保護主義が常に間違いとは限らない。産業を固定化し技術発展を妨げる自由貿易

イタリアのシチリア島で開かれたG7サミットにおいて、米国と他国の溝が改めて浮き彫りになりました。それを象徴するのがこの写真です。どうやら、ドイツ政府が配信した写真のようです。

その構図は、トランプ大統領の保護貿易を非難するメルケル首相といったところでしょう。非常にうまいプロパガンダです。

G7に“トランプショック”

ことしイタリアのシチリア島で開かれたG7サミットは、アメリカのトランプ大統領やイギリスのメイ首相、それにフランスのマクロン大統領などが初めて参加しました。 その中でも存在感をいかんなく発揮したのは、やはりトランプ大統領。保護主義的な貿易政策を掲げ、内向き姿勢を強めるトランプ政権。自由貿易の推進など世界経済をリードしてきたG7の他国とのかい離が際立ちました。

米国の借金で成長を維持する先進国

保護主義の姿勢を強めようとしているトランプ大統領は間違っている、というのが大方のみかたのようですが本当にそうでしょうか?

現在世界経済は好調といわれますが、実際のところは各国が米国への輸出を増やしていることで維持しています。今後も成長を続けていくためには、引き続き米国には貿易赤字を拡大していってもらわないと困るのです。「自由貿易が世界を豊かにする」というのは単なる建前で、実際は各国が自国の利益を最大化するために自由貿易が必要なので推進しているだけなのです。

米国にしても貿易赤字を解消したいと考えていますが、基軸通貨と強力な軍事力を背景に経常収支赤字が継続しても通貨危機にならないため、欲しいものは輸入すればいいという経済構造になってしまっており、今更グローバルで戦える輸出産業を育てることが困難なのが現実です。今後も軍事力を背景にした政治力で、他国に圧力を加え農産品やシェールガスなどの輸出拡大に努めるしか手はないのではないでしょうか。

自由貿易が産業を固定化し、技術発展を阻害する

米国のケースでもわかるように、輸入に頼る経済成長は楽なのです。自国の産業をグローバルで戦えるまで育て維持するのは非常に困難で、また歴史や地理、文化的背景から多くの国では産業構造が偏っており、追い打ちをかけるように自由貿易がそれを固定化してしまいます。

例えば産油国では自国の産業を発展させなくても、原油の輸出で豊かな生活を謳歌できます。東南アジアでも農産物や原料の産業が主流で、世界各国から何でも手に入るようになれば今更技術立国になるのは困難でしょう。

そんな東南アジアで唯一、自国の自動車メーカーを保有しているのがマレーシアです。マハティール元首相の国民車育成構想において実現した「プロトン」の生産ですが、ナジブ政権はの株式の約半数を中国企業に売却してしまいました。不満を募らせた国民が再び選んだのが92歳のマハティール首相です。

マレーシア 初の政権交代へ マハティール氏、首相に

先進国入りを目前に経済成長が停滞するなか、不満を強めた国民が政治の刷新を求めた。92歳のマハティール氏は10日にも、2003年の退任以来15年ぶりに首相に返り咲く見込みだ。

日本でも「アジアの成長を取り込む」など威勢のいい言葉が聞こえ、自由貿易があたかも常に正しいようなイメージが蔓延しています。しかし輸出を拡大するということは、他国の利益を奪っているという側面もあるのです。輸入で安くものが手に入れば、自国でその産業を育てる必要がなくなり、自由貿易が促進されることで各国が自国の得意な産業に注力できるメリットもありますが、産業の空洞化を招き経済が不安定化するというデメリットがあります。オーストラリアでも、長年続けていた自動車生産から完全に撤退しました。それが本当に理想的な世界なのでしょうか?

まとめ

  • 自由貿易が常に正しい経済政策とは限らない
  • 現在の好調な世界経済は、米国の貿易赤字拡大で成り立っている
  • 自由貿易が促進されると、産業の固定化や技術発展の阻害になる
  • マレーシアは東南アジアで唯一自国の自動車メーカーを持つが、維持が困難になっている
  • 輸出とは他国の利益を奪う側面があり、保護主義で自国の産業を守ることもときには正しい