失業率2.2%でも鈍い物価上昇。30年でがらりと変わった日本の雇用環境が原因

一部の人たちは、「アベノミクスのおかげで失業率が2.2%まで下がった。完全雇用は近づいており、物価上昇も期待できる」との声があがっています。そんな声を聞くたびに、黒田日銀総裁の「物価上昇のモメンタムは維持している」と数年前から言い続けている言葉が頭をよぎります。

そもそも日銀は2年でマネタリーベースを2倍にして、インフレ率2%を達成するはずでした。それが5年でマネタリーベースを4倍近く増やしても、インフレ率2%を実現できていません。そして日銀は、完全雇用の失業率は3%半ばとみていました。ベルギー戦の日本勝利を予測したタコ「2代目ラビオ君」と同じ、大外しじゃないですかコノヤロー!(個人的な叫びです。気にしないでください)

30年前とがらりと変わった雇用環境

厚生労働省労働力調査のデータを取り始めたのは、1984年だそうです。THE21ONLINEがデータをまとめてくれていたので、拝借いたします。

日本の雇用者数の推移 出典:THE21ONLINE

驚くのは、生産年齢人口が減少する中、就業者が1989年から1100万人も増えており、その増加分のほとんどが非正規労働者であることです。同サイトが指摘するように、理由は女性の社会進出とシニア世代の労働力の増加のようです。同サイトによると、30年前の定年は55歳だったそうです。30年前は、55歳で定年を迎えた人たちは仕事を離れ、女性も専業主婦が多く労働参加率も今よりずっと低かったのです。

「アベノミクスで失業率が下がり、多くの人が働けるようになった」と主張する人たちは、定年後も仕事を続け、多くの夫婦が共働きしている雇用環境がいいことだと考えているのでしょうか?もちろん働き続けたい高齢者や女性もいるでしょうが、定年後に悠々自適な生活ができ、専業主婦でも家計が回っていた30年前より今の雇用環境が優れているとは、個人的にはとても思えません。

1989年前の失業率2.3%と、2018年の失業率2.2%は単純に比較できない

完全失業率が2.2%まで低下しています。

雇用指標、5月は一段と改善 失業率は25年7カ月ぶり2.2%

総務省が29日発表した5月の完全失業率(季節調整値)は2.2%と前月(2.5%)から低下し、1992年10月以来となる25年7カ月ぶりの低水準となった。厚生労働省が発表した同月の有効求人倍率(同)も1.60倍に上昇。1974年1月以来、44年4カ月ぶりの高水準となり、雇用情勢は一段と改善が進んでいる。

1989年の失業率は、現在とほぼ同じ2.3%でした。

完全失業率推移 出典:NIPPONの数字

就業者が今より1000万人以上少なかったのに、なぜほぼ同じ失業率かというと、現在ほど高齢者や女性が労働市場に参加していなかったためです。それでも当時は、完全雇用が成立していたと思われます。それは、物価上昇率をみればわかります。

消費者物価指数の推移 出典:NIPPONの数字

1989年前後は、消費税が初めて導入されたことも影響していますが、物価は2%程度上昇しています。完全雇用だったため、堅調に物価が上昇していたのです。一方2018年度の物価上昇率は、0.5%程度に留まっています。2.2%でも完全雇用とはならず、物価上昇につながっていないのです。

その理由は、やはり女性の社会進出とシニア世代の労働力の増加による非正規雇用、低賃金労働者の増加だと推測できます。もし30年前のように高齢者は定年後働かず、専業主婦が多かったら失業率2.2%になる以前から完全雇用となり、賃金・物価が上昇していたと思われます。その場合、企業は減少する生産年齢人口から労働力を確保しなければならず、待遇の改善、もしくは省人化のための設備投資をしなければならないからです。

そう考えると、安倍政権が進める一億総活躍社会外国人労働者受け入れ副業解禁高度プロフェッショナル制度などの「働き方改革」が、一向に賃金や物価の上昇につながらない理由がみえてきます。

30年前のように働くべき人が働くことで回っていた社会と、現在のように女性や高齢者まで働かないと回らない社会のどちらがいいのでしょう。「生産年齢人口が減少するから女性や高齢者、外国人が働かなければいけない」と諦めるのではなく、減少する生産年齢人口の中でも持続できる社会を目指すべきではないでしょうか?

まとめ

  • 失業率が2.2%まで下がったが、物価上昇にはつながっていない
  • 約30年前は失業率が同程度だったが、完全雇用が成立し物価は2%程度上昇していた
  • 約30年前は定年が55歳で専業主婦も多く、高齢者と女性の労働参加率は現在よりかなり低かった
  • 約30年で高齢者と女性を中心に就業者が1000万人以上増え、完全雇用の成立が困難な雇用環境に
  • 安倍政権は一億総活躍社会を目指すが、女性や高齢者、外国人労働者が働かないと回らない社会は国民にとって幸せなのか?