名目賃金は上昇傾向にあるが、国民負担が増加する中消費拡大は見込めない

ここ最近報道される経済指標からは、一進一退の経済状況がみえてきます。

中でも一筋の光になってほしいのが現金給与名目賃金)です。現金給与は基本給プラス、一時金(ボーナス)や諸手当が含まれたもので、所得税や社会保険料が引かれる前の金額です。

3月の現金給与、2.1%増=好業績で14年9カ月ぶりの伸び

厚生労働省が9日発表した3月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、基本給に残業代やボーナスなどを合わせた現金給与総額は前年同月比2.1%増の28万4464円となった。

8カ月連続プラスとのことなので、給料は上昇傾向にあることは間違いなさそうです。以下のデータは、厚生労働省のHPから取得した5カ月の推移です。

現金給与推移
現金給与推移

12月の金額はボーナス込みなので、金額が高くなっています。企業業績が好調な製造業や、卸売・小売業が堅調に伸びてきているようです。中でも金融・保険業の異常な伸びが気になります。昨年10月から今年3月の間で、9万円も給与が高くなっているのは不自然な感じさえします。

下げ止まりはしたものの、リーマンショック前まで回復していない名目賃金

報道でもあるように、好業績で支給する一時金が現金給料を引き上げており、きまって支給する現金給与額(実質賃金)が伸びていないのも気になります。それに、長期的な動きをみると、消費税が3から5%にあがった1997年をピークに下落傾向にあったのが下げ止まった程度なのです。

名目賃金1990~2018年(2015=100) 出典:NIPPONの数字

名目賃金が大きく下がった2009年は、リーマンショックの影響です。今はリーマンショック前の水準でさえ回復していないのです。企業業績は既にリーマンショック前の水準を超え、過去最高水準にあります。名目賃金の上昇の遅さは、指摘せざるを得ない状況なのです。

民間企業業績推移(利益)
民間企業業績推移(利益) 出典:NIPPONの数字

伸びる要素が希薄な消費支出

現金給与が上昇傾向にあるようですが、景気回復には家計の消費の増加が欠かせません。しかし、状況は厳しいようです。

消費支出、2か月連続減…「持ち直しに足踏み」

総務省が8日発表した3月の家計調査(速報)によると、1世帯(2人以上)あたりの消費支出は30万1230円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月から0・7%減少した。

以下は、総務省の家計調査報告から抜粋したものです。

家計調査報告 出典:総務省

名目が上昇する中、実質が下がるということは、物価上昇に消費が追い付いていないことを意味します。

名目賃金が上昇傾向にあるといえどもいまだ低水準にあり、企業業績だって今後も続く保証はありません。しかも社会保険料は増加傾向にある上、来年には消費増税を控えています。この状況で多少給与が上がったとしても、消費を増やそうとする家計は少ないでしょう。将来のために貯蓄に回すのが関の山です。

過去最高業績をあげている企業でさえ、利益を設備投資に十分に回しているとはいえません。家計も企業も明るい未来を描けていないため、消費や投資を控えているのです。

経済は誰かが消費や投資をしないと回らないのです。民間の消費・投資意欲が低いときは、国が代わりに消費と投資をするしかありません。民間の貯蓄が増加する一方なので、今なら国は低金利で資金調達できます。

国民に不人気な財政出動ですが、人手不足解消のためのインフラ投資や医療・介護現場の労働環境改善、大地震などの災害に備えた国土強靭化など、やるべきことはたくさんあります。

それなのに、国会では余りに些細な問題の追及で時間が浪費されています。それは、国民にとって不幸なことです。

まとめ

  • 名目賃金は上昇傾向にあるが、いまだリーマンショック前の水準に戻っていない
  • 企業業績は過去最高水準にあるが、賃金上昇への反映が遅い
  • 家計消費の伸びが物価上昇に追いついていない
  • 社会保険料の増加や増税により負担増が確実な中、家計消費は増えない
  • 民間消費も企業の投資も低迷している中、経済成長には国の支出が不可欠