市場は国債を求めている。超低金利でも約3倍の応札がある日本国債

一時高騰していたイタリアの10年国債金利ですが、無事に取引が行われたようです。

イタリア:国債入札、無事にこなす-市場は安堵、既発債利回りも低下

イタリア政府は30日、国債入札を実施し5年債と10年債を発行した。政治危機を背景に今週のイタリア債は売りを浴び入札の成否が注目されていたが、無事にこなしたことで市場はやや安堵(あんど)した。

国債金利が高騰した理由はイタリアの不安定な政治に嫌気がさし、国債市場で売りが殺到したためです。国債でもモノでも同じですが、買いたい人より売りたい人の方が多くなると価格が下がります。国債の価格が下がると金利があがります。

これまでイタリアの10年国債の金利は2%前後で推移していましたが、その金利ではリスクに見合わないと判断されたため一時3.44%まで上昇しました。その後、2.88%まで落ち着きましたが今後の政治や景気の動向次第で再び上昇するリスクはありそうです。とはいえ、2012年前後は7%まで高騰したことを考えると、多少余裕があるのかもしれません。

超低金利でも堅調に応札されている日本国債

イタリアのケースでもわかるように、国債の入札に対してどれだけ市場が応じるかで金利が決まります。下のグラフは、日本の10年国債金利の推移です。

10年国債推移 出典:日本相互証券株式会社

日銀の異次元の金融緩和がはじまったのが2013年ですが、以前より低金利の状態が続いていました。経済学では政府債務残高が増加すると金利が上昇すると教えられますが、バブル崩壊後の日本には当てはまりません。それは経済学がインフレを前提とした学問であり、デフレを説明できないためです。

バブル崩壊後は民間の消費や投資が冷え込み、資金需要が激減します。それでも銀行は預金の金利を払う必要があるため、誰かに貸し出して利息を稼ぐ必要があります。デフレ時には民間が借りてくれないので、政府に貸し出さなければなりません。政府にお金を貸すとは、国債を買うということになります。そのため国債需要が異様に高まり、バブル以降は金利が低下し続けたのです。

いわゆる国の借金が400兆円程度だった20年以上前から、政府債務残高が増え続ければ国債が消化できなくなり金利が上昇するといわれ続けてきましたが、1000兆円を超えてもそんな状況にはなっていません。

財務省のHPで確認できますが、現在でも国債の入札に対して約3倍の応札があります。一時はマイナス金利を導入するほどの低金利でも、市場は国債を求めているのです。つまり市場は赤字国債をもっと発行しても、十分吸収するだけの余力があるのです。それだけデフレが深刻で、内需が高まるまで政府支出を増やす必要があるのに、これまで20年以上逆効果の緊縮財政をとり続け、しかも今後も消費増税など間違った政策を継続しようとしているのです。

政府債務残高だけでイタリアと日本を同一視する愚

イタリアと日本の国債には大きな違いがあります。イタリアは独自通貨ではなく単一通貨ユーロを採用しているために、独自の通貨発行権を持ちません。しかも、国債の買い手か海外の外債の割合が高いため、どうしてもリスクが高くなってしまいます。一方日本国債はすべて通貨発行できる独自通貨で、しかも9割以上が国内で消化されているため最高レベルの信用があります。その違いを示すのが、金利と応札率です。

日本の金利上昇のリスクを指摘する専門家がいますが、金利が上昇するのはお金が国債から他の投資先に向かうことで歓迎すべきなのです。それが株や土地のバブルを生むのであれば問題ですが、正常な資本主義が機能していれば企業の設備投資などに向かいます。景気が良かったときは、日本でも10年国債金利は5%程度ありました。

成功しているとはいえませんが、日銀の異次元の金融緩和は市場にインフレ期待を持たせることで消費・投資意欲を掻き立て、資金需要を高めることを目的としています。消費や投資が増えると銀行が民間にお金を貸し出すようになるので、当然国債価格は下がり金利が上昇します。

金利が少しでも上昇すると「破綻だー」と叫ぶマスコミですが、それが何に起因しているのかを見極めることが大切なのです。とはいえ、イタリアのような国債金利の上昇は日本では考えにくいのですが、その違いをマスコミが理解できるか不安です。

まとめ

  • イタリアの内政不安が国債リスクを高めている
  • イタリアも日本も政府債務対GDP比が高いが、状況がまったく違い単純比較できない
  • イタリア国債は通貨発行権のないユーロ建てで外債率が高い
  • 日本国債はバブル崩壊後需要が高まり、超低金利でも約3倍の応札がある
  • 景気が良くなり民間の資金需要が回復すれば国債金利は上昇する