NAIRUって本当にくるの?完全失業率2.2%でも達成できないインフレ率2%

ぼく程度の経済認識で、日銀政策を論理的に否定することはできませんが、さすがに昨今のリフレ派の言い訳にはうんざりしています。

まず、2013年時点での日銀による異次元の金融緩和の目標をみてみましょう。

超金融緩和「2・2・2」、黒田日銀の乾坤一擲

物価目標2%の達成に向けて、達成期間2年を念頭に置き、マネタリーベースを2倍にする――。黒田東彦日本銀行総裁は、トリプル7ならぬ“トリプル2”の金融政策パッケージをブチ上げた。

マネタリーベースを2年で2倍にし、物価目標2%を達成する「トリプル2」を自信満々にぶち上げています。現実はご存知の通り、マネタリーベースを5年で約130兆円から約490兆に増やしましたが、物価は1%未満で推移しています

ちなみに2014年の物価上昇は、消費税が5から8%に増税されたため強制的に上昇したためです。

消費者物価指数の推移 出典:NIPPONの数字

起きなかった想定したインフレ期待

当初は、日銀がインフレ率2%をコミットメント(約束)することで市場にインフレ期待が起き、企業は設備投資を、家計は消費を増やすため物価が上昇するといったものでした。

民間設備投資推移 出典:NIPPONの数字

設備投資は2013年に前年度比で+7.8%と好調でしたが、その後伸び悩んでいるのが現実です。そもそも設備投資はリーマンショック後の落ち込みから回復傾向にあり、円安による輸出企業の業績回復が増加の主な要因ともいえそうです。ただ、金融緩和が円安を招き、インフレ期待がさらなる増加に寄与したとの意見もあり、完全にインフレ期待がなかったともいえないようです。

一方、家計消費支出の方はどうでしょう。

家計最終消費支出推移 出典:NIPPONの数字

こちらも2013年は好調でしたが、その後伸び悩んでいるようです。

アベノミクス元年の2013年は、設備投資と家計消費とも好調だったのに、なぜその後伸び悩んでいるのでしょう。これはリフレ派も主張するように、2014年の消費増税が大きな要因のようです。しかしリフレ派が主張するように、デフレは貨幣現象であるなら、たとえ増税されたとしてもお金を供給さえすればインフレ期待が消費を増やすはずなのですが、それだけ消費増税のインパクトが絶大ということでしょうか?

また2013年の好調さは、2012年の10兆円超の補正予算が影響していることも見逃せません。その後も同程度の財政出動による景気対策を継続していたら、その後の伸び悩みも解消されていた可能性が高かったのですが、残念ながら単発で終わりました。

インフレ期待がまったくないとはいえませんが、日銀の主張するように2年で2%のインフレ目標を達成できていないことからも、十分なインフレ期待が起きなかったとは確実にいえそうです。

しかし、リフレ派は決して金融緩和の効果の小ささを認めません。「金融緩和のおかげで景気回復し、失業率が下がっているではないか」と主張します。でもトリプル2に、失業率2%ってありましたっけ?

完全失業率2.2%でも達成できないインフレ率2%

完全失業率が、2.2%まで低下しました。

雇用指標、5月は一段と改善 失業率は25年7カ月ぶり2.2%

総務省が29日発表した5月の完全失業率(季節調整値)は2.2%と前月(2.5%)から低下し、1992年10月以来となる25年7カ月ぶりの低水準となった。厚生労働省が発表した同月の有効求人倍率(同)も1.60倍に上昇。1974年1月以来、44年4カ月ぶりの高水準となり、雇用情勢は一段と改善が進んでいる。

リフレ派は主張します。「物価があがるのは、完全雇用失業率あるいはNAIRU(インフレ非加速的失業率)が達成されてから」だと。日銀は当初、完全雇用と考える構造的失業率を3%台半ばと想定していたそうです。それが完全失業率2.2%でも、完全雇用失業率に到達していないからインフレにならないというのです。

これでしばらくは、リフレ派は言い訳ができそうです。「まだまだNAIRUではないからインフレにならないんだよ」と。本当にNAIRUが実現されたら、物価上昇は起きるのかもしれませんが、現時点での経済指標や消費税増税などの緊縮財政が続くと思われる経済政策では、個人的には納得できないのが正直なところです。

根本的な問題として、非正規雇用が全体の4割程度を占める雇用状況では、昔の失業率とは比較にならないのではないでしょうか。もし昔のように規制が厳しく、企業が簡単に非正規を雇えなかったとすると、完全失業率はかなり高かったのではと推測できます。

とにかく、日銀のトリプル2にしても完全失業率の読みにしても、ここまで外してくると期待さえ持てなくなります。その外し続けている黒田総裁が、今も続投しているのですから。W杯のように、タコにでも占ってもらった方が当たるのではないでしょうか?

まとめ

  • 日銀は2013年、マネタリーベースを2年で2倍に増やし2%のインフレ目標の達成を約束
  • 5年経過し、マネタリーベースは3倍超だが2%のインフレ目標は未達
  • 日銀の約束が設備投資を増やし、家計消費を増やすと主張していたがどちらも想定より低調
  • リフレ派は金融緩和の効果を、当初は強く主張してこなかった失業率の低下にスライド
  • 完全雇用が実現されれば物価上昇すると主張するが、完全失業率2.2%でもその兆候がない