目指すべき未来は人の負担を軽減するテクノロジーの普及

安倍政権の目指す「一億総活躍社会の実現」、「 働き方改革」は、今後加速度的に進む生産年齢人口の減少に備えた政策だと理解しています。

一方で、2020年までの自動運転実用化IoTAIロボットの普及など、生産性を高めるテクノロジーにも注目が集まっています。なんとなくのイメージなのですが、政府は前者を前面に推し進めようとしており、後者は企業に任せているような感じです。

さらに言うと、テクノロジーの普及を政府が邪魔している気さえしてくるのです。だって、生産年齢人口が減少するのであれば、少人数でも現状の生産をまかなえるように設備投資をできるようにバックアップするのが政府の役目ではないでしょうか。しかし今政府が行っているのは、雇用の規制緩和によって企業が労働者を獲得しやすくする政策です。企業が設備投資をするというリスクを避け、外国人などできるだけ安価な人材の獲得で生産性を高めようとするのは自然の流れです。

経済面からみても、設備投資が内需を拡大し経済成長を高めることで税収が伸び、財政健全化につながる効果があるはずです。現政権の政策が、失業率低下と過去最高水準の企業業績に貢献していると同時に、思うほど伸びていない企業の設備投資を招いているのではないでしょうか?

着実に進んでいる生産性を高めるテクノロジーの進化

とはいえ、なんとか技術立国の立場を保っている日本の企業は、着実に生産性を高めるテクノロジーの開発を進めています。中でも注目されているのが、筑波大学発のCYBERDYNE社が開発したロボットスーツ『HAL(Hybrid Assistive Limb)』です。

HALは装着することで身体機能を強化し、介護支援などに活用できるサイボーグ型ロボットです。このシステムの優れているのは、人の脳が出す信号を読み取り、装着者が考えて行動を起こそうとしている動きをサポートするところです。

HAL『腰タイプ』 出典:CYBERDYNE

腰に装着する『腰タイプは』、要介護者をベッドから車いすへと移動させるときなど腰部への負荷を低減してくれるので、介護者が女性や高齢者でも無理なく作業ができるようになり、離職率の高さが問題となっている介護現場の労働環境改善の一助となります。

初期費用を含むレンタル料が3年間で約290万円になるなどコストの高さが課題ですが、普及が進みコモディティ化することで様々な現場で生産性が高まることが期待されています。

大和ハウスの工場でも、同ロボットスーツを30台導入するという報道もありました。

ロボットスーツ「HAL®腰タイプ作業支援用」を全工場に導入

2018年4月10日より、CYBERDYNE株式会社(本社:茨城県つくば市、CEO:山海嘉之、以下:サイバーダイン社)が開発・製造するロボットスーツ「HAL®腰タイプ作業支援用」(※1)を全国9工場に計30台導入し、技術者の作業負担を軽減します。

テクノロジーの普及なしには飛躍的な成長が難しい企業

目先のコストだけを考えると、人手不足を補うためにこのような投資をするより、安価な人材確保で対処しようとするのが現状です。しかし長期的な視野に立ったとき、どちらをとるべきかは明確なはずです。

設備投資を怠り、昔ながらの人海戦術で対応してきた企業は、既にテクノロジーの進化に追いつけていません。今は何とか人材確保できているとしても、このままのペースで生産年齢人口の減少が進むとそれも難しくなるはずです。そのときに急に方向転換するのは難しく、安易な人材確保で対処してきたつけが回ってきます。

一方で着実に設備投資を行ってきた企業は生産性向上のノウハウを蓄積でき、無理なく人手不足の時代でも運営して業績を伸ばしていけるでしょう。

昨今の技術革新は目覚ましく、さらに日本にとって幸運なのは人手不足になってきていることです。1954~1973年の高度成長期は、極度の人材不足のため設備投資が活発に行われ、経済の好循環を生み出したのです。

生産年齢人口の減少をネガティブにとらえる向きもありますが、例えば自動運転車が普及したときの効果を考えると、そんなに悲観する必要はないと思われます。そう考えると、安倍政権の目指す「一億総活躍社会の実現」、「 働き方改革」への疑問が芽生えてきませんか?

まとめ

  • 安倍政権の目指す「一億総活躍社会の実現」、「 働き方改革」で企業は安価な労働力にアクセスしやすくなる
  • 安価な労働力にアクセスできる企業は、設備投資を控える
  • 政府が目指すべきは、労働力の増強ではなくテクノロジーの導入促進による生産性向上では?
  • 企業では労働環境を改善するテクノロジー開発が進んでいる
  • 企業は本格的な人材確保困難な時代を想定し、生産性向上を真剣に検討すべき