いわゆる「国の借金」が対GDP比30%でも破綻のリスクに直面するトルコ

米国国債の利上げに伴い、新興国の通貨安が進んでいます。なぜ米国国債が利上げになると新興国が通貨安になるのかといえば、より高い金利を求めて成長率が高い新興国に向かっていたドルが米国国債に還流するためです。これがキャピタルフライトと呼ばれる現象で、アジア通貨危機の引き金になったものです。

新興国でも大きな影響を受けているのがトルコで、リラの下落が国債の信用低下にもつながっています。

米S&P、トルコ国債を格下げ 外貨建ては「ダブルBマイナス」

米格付け会社S&Pグローバル・レーティングスは1日、トルコ国債を格下げしたと発表した。外貨建て長期債務格付けは投機的とされる「ダブルB」から「ダブルBマイナス」に、自国通貨建て長期債務格付けは「ダブルBプラス」から「ダブルB」にそれぞれ1段階引き下げた。

注目したいのが自国通貨建て外貨建てでリスクを分けているところです。自国通貨だと政府は自由に発行できるのに対し、外貨建ての場合主にドルを調達する必要があるためより高リスクになります。

国債が格下げされるということは、日本と同様政府債務が膨らんでいると想像するかもしれませんが、政府債務残高対GDPはわずか30%弱です。しかも、10年前よりその比率は年々減少していました。

トルコの政府総債務残高対GDP比

政府の借金は少なくても民間の借金は膨らみ続けている

トルコの政府債務残高対GDP比は30%弱と低いにもかかわらず、国債のリスクは高まっています。日本では、いわゆる「国の借金」、正確にいうと政府債務残高が対GDP比で200%を超えているので財政破綻するといわれています。ではなぜ30%弱のトルコの方がリスクが高まっているのでしょう?

それは日本とトルコの置かれている状況があまりにも違うためで、いわゆる「国の借金」だけで国のリスクを測るのは大きな間違いなのです。

まず考えなければならないのが、「誰が借金をし、誰が資産を持っているのか」ということです。トルコの場合政府が借金を減らす一方で、民間の借金は増え続けてきました。その額は過去最高水準にあります。

トルコ民間の借金残高対GDP比

なぜ民間がこれほど借金をしているのかといえば、平均すると年率5%程度経済成長しており、貯金をするよりお金を借りて投資した方が儲かるためです。日本のバブルと同じ状況が起きているのです。日本のバブル時は年率約5%経済成長しており、民間は土地や株などに借金をしてでも投資をしていました。その時に日本は民間が借金を増やしていたので政府は借金が少なく、政府債務残高の対GDP比は50%前後だったのです。

政府債務残高だけでリスクを判断する愚

「日本はいわゆる国の借金(正確に政府債務残高)が1000兆円を超えているから破綻する」との考え方が蔓延しています。そのような人たちには、「じゃあ、国の借金が少ないトルコはなぜ破綻リスクが高まっているの?」と聞いてみたいです。

トルコの財政破綻リスクが高まっているのは、米国国債利上げに伴うキャピタルフライトが起き通貨安が加速し、多くの対外債務を抱え過去最高水準にある民間債務の返済リスクが高まるために経済の不安要素が増加したためです。

さらにトルコは慢性的な輸入超過による経常収支赤字国で、10年国債金利を10%以上にすることで外貨を呼び込み高い経済成長を可能にしていました。その結果、8%前後で推移していたインフレ率が2017年から10%を突破し、10年国債金利も13~14%に上昇しています。

この状況で外国資本が逃げてしまうと、トルコには打つ手がないという感じです。外国からの投資で成長をおう歌していたつけを払うときがきたようです。増税や貿易赤字の削減などの対策が必要になるでしょう。

経常収支黒字国で超低金利、インフレ率1%程度の日本とトルコはまったく状況が違うのがわかります。だから日本は安心という話ではなく、国民や民間企業、政府が多少のリスクをとってでも消費や投資を増やさないと経済成長できません。幸いなことに日本は潤沢な貯蓄と内需があるため外国からの資金に頼る必要はなく、トルコをはじめ多くの国より恵まれた環境にあるのです。

ただ不幸なのは、そのことに多くに人が気づいていないだけなのです。

まとめ

  • 米国金利上昇で、新興国の通貨安が加速している
  • 格下げされたトルコ国債の残高は対GDP比で30%弱
  • トルコの政府債務残高は少ないが、民間の借金は過去最高水準に
  • 日本は政府債務残高は多いが、民間の資産が過去最高水準に
  • 外国の資金を頼らず成長できる余地のある日本は、他国より恵まれた環境にある