それでも財政健全化を進めますか?国民の犠牲で財政を黒字化したギリシャ

一時期デフォルト騒ぎで欧州全体の債務危機の火種となったギリシャが、どうやら財政健全化に成功したようです。

ギリシャ8月に支援脱却 EU「財政危機は終息」

欧州連合(EU)は22日未明、ルクセンブルクでのユーロ圏財務相会合で、財政危機に陥ったギリシャの債務軽減策などで合意した。ギリシャは現在の第3次支援枠組みが終了する8月以降は、新たな融資を受けることなく自力再建を進め、支援から脱却する。2009年に始まった欧州債務危機の震源地となったギリシャの再建にめどが立ったことで、EUは金融の安定化に向け前進した。

ギリシャも日本も財政健全化に向かいつつある

ここでは財政健全化を、財政支出の赤字の縮小と定義します。確かにギリシャは、財政赤字を年々縮小し、近年では黒字化に成功しています。以下のグラフは、ギリシャの財政赤字対GDP比の推移です。

ギリシャの財政赤字対GDP比推移

2009年前後はGDP比で15%程度も赤字があり、リーマンショックの影響が相当大きかったようです。では同じく財政危機(笑い)にあるとされる日本をみてみましょう。

日本の財政赤字対GDP比推移

1990年代前半のバブル崩壊で悪化した財政赤字は、1997年の消費増税と緊縮財政本格化で下げ止まり、小泉政権時代の国民に痛みを伴う「構造改革」による小さな政府路線、米国の空前の不動産バブルなどの影響で一時期財政黒字化を実現しました。その後、やはりギリシャと同じくリーマンショックで財政赤字は膨らみ、安倍政権の増税・緊縮財政路線、企業業績の回復で税収が増え、徐々に赤字は縮小傾向にあります。

財政健全化が国民の生活を豊かにしてきたのか?

共通通貨ユーロを導入しているため独自の金融政策をとれないギリシャ(デフォルトの可能性あり)と、財政赤字を自国通貨建ての国債で賄える日本(デフォルトの可能性めちゃ低い)を比較するのはそもそも間違いなのですが、どちらも財政健全化を進めてきたため国民に「痛み」を強いているのは同じです。

「ギリシャは財政健全化ができてよかったね」、という話ではありません。以下はギリシャの、ドルベースのGDP推移です。

ギリシャのGDP推移

リーマンショック前のピークに3540億ドルあったGDPが、財政健全化を目的としたドラスティックな緊縮財政で2000億ドルまで落ち込んでしまいました。当然、失業率が激増します。

ギリシャの失業率の推移

徐々に回復していますがいまだ20%と高く、若年層の失業率は深刻で43%です。日本の報道では、「ギリシャが財政健全化に成功」というポジティブなイメージが先行していますが、実情は国の稼ぐ力が削がれ、国民は困窮しているのです。

ギリシャほど酷い状況ではありませんが、日本も20年間ほとんどGDPが伸びていない異常事態にあり、財政健全化が国民を貧しくしているともいえそうです。それと、約8年で急速に緊縮財政を進め財政健全化を実現したためダメージの大きさが現れたギリシャと、20年かけてじわじわと財政健全化を進めてきたためダメージが見えにくく、感じにくくなっている日本との違いもありそうです。

しかし、昨今の企業業績の回復で税収が伸びていることでも明らかなように、景気が回復すると緊縮財政をしなくても財政健全化が可能です。

国の税収、26年ぶり高水準…58兆円台後半

2017年度の国の税収(一般会計分)が、58兆円台後半に達することが分かった。バブル期の1991年度以来、26年ぶりの高水準となる。財務省は当初、57・7兆円と見込んでいたが、約1兆円上振れする。好調な企業業績などを背景に、所得税や法人税の税収が伸びたことが主な要因だ。

むしろ、増税や社会保険料の増加で消費が落ち込むため、緊縮財政が税収の伸びを抑えてしまい逆効果になってしまいます。それでも消費増税が必要と考えている政府は、国民が貧しくなっても財政健全化を優先しようとしているようにしかみえません。

ギリシャと日本を比較するのが大好きな日本の経済評論家たちには、ぜひギリシャの財政健全化が国民に何をもたらしたのかを伝えてもらいたいものです。

まとめ

  • ギリシャは財政健全化に成功
  • 財政健全化の裏で、GDPは大きく落ち込み失業率は激増している
  • 日本も安倍政権下で企業業績が回復し、財政健全化が進んでいる
  • 一方増税と社会保険料の増加で消費が伸び悩んでいる
  • さらに消費増税を進める日本政府は、国民の豊かさより財政健全化を優先している