企業にとって正社員の価値が下がっている。賃金上昇の前に訪れる大失業時代

最近目にしたインターネットメディアの記事で、ピカイチだったのがこれです。

「新しい正社員」の増加とブラック企業の関係とは?

これから先の時代、人工知能とロボットによって人間の仕事が奪われる「仕事消滅」が本格的な社会問題になってくる。そして、現在はその仕事消滅の「前夜」に当たる……。

この文章から始まる記事を書いたのは経営戦略コンサルタント鈴木貴博氏で、ぼくの直近のエントリー2つも、この記事からインスピレーションを得たものです。

非正規の仕事の高度化が進み、企業は正社員を必要としなくなっている

鈴木氏の記事を要約すると、「ビジネスのシステム化・マニュアル化が進み、一旦稼げるビジネスモデルが構築してしまえば、後は非正規でも生産性の高い高度な仕事もこなせため、企業はコストのかかる正社員を削減したがっている」というものです。

ぼくは以前から、「アベノミクスが成功しているので完全失業率が低下し、就業者数が増えている」との声に疑問を感じていました。その理由は、人手不足が深刻化しているのに、いつまでたっても実質賃金が上昇に転じないためです。「新規雇用者は低賃金になる傾向があるため、平均の賃金である実質賃金が下がるのは当然。完全雇用状態になると賃金は上がる」との声もありますが、完全失業率は2.2%まで低下しています。本当に完全雇用で賃金が改善する局面がくるのでしょうか?

ぼくは実質賃金の低迷は、労働者全体の4割と高止まりしている非正規労働者が劇的に減らない限り、改善されないとの意見を持っていました。それを裏付けるのが、鈴木貴博氏の記事です。これまで正社員が担っていた仕事を非正規でも回せるようになっているのに、企業はコストのかかる正社員を増やそうとするでしょうか?近年は若年層を中心に正社員が増加していますが、これまでのような好待遇の正社員とはどうも違うような気がします。鈴木氏は「正社員という概念」はこの30年で大きく変わった、といいます。

稼げる正社員の仕事は勝ちパターンの設計と横展開で終わり

鈴木氏はまた、「現代の仕事の現場では、(新しい)事業や業務の勝ちパターンを設計し、それを横展開できるようにするまでが正社員の仕事」といいます。

その勝ちパターンのビジネスモデルを回すのは、非正規社員の仕事です。パターン化されているために仕事自体の難易度は高くなく、非正規社員でも短時間で習得できます。あらゆる業種でこのような経済システムが出来上がりつつあるため、今後益々正社員の必要性は下がってきます。それが、35年前から非正規労働者が増え続けてきた背景なのです。

日本の雇用者数の推移 出典:THE21ONLINE

しかしここにきて人手不足が深刻化し、賃金上昇なしでは非正規労働者の確保が難しくなってきました。そこで人手が足りない部分は正社員がカバーすることになります。しかし企業にとって、本来非正規社員が低賃金でする仕事なので、なんとしてもコストアップは避けたいのが正直な気持ちです。幸い定期昇給年功序列などの労働慣習が崩れつつあり、企業は正社員のステータスを餌に低賃金で責任を押し付けることができます。これが、企業がブラック化するプロセスだと推測できます。

「じゃあ転職すればよい」という話になりますが、人手不足でも賃金上昇が鈍く、多くの企業が低賃金の労働者を求めているのが現状です。現状より好待遇で転職できる人は稀でしょう。鈴木氏は、統計上正社員は減っていないように見えるのは、「給料が上がらずに責任だけが多い新しいタイプの正社員」が増えているからだといいます。つまり、企業は非正規社員が確保できないため、仕方がなく低賃金で便利に使える正社員を増やしていることになります。

これが実態だとすると、いくら失業率が下がっても賃金上昇など見込めそうにありません。そうこうしているうちに、AIやロボットの導入が進み、大量の失業者が生じるという最悪のシナリオが待っていることも覚悟する必要がありそうです。

まとめ

  • ビジネスのシステム化が進み、かつて正社員が担っていた仕事も非正規社員で対応可能に
  • 正社員の仕事は勝ちパターンの設計と横展開に限定され、運営は非正規が担うようになる
  • 人手不足で非正規社員の確保が難しくなると、代わりに正社員が低賃金で対応するようになる
  • 近年は正社員の数が増えているにも関わらず、実質賃金が低迷している
  • 今後は低賃金の仕事もAIやロボットに取り替わり、大量失業時代がくる可能性もある