働き方改革でさらに貧困化が進む?雇用の規制緩和で伸びなくなった実質賃金

完全失業率が2.2%まで低下しています。失業率は25年7カ月ぶりの低水準、有効求人倍率は1.60倍と44年4カ月ぶりの高水準と聞けば、さぞかし労働者にとっていい時代がきたと感じそうですが、実態は違うようです。

雇用指標、5月は一段と改善 失業率は25年7カ月ぶり2.2%

総務省が29日発表した5月の完全失業率(季節調整値)は2.2%と前月(2.5%)から低下し、1992年10月以来となる25年7カ月ぶりの低水準となった。厚生労働省が発表した同月の有効求人倍率(同)も1.60倍に上昇。1974年1月以来、44年4カ月ぶりの高水準となり、雇用情勢は一段と改善が進んでいる。

好業績で人手不足でも上がらない実質賃金

リーマンショックで一時期落ち込んだ企業業績は順調に回復し、今では過去最高益をあげるまでになりました。

民間企業業績推移(利益)
民間企業業績推移(利益) 出典:NIPPONの数字

業績が伸びている企業は、当然人を雇うようになります。その結果冒頭の記事にもあるように、完全失業率が2.2%まで下がるという雇用環境になっています。では、加速する人手不足の中人材を確保するため、企業は賃金を上げているのかといえば、そうでもなさそうです。

以下は、安倍政権が誕生してからの実質賃金の推移です。

安倍政権下での実質賃金の推移 出典:NIPPONの数字

安倍政権下で実質賃金が下がった」と主張すると、「雇用者全体と賃金総額は増えており、新規雇用者は低賃金になる傾向があり平均を押し下げている」との反論が一般化されているようです。確かに安倍政権下では毎年約50万人の就業者が増えており、それも一理あるように感じますが、安倍政権が誕生してもう5年経ちます。一体、いつになれば上昇し始めるのでしょう?

高止まりの非正規雇用が実質賃金の伸びを抑えている?

要は、「企業は安い労働力を積極的に確保している」とも言えるのではないでしょうか。そう考えると、女性や高齢者の就業者数の激増や実質賃金が上がらない理由を説明できそうです。

日本では雇用の規制緩和が進められ、今では約4割が非正規雇用で働いています。

正規雇用と非正規雇用労働者の推移
正規雇用と非正規雇用労働者の推移 出典:東洋経済

近年では若者を中心に正規雇用が進み、労働者に占める非正規の割合の増加は止まりましたが、まだ高止まり状態なのです。労働時間の差などがあり、一概には比較できませんが、正規と非正規の年収の差は、約300万円あります。実質賃金を上げたければ、単純に不本意ながら非正規を選択している労働者を、正規にすれば実現できるはずです。

失業率は25年ぶりの低水準といいますが、25年前の非正規の割合は30%未満です。現在の2.2%の完全失業率は、非正規雇用者の割合が増えたからこそ可能になった数字なのです。

非正規雇用者の割合が高止まりしている状況では、完全失業率が下がりつつけても企業は好待遇で人を積極的に雇おうとしないため、実質賃金の上昇は難しいのではないでしょうか。正規雇用者といえども、非正規雇用と大して変わらない賃金で雇用しているケースも多いように感じます。つまりよく報道などで言われる、「アベノミクスの恩恵を受けている人は大企業や公務員の一部に限られる」は真実で、それ以外は固定化された雇用システムにより低賃金から抜け出せない、という実情がみえてきます。

そう考えると、安倍政権がすべきは雇用の規制強化なのでしょうが、残念ながらその逆をやろうとしています。安倍政権の進める外国人労働者の受け入れ働き方改革は、非正規雇用をさらに増加させる可能性のある雇用の規制緩和なのです。

人手不足で失業率が低下している。完全雇用が実現し賃金と物価の上昇は近い」という、アベノミクスを支持している人たちのシナリオは、根本的に間違っているのではないでしょうか?あたかも、黒田日銀総裁の「物価上昇のモメンタムは維持している」といいながら実現できないインフレ率2%と同じようなものだと感じます。

まとめ

  • 完全失業率は2.2%まで低下し、25年前ぶりの低水準
  • 企業業績は好調で人手不足が続くが、実質賃金の上昇につながっていない
  • 雇用者全体のうち非正規は約4割と高止まりしており、賃金の上昇の圧力になっている
  • 25年前の非正規雇用の割合は3割未満で、失業率は同じでも雇用環境は違う
  • 賃金上昇は大企業に限られ、それ以外の低賃金の雇用システムは固定化され今後の賃金上昇は難しい