賃金が下落しはじめた切っ掛けは1997年の消費増税と緊縮財政だった

経団連は相変わらず、政府に消費増税の実現を積極的に提言しています。

冷血の経団連 国民に痛みを強いてでも消費増税実現を提言

庶民の生活は苦しくなるばかりだ。経団連の榊原定征会長は、安倍自民が大勝した衆院選の結果を受け、「安定的な政権基盤が維持、強化された」と評価。「国民の痛みを伴う思い切った改革は、安定的な政権基盤がないとできない」とし、「消費税は増税しないと財政を再建できないので、勇気を持ってやってもらいたい」と言い放った。

驚くのは、消費増税が「国民の痛みを伴う」ことをしっかりと認識していることです。とはいえ、日本国民も小泉政権時代に「国民の痛みを伴う改革」を熱狂的に支持していた背景もあるわけですが。

まさに消費増税は国民の痛みを伴うわけで、とりわけバブル崩壊の回復段階にあった1997年に消費税が3から5%にあげられたときのインパクトは大変なものでした。それは、現在まで続く賃金の下落の切っ掛けだったのです。

名目賃金1990~2018年(2015=100) 出典:NIPPONの数字

これだけ国民にとって痛手である消費増税を経団連と多くの政治家が支持しており、そんな政治家の一人小泉ジュニアを首相候補としてあげる国民が多いのが現状なのです。

小泉進次郎と消費増税絶対主義…新リーダー候補が見せた予定調和の「軽減税率廃止論」

共同通信の世論調査で、自民党総裁選挙で誰が次の総裁にふさわしいかで、小泉進次郎氏(自民党筆頭副幹事長)が首位になったと報道された。二位が石破茂氏、三位が安倍首相である。自民党支持層だけだと安倍首相の人気は、小泉、石破両氏を大きく引き離している。

大企業や富裕層にとって消費増税は痛みを伴わない

一時期日本でも、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が話題になりました。ピケティ氏は膨大なデータから世界的に格差が拡がっていることを証明し、「ウォール街を占拠せよ」運動の火付け役にもなりました。

ピケティ氏がいうには、資本主義においては労働から得られる所得より、資本から得られる所得の方が大きくなるため自然と格差は広がります。格差是正のためには、相続税など富裕層からの徴税により適切な再配分を行う必要がある、と主張しています。

日本では一般国民の所得が低迷するなか、企業は過去最高業績をあげ、株価や一部の土地は上昇しているため富裕層の所得は伸びおり、格差は広がっていると予測できます。では格差是正すべきとの声があがっているのかといえば、そうではありません。企業の声である経団連は、法人税の引き下げを実現することで利益を増やせるので、むしろ消費増税を推進しています。

消費増税はすべての国民から徴収するため公平だとの意見もありますが、所得の多くを消費に回さなければならない余裕のない家計と、そうでない所得の多い裕福な家計では負担が違います。富裕層は消費税が2%あがろうともそれほどの痛みは伴いませんが、そうでない家計は消費を減らさざるを得なくなります。消費税は格差拡大に寄与するのです。

グローバル化は国民を貧困化する

企業にとって、消費増税により家計の消費は落ち込むため悪影響があるはずですが、グローバルで稼げるような大企業は関係ありません。むしろ、国内の景気が低迷しているほうが、下請け企業や労働者に無理な要求を突き付けられるので都合が良いともいえます。

モノやサービスの価格があがらないデフレ状態が続いた2000年以降も、大企業は堅調に利益をのばしてきています。グローバルで儲けるためには価格競争に勝つ必要があり、常にコストカットの要求にさらされます。大企業は既に、デフレ下で稼げるシステムを構築しているのです。むしろ、デフレから脱却されては困ると考えるのが自然ではないでしょうか?

一般の国民の賃金が下落に転じた1990年代後半は、公共事業などの政府支出の本格的な削減がはじまった時期でもあります。特に公共事業の削減はドラスティックなものでした。

公共事業関係費の推移
1978年~2019年(案)の公共事業関係費の推移 出典:国土交通省

「痛みを伴う」とは消費増税だけでなく、政府から国民に渡るお金を減らす緊縮財政のことも意味していたのです。公共事業費はほぼ日本国内の企業に渡り、社会保障費も国民に渡ります。そのどちらも削減するわけですから内需が縮小し、景気が悪くなり所得も下がるのは自然なのです。

忘れてはならないのは、世界で稼げるグローバル企業にとって国内の不況はそれほど影響なく、むしろ低コストで資材や労働力を確保できるので都合がいいことです。そう考えると、経団連や企業がら支援を受けている政治家が消費増税と緊縮財政に賛成な理由がみえてきます。

まとめ

  • 経団連は消費増税の実現を提言する一方、法人税の引き下げを要求
  • 企業が過去最高業績をあげるなか、1997年をピークに所得は低迷している
  • 消費増税は余裕のない家計ほど負担が大きく、富裕層にとって負担は少ない
  • 消費増税で格差が拡大する
  • 消費増税や緊縮財政でデフレが続くほど大企業には都合が良い