といえば、15~24歳の正規社員が明らかに増えていることです。やはり65歳以下のどの年代でも、非正規の増加率より正規社員の増加率の方が高い傾向にあるので、雇用状況は徐々に改善してきているようです。とはいえ、65歳以上の非正規伸びが突出しているのは確かです。

最後に、産業別で就業者数がどれだけ増えたかをみてみましょう。

やはり高齢化を反映して、医療福祉が106万人の増加と突出しています。一方で、好調な輸出で最高益を記録しているという報道が目につく製造業ですが、19万人の増加と他産業と比較しそれほど多くないのが気になります。

以上のデータから、若者の正規労働者が増えているという明るい材料がある中、本来社会や企業を支えるべき20代後半から40代にかけての就業者数の伸びの低さ、労働時間が短く賃金が低い傾向にある女性と高齢者の就業者の突出した伸びが、実質賃金の伸び率の低迷の原因ともいえそうです。

実質賃金指数
平成19~29年の実質賃金指数 出典:厚生労働省

就業者数は増えていますが、まだまだ働ける高齢者や女性はいます。さらに、安倍政権は外国人労働者も増やそうとしています。本来働くべき年齢層はどうしても賃金が高くなってしまい、企業としても敬遠してしまうのではないでしょうか。はたして今後賃金が伸びていくのか一抹の不安を感じざるを得ません。

まとめ

  • 安倍政権になって就労者は増えたが、女性と高齢者の伸びが顕著
  • 25~34歳、35~44歳の就業者数の伸びは鈍く、それぞれ200万人以上の未就労者がいる
  • 若年者層の正規雇用やは増えており、全体でも非正規より正規雇用の増加率が高くなってきている
  • 産業別では医療・福祉の就業者数が突出して増えている一方、業績が好調な製造業では増加が鈍い
  • 女性と高齢者の就業者が増えているが、本当にそれが健全な社会なのかを考える必要がある