自由は常に正しいとは限らない。ルールや規制が公平な社会を実現する

人が自由に行動すると、大方ろくなことになりません。

人にはそれぞれ個性があり、他人や社会全体に配慮できる人もいますが、多くは自分や家族の利益を最大化しようと行動しています。それは決して間違いではありませんが、多くの人が利己的に行動することで社会が混乱し、多くの人が不利益を被る「合成の誤謬」が生じます。

そこで必要になるのがルールや規制です。逆に考えると、人が合理的な行動ができる生き物で、自由に行動させることで最大幸福社会を実現できるのであれば、ルールや規制は不要になります。しかし、残念ながら人は昔から利己的な存在なので、社会をより良くするために多くのルールや規制を設けることで文明は発展してきました。当然ですが自由を最優先理念とする米国でさえ、規制の下の自由が保障されているに過ぎません。問題は、最大幸福社会の実現のために規制を厳しくすべきか緩めるべきかの判断ができるかどうかになります。

車社会は罰則強化で秩序が保たれている

身近でわかりやすいのが車社会です。一時期は年間の交通事故死亡者が1万人を超え、「交通戦争」と呼ばれていた時代もありましたが、罰則強化や車の性能向上で今では3千人台まで減少しました。

最近では、飲酒運転あおり運転の取り締まりを強化しています。人は賢く学ぶ存在であれば、不幸な事故の体験を積み重ねることで、事故を減らすにはどうすべきかを考え行動するはずですが、一部のそうでない人たちが存在する限りルールや規制が必要になります。そのような人たちだって、自分の快楽や利益を優先しているため合理的、かつ自由に行動しているわけで、事故より自己を優先しているだけなのです。

交通事故や違反だけでなく、ドライバーが合理的な運転をした結果発生するのが渋滞です。例えば、以下のような研究結果があります。

渋滞に1台の自律走行車がいるだけで、クルマの流れがスムーズになる:研究結果

まだ高価なうえ、一部のモデルにしか採用されていない自動運転技術。ミシガン大学が発表した研究によると、渋滞のなかにコネクテッドな自律走行車が1台あるだけで流れがスムーズになり、渋滞が解消される可能性すらあるという。

簡単にいうと、車の流れが多い道路で車間距離を十分に保たず前の車のみ意識して走ると、前方車がブレーキをかけると後続車がより強いブレーキをかけるようになり、さらにその後続車がブレーキをかけるという連鎖が起き渋滞が発生します。

そこへ自動運転車が1台入ることで、適切な車間距離を保ち数台前の車の動きまで認識することで不要なブレーキを回避できるので、車の流れがスムーズになるといいます。皮肉なことに、人より自動運転車の方が、「より良い車社会を実現する」という目的においては、合理的な行動がとれることになります。しかも、ルールや規制に囚われていない点で非常に優れています。

自動運転車は「安全」だけでなく、人に負担をかけない「スマート」な運転ができるようにプログラムされています。人は理想的な運転方法を、自動運転車から学ぶ必要があるのです。

市場原理主義の間違い

車社会では、人が自由に行動すると死亡事故が増えます。では、経済においてはどうでしょう?結論をいえば、格差が広がり自殺者が増える可能性が高まります。

今でも経済は市場に任せ、民間の自由競争を促進すべきとの考え方が主流になっています。それが、「規制緩和」や「構造改革」へとつながり、派遣労働などの非正規雇用が拡大するといった労働規制緩和や、これまでの仕組みを変える構造改革が断行されてきました。

このような新自由主義的な政策のデメリットは、経済が成長し全体のパイが拡大しているときは顕在化しません。むしろ競争が激化し生産力が高まり、インフレを抑制するというメリットが十分発揮できるのです。しかし、経済成長がストップしデフレ傾向にある日本では格差拡大や貧困化という形で表れてきています。パイが拡大しない中自由競争が激化すれば、強者がパイを独占するのは当然の動きです。

車社会と同じで、経済政策においても秩序を保つためには規制が必要なのです。人が合理的な行動をすると「合成の誤謬」が生じるように、人の集合体である企業が利益を最大化させるという合理的な運営をすると、一部の人に利益が集まり社会を不公正にするといった誤謬が生まれます。

それを正すの国なのですが、こちらも政党や省庁の利益を最大化することを最優先するため、国民が不利益を被るといった誤謬が起きているのが「失われた20年」なのです。

国民の幸福を最大化する」というアルゴリズムを搭載したAIに、政策決定を任すべきではと本気で考え始めています。

まとめ

  • 人が合理的に行動すると、全体が不利益を被る合成の誤謬が起きやすい
  • 幸福な社会を実現するためには、合成の誤謬を避ける規制やルールが必要
  • 幸福な車社会を実現するため、罰則を強化し交通事故死亡者を減らしてきた
  • 自由な競争を促進する市場原理主義が、格差が拡大する不公正な社会をつくってきた
  • 国が規制をかけ公正な社会を作るべきだが、政党や省庁の利益最大化を優先している限り難しい