超人余りの時代はくるのか?ベーシックインカム導入が議論される理由

昨今、ベーシックインカム(BI)について語られることが多くなりました。

NHKの「クローズアップ現代+」では、BIについて以下のように説明します。

お金が“タダ”でもらえる!? ~世界が注目・ベーシックインカム~

今、世界のリーダーたちが次々と提案している「ベーシックインカム」とは、国が全ての人に無条件で毎月、一定額のお金を配るという社会保障制度です。生活保護や失業手当と比べますと、全ての人に無条件に配るというのが、大きな違いです。ただ、正式に導入している国は1つもありません。

超人余り時代はくるのか?

なぜBIが今議論されるのかといえば、AIやロボットの発達がこのまま進むと人が働く必要がなくなり、失業者が大量に出る可能性が現実味を帯びているからです。

今は人手不足の時代なので「そんなことはあり得ない」と思う人が多いでしょうが、メガバンクで今後数万人の人員を削減するなど、一部の業種では既にAIの導入で人が余り始めているのです。冒頭のNHKの記事では、AIにより2人に1人の職が代替されると予測されるといいます。

失業者が増えると問題になるのは、家計の消費が激減することです。これまでは、不景気になると失業者が増えるというプロセスだったので、失業者手当てで消費の落ち込みを緩和してきました。しかし、これから景気にかかわらず失業者が増え続けるという社会になると、回復の見込みのない不況スパイラルに突入することになります。

以上のような、人余りの時代を想定して議論されるのがBIなのです。BIには賛否両論があります。ブログのネタを提供してくれるぼくが大好きなインターネットメディア『アゴラ』は、BIに否定的です。アゴラが不思議なのは、BI導入の前提になるAIやロボット導入で生産性が極限まで高まることによる超人余り時代を想定していないところです。

池田信夫氏は以下のような記事を寄稿しています。

ベーシックインカムは「ただでお金をもらえる」制度ではない

最近ちょっと話題になっているNHKのベーシックインカム特集は、根本的に間違っている。ベーシックインカム(BI)は「国民全員がただでお金をもらえる」制度ではない。フィンランドの実験は「世界初」ではなく、そもそも「ただでお金をもらえる」という言葉が矛盾している。たとえば日本政府が国民全員の銀行口座に、ひとり年間80万円を振り込んだら名目GDPが20%増えるが、それを政府が発表した途端に、物価が20%上がって実質GDPは変わらない。

池田氏は「ひとり年間80万円を振り込んだら名目GDPが20%増えるが、それを政府が発表した途端に、物価が20%上がって実質GDPは変わらない。」といいます。

ぼくの認識ではモノやサービスが消費される前からインフレが起きるとは信じ難いのですが、池田氏の問題は、「今の状態でBIを導入したら」という前提で記事を書いているところだと思います。

極限まで生産性が高まる超デフレに備えるためのBI導入

生産性が高まると企業業績が上がり景気は良くなりますが、格差が広がってきます。生産性があがるとは、労働者を増やさなくてもこれまで以上の製品を作り出せるからです。2000年ごろから企業業績は右肩上がりですが賃金は下がり続けており、既にその傾向が顕著になってきました。

民間企業業績1990~2016年 出典:NIPPONの数字
名目賃金1990~2018年(2015=100) 出典:NIPPONの数字

生産性が高まる一方で賃金が下がると格差は広がり、デフレになります。モノやサービスは増えるのに、消費する側が余裕がないため需要が高まらず、モノやサービスの価格が下がるためです。

ロボットやAIで生産性が極限まで高まるということは、デフレの傾向が加速することになります。溢れるモノやサービスを消費しようにも、溢れる大量の失業者にはそんな余裕はありません。失業手当てなどこれまでの社会保障でカバーできないほど生産性が高まるのです。そんな社会ではモノやサービスの価格が下がり続ける超デフレになるため、企業も減産せざるを得なくなってしまいます。出口のない超格差社会、大不況時代の到来です。

そんな時代の解決策として語られるのがBIなのです。これまでのインフレ社会を前提とした経済学では、BIの有効性は測れません。池田氏のように「BI導入でインフレになる」との指摘は、「BIは生産性が極限に高まる超デフレ対策なのですが」の一言で一蹴できます。

まとめ

  • ベーシックインカム(BI)とは国がすべての人に一定額を支給する制度
  • BIは、AIやロボットの導入が進むことで大量の失業者が出た際のセーフティネットになる
  • AIやロボットの導入が進むと生産性が極限まで高まるが、失業者が増えると消費できない
  • 生産性が極限まで高まると、BI導入でもインフレにはならない
  • BIは、需要不足による不況や格差拡大を避けるためのソリューション