名目GDPが20年ゼロ成長の日本が経済成長していないというのは迷信だそうです

2018年6月4日

池田信夫氏が主宰するインターネットメディア『アゴラ』で、当人が記事をアップしていました。

「日本だけ成長していない」という迷信

世の中には「日本だけ成長していない」と思い込んでいる人が多いようだ。それを根拠に「もう成長できない」とか「脱成長」という人々がいる一方、「財政出動でもっと成長しろ」という人々もいる。これは本当だろうか。世界経済のネタ帳で調べてみよう(原データはIMF)。

と池田氏はいい、以下のグラフを提示します。

名目GDP(USドル)の推移(1980~2018年) 出典:世界経済のネタ帳

グラフではわかりにくいのですが、日本のドルベースGDPは1995年から減少に転じ、異常な円高だった2010~2012年に1995年水準を上回りましたが、また減少するというゼロ成長なのです。それに対し他の国は、米国は別格なのですが年1.5~2%程度で名目GDPが増えています。その事実を踏まえ日本だけ成長していない(1995年以降)といえるはずですが、池田氏は納得できないようです。

実質GDPが成長していると主張するが

池田氏は日本の名目GDPが1995年以降成長していないことについてスルーし、実質GDPは順調に成長しているんだよと主張します。

ドルベースのGDPは2013年以降の円安で下がったが、実質成長率はおおむね潜在成長率に見合っており、財政出動で嵩上げしても一時的な効果しかない。この人口増加率の違いを補正して一人当たりGDPを比較すると、次の図のように日本はアメリカの7割程度だが、フランスやイギリスと同じぐらいだ。成長率もOECDの平均程度で、特に高いとはいえないが、イタリアのように深刻な低迷に陥っているわけでもない。

一人当たりの購買力平価GDP(USドル)の推移(1980~2018年) 出典:世界経済のネタ帳

確かに一人当たりの購買力平価GDP(USドル)という指標で見ればその通りなのでしょうが、それをもって日本は成長していると結論付けるのは厳しいのではないでしょうか。イギリスとフランスと同水準とはいえ、米国とドイツとの差は広がる一方です。物価変動の影響を除くとこのような結果になるのは、日本だけバブル崩壊後にデフレに陥ったことも影響しています。

人口減少がGDP低迷の原因と主張するが

そして池田氏は、日本の名目GDPが米国より低成長なのは人口減少のためと断定しています。

まず名目GDPを比較すると、アメリカの成長率が圧倒的に高いが、これは1980年から2016年までに人口が1.44倍になったからだ。同じ時期に日本の人口は1.08倍で、(後略)

しかし、イツも同時期の人口増加率は1.08倍程度と日本と同じなのです。確かに池田氏のいうように日本の人口は減少に転じましたが、年にして0.2%程度の減少です。この程度の人口の増減が、GDPの成長にそれほど大きな影響を与えるのか疑問です。

日本が1995年以降ゼロ成長、しかも物価がマイナスになるなど他国と明らかに違う指標を示すのを人口減だけで説明するのはやはり無理があります。1990年前半のバブル崩壊、1997年の消費増税とそれ以降の緊縮財政を無視して語れないのではないでしょうか。

池田氏は「財政出動で嵩上げしても一時的な効果しかない。」といいますが、米国をはじめ欧州では公共事業などによる財政出動を年々増やしています。日本では、公共事業費を削減した時期とGDPが低迷した時期は重なるのに、どうして財政出動の有効性を完全に否定できるのでしょう。

池田氏は日本は実質GDPが成長しているといいますが、なぜ日本だけ1995年以降名目GDPがゼロ成長なのか、なぜ日本だけひどいデフレに見舞われているのかを明確に説明していません。自分の主張する結論に導きたいために、便利なデータを提示しているだけではないでしょうか。

まとめ

  • ドルベースの名目GDPで、日本は1995年以降ゼロ成長
  • 他国は1995年以降でも少なくとも1.5%名目GDPが伸びている
  • 池田氏は人口減が日本のGDP成長に影響するというが、ドイツの人口増加率も日本と変わらない
  • 池田氏は財政出動は一時的な効果しかないというが、日本以外では財政出動を年々増やしている
  • 日本の経済低迷を、バブル崩壊とその後のデフレに触れないで語るのには無理がある