設備投資が増えないのは需要が増えないから。日銀による超低金利政策の限界

最近の報道に触れると、日本の本当の問題が何なのかよくわからなくなってきます。

例えば、昨日のヤフーニュースで取り上げられていた以下の記事。

高収益でも控えめな設備投資、人口減で需要に不安 トラウマも=日銀

日銀は4日、過去最高水準にある収益に比べて企業が設備投資に慎重なのは、人口減少に伴う中長期的な需要の減退が懸念されていることなどが背景にある、とするリポートをまとめた。所得から支出への好循環をより確実にするには、新たな需要の創出や政府による成長戦略の実行などで企業の成長期待を高めることが不可欠といえる。

日銀は、過去最高水準にある収益に比べて設備投資が増えていないのは、人口減少による需要の減退を企業が懸念していることを主な理由としています。でも2013年には、異次元の金融緩和を始める理由として金利を低く抑えることで設備投資が増えると説明していたはずです。

今でも日銀のHPで、その主張は変えていません。

金融政策は景気や物価にどのように影響を及ぼすのですか?

金利が下がると、金融機関は、低い金利で資金を調達できるので、企業や個人への貸出においても、金利を引き下げることができるようになります。(中略)そうすると、企業は、運転資金(従業員への給料の支払いや仕入れなどに必要なお金)や設備資金(工場や店舗建設など設備投資に必要なお金)を調達し易くなります。また、個人も、例えば住宅の購入のための資金を借り易くなります。こうして、経済活動がより活発となり、それが景気を上向かせる方向に作用します。また、これに伴って、物価に押し上げ圧力が働きます。

しかし結果はご存知の通り、当初2年で可能としていたインフレ率2%の目標は5年以上経過した現在でも達成しておらず、達成時期の予定さえ言及しなくなりました。その上、冒頭のレポートを出すということは、「景気が上向かないのは金利ではなく、人口減が原因でした」と宣言しているようにも受け取れます。

人口減が経済に与える影響は限定的

人口が減ると、経済規模も小さくなると考えがちですがそんなことはありません。これは簡単な事例で証明できます。日本は少子高齢化なため、高齢者人口が増える一方で子どもが減少しています。では、子ども向けの市場は小さくなっているでしょうか?いえ、むしろ増えているのです。正確なデータはありませんが、Googleで『子ども市場規模』と検索すると、ちょっと昔のですが以下のような関連情報が出てきます。

子育て世帯が社会を変える ~子育て関連市場は意外と大きい!?~

子ども関連市場の規模は全体で年間12兆円程度であり、そのうちベ. ビー・子ども向けサービス市場は2004年の0.8兆円から2011年の1.2兆円とゆる. やかな拡大傾向にある。

理由は簡単で、子どもの合計数は減少していても、一人当たりの消費額が増えているから市場が拡大しているのです。子ども向けの消費が増えると同時に、親の世代もこれまでの消費を維持していけば経済成長につながるのですが、残念ながらそんな余裕がないため他の消費を削ることになります。

なぜ余裕がないのかといえば、税金や社会保障費が増える一方で所得が増えないためです。そう考えると問題は人口減少ではなく、増え続ける国民負担率と増えない所得だと気づきます。じゃあなぜ国民負担率が増えるのかといえば財政健全化を強行するからで、なぜ所得が増えないのかといえば、グローバル化が進み企業が国際競争力を維持するためにコスト削減を断行しているのが主な理由なのです。

日銀のレポートには次のような記述があります。

所得から支出への好循環をより確実にするには、新たな需要の創出や政府による成長戦略の実行などで企業の成長期待を高めることが不可欠といえる。

今必要なのは需要の創出です。緊縮財政は需要を減らします。また、グローバル企業がいくら設けても内需の拡大は望めません。

必要なのは低金利ではなく需要

日銀のレポートに書かれているように、企業は人口減による需要の減少を恐れて設備投資に二の足を踏んでいます。しかし先ほど説明したように、需要の減少は人口減より負担率の増加と所得の伸び悩みの方が影響しています。

日銀の異次元の金融緩和で超低金利にしたとしても、当初の思惑通り設備投資が増えないことは証明されました。既に日本ではバブル崩壊以来超低金利が続いており、金融緩和で零点数%下がったとしてもほとんど影響ないのです。

金利
金利の1980年から2018年までの推移 出典:日本銀行

なぜ日本ではバブル崩壊後に超低金利になったのかといえば、需要が激減したためです。需要が回復していないのに、わずかに低金利にしただけで設備投資が増えるわけありません。皮肉にも日銀のレポートで、企業が期待しているのは低金利ではなく需要の回復であることがはっきりしました。

問題は人口減でも金利でもなかったのです。じゃあ何をすべきかといえば、需要の創出です。当然民間に需要がないときは、政府しか有効需要をつくれません。というわけで、消費増税は凍結、財政出動が正しいソリューションになるのです。

まとめ

  • 日銀のレポートによると、設備投資が増えないのは企業が人口減による需要停滞を懸念しているから
  • 子どもが減少していても市場が拡大しているように、人口減でも経済成長は可能
  • 需要が増えないのは、国民負担率の増加と所得の伸び悩みが原因
  • 日銀の超低金利政策でも需要が増えなければ設備投資が盛り上がらない
  • 民間の需要が低迷しているときは、減税と財政出動による有効需要の創出が必要