企業の設備投資意欲は高まっている。強化される賃金が上がりにくい雇用システム

ようやく、企業の設備投資の意欲が高まってきました。

機械など前年比伸び率過去最高 18年度設備投資計画  日銀短観 2桁増は5割 人手不足で投資意欲強く

幅広い業種で企業の設備投資意欲が高まってきた。日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、2018年度の設備投資計画は生産用機械や運輸など、5業種で前年比伸び率が過去最高となった。主要28業種のうち約半数の15業種が2桁増を見込む。製造業は国内外の好調な景気を追い風に、サービス業などは人手不足を背景に設備投資が増えそうだ。

リーマンショック後に一時期落ち込んでいた企業業績はその後堅調に回復し、2018年現在では過去最高水準まで伸びるにいたりました。

民間企業業績1990~2016年 出典:NIPPONの数字

企業業績の回復に伴い完全失業率は2.2%まで低下する一方で企業の設備投資の伸びは鈍く、生産性の向上を設備投資ではなく人を雇うことで補っていたことになります。記事にもありますように人手不足は深刻化しており、増員による生産性向上が限界にきているため、設備投資に舵を切る企業が増えてきたことになりそうです。

しかし、やはり気になるのが実質賃金の伸びの鈍さです。それほど人手が足りない状況でも賃金の伸びが鈍いということは、企業が人件費の上昇を極力避けようとしてる表れではないでしょうか?

実質賃金推移 2012年1月~2018年3月 出典:NIPPONの数字

設備投資が増えることで需要が高まり賃金が上昇する

一般的な資本主義では、企業は利益を使って設備を強化し生産性を高めることで成長していきます。その過程で需要が高まり、経済全体が成長していきます。経済成長すると労働力が不足してくるので賃金が上がります。

しかしリーマンショック後の日本の企業は、企業業績が伸びていたのにかかわらず、十分な設備投資をしてきませんでした。それは、失業率の低下と就業者数の伸びが示すように、増産には人を雇うことで対処していたからです。なぜ企業がそのような選択をしたかといえば、女性や高齢者、非正規労働者など、低コストで必要なだけ人材を確保できていたため、高コスト、高リスクの設備投資を避けることができたからです。それは、女性や高齢者の異様な就業者数の増加が示しています。

しかしここにきて、低コストで労働力を確保することが厳しくなり、ようやく企業が設備投資に向けて重い腰をあげてきたのが実際のところではないでしょうか。今後は設備投資の分だけ需要が増え、それに対処するためにさらなる設備投資が加速する好循環を生む可能性はあります。

生産性が高まっても労働者の賃金が上がらないビジネスモデルの成立

では、企業が設備投資に舵を切ることで賃金の上昇につながるのかといえば、そう単純な話ではなさそうです。これまで企業は、人件費を抑えることで業績を伸ばしてきました。世界経済の不確実性が増す中、人件費の上昇は極力避けようとするのが民間企業の宿命なのです。

実は既に世の中には、労働者の賃金が上がらないビジネスモデルが確立されてきています。たとえばコンビニ。

コンビニオーナーが店舗を持たない場合の契約形態では、フランチャイズ店舗設備を本部が投資し、フランチャイズ加盟者は、フランチャイズ加盟金のみでフランチャイズ事業を始めることができます。契約金は250~300万円で、その中に開業時のレジ元金や開業前の研修費などが含まれます。

コンビニエンスストアの平均的な売上高は1日当たり40~55万円程度で、この売上金額を毎日フランチャイズ本部に送金し、フランチャイズ加盟店には、仕入金額やロイヤルティ、諸経費などを差し引いた金額の中から一定割合が支払われるシステムが一般的です。差し引かれるロイヤルティは売上総利益の30~60%程度まで契約タイプによって異なるそうです。

参考:業態別FC(フランチャイズ)ビジネス【コンビニエンスストア】の特徴

コンビニの生産性の高さには目を見張るものがあります。あれだけの狭い空間に、食料品はもちろん日用品、本、ゲームなどの商品、さらにATMやチケットの予約、コピー、写真の現像、宅配の手配、光熱費などの支払いなどあらゆるサービスを提供できる設備が整っています。

それを少人数で回し1日当たり40~55万円も売り上げるのですから、究極の生産性を誇ります。しかし、末端のアルバイトの時給は平均1000円程度です。複雑な業務もマニュアル化され、ある程度訓練すればできるようにシステム化されているので、付加価値の高い仕事ではなくなっているのです。

さらに設備投資により省人化を実現したとしても、末端のアルバイトの時給は上がらないでしょう。設備投資や利益率の高いシステムの構築は本部が担うため、さらなる効率化で高まる利益は本部がほとんど吸い上げるはずです。オーナーでさえ、賃金を増やすのが困難なのがコンビニのビジネスモデルなのです。

これからも、効率よく稼げる体質を目指す企業が人件費を抑える動きは加速するはずです。設備投資の増加はいいニュースなのは間違いないのですが、末端の労働者の賃金が上がらないシステムが構築されつつある昨今の雇用環境は、企業業績に比例して賃金があがるのが当たり前だった時代とは全く違うことを認識することが必要です。

まとめ

  • 企業の設備投資意欲が高まっている
  • 安い労働力の確保が困難になり、賃金上昇より設備の増強で対処しようとしている動きでは?
  • 設備投資が増えれば需要が高まり、経済全体にとって好影響
  • 企業の省人化の動きは加速しており、需要の高まりが賃金上昇に直結するかは疑問
  • コンビニを代表する賃金上昇を抑えるビジネスモデルの構築は加速し、労働者にとってますます厳しい時代に