あらゆる産業で進むビジネスモデルのシステム化。賃金上昇の前に人余りの時代に

これまで経験したことのないと形容される、大雨が降っています。

ぼくの住む広島県のとある市の全域で、避難指示が出ています。山の中腹にある自宅も土砂災害の危険はありますが、避難場所は川の近くにあるため洪水の危険性があり、また不便さを考えると、自宅で周囲の状況を気にしながら待機するという選択をしています。

実家へ避難するという選択もありますが、なにせ同市全域に避難指示が出ていますのでどうしようもありません。数十万人を対象に避難指示を出すのは非現実的だと感じますが、結果責任を負う国や市としては致し方ないのかもしれません。

それはさておき本日は、ぼくたちの所得がなぜ上がりにくくなっているのかを考えてみたいと思います。

ビジネスモデルがシステム化すると、一般労働者の賃金は固定化される

昨日のエントリーでは、近年は企業が賃上げに動いていることを紹介し、本日は鈍い賃金上昇の仕組みを考えるなど、一貫性に欠けるような印象を与えるかもしれませんが、ぼくのスタンスは、「就業者雇用者報酬は増加傾向にあるが、満足できる賃上げの恩恵にあずかるのは一部の人で、大多数がわずかな賃上げ、もしくは現状維持のため実質賃金が低迷している」というものです。

ちょっと分かりにくいかもしれませんが、実質賃金は物価変動を除いた労働者の平均賃金のことで、近年は物価が年率1%程度上昇しているので名目賃金も同程度に伸びていますが、実質賃金の伸びは低迷しています。

以下は、安倍政権下での名目賃金の推移です。

名目賃金の前年比推移 出典:NIPPONの数字

名目賃金の伸びは物価上昇分にとどまっており、年率平均で5%程度伸びている企業業績と比較すると物足りなく感じます。その理由としては、安倍政権下では失業率が低下し就業者が増えており、新規雇用者は低賃金になる傾向があるため平均すると低迷してしまうことがあげられます。

さらに、あまり話題にはなりませんが、ビジネスモデルのシステム化の加速も影響していると感じます。ビジネスモデルのシステム化は、確実に儲けられる自動収益システムとして発展してきました。生産年齢人口が減少する中、少人数で効率的に利益をあげられるビジネスモデルの構築は、あらゆる産業で進められています。

一旦ビジネスモデルが確立すると、後は労働者がそのシステムを回すことで、出資者は自動で収益を得られるようになります。仕事内容はシステム化されマニュアル化されますので、高度なスキルは必要なく、誰でも短期間で習得できるようになり、賃金も低く固定化されてしまいます。出資者やシステムの管理者は自分たちの収益が減るのを嫌うため、労働者の確保が余程困難にならない限り、大幅に賃金を上げることはないはずです。このシステムに組み込まれた労働者全体の約4割を占める非正規労働者と正社員の一部は、企業がいくら儲けようとも賃上げの恩恵にあずかることは難しいのです。

必ず本部が儲かるコンビニシステム

代表的な自動収益システムが、コンビニの経営です。大手コンビニチェーンの本部は、確実に収益をあげられるようなシステムの構築に成功しています。コンビニ契約のほとんどが、本部が用意した土地建物でオーナーが運営するという形をとります。

オーナーはコンビニの加盟金として最初に約300万円を用意し、開店手数料や保証金などを差し引いた残り150万円くらいが「開店後のお店の商品在庫代」として扱われます。一般的なコンビニでは売価で約800万円から900万円の商品在庫を持ち、在庫の原価金額は約600万円ほどです

600万円と150万円の差額の450万円は本部への借金となり、毎月利益から返済することになります。また、毎月の売り上げからは本部へロイヤリティを支払う必要があり、1年目は60%で、2年目からは3~10%ずつ下がっていきます。

本部は確実に儲けられる一方で、オーナーがより稼ぐためには売り上げを伸ばすか、経費を削るしか選択肢はありません。取り扱い商品はコンビニで決まっているため、魅力的な商品で差別化するのも限界があります。人件費を削ってオーナー自らシフトに入ることもできますが、やはり体力勝負になるため限界があります。スタッフの時給を減らすのも、この人手不足の時代には現実的ではありません。

元本部に勤めていた人によると、結局はパートやアルバイトの教育が売り上げを伸ばすためにもっとも重要な要素になるそうです。質の高い接客ができるスタッフを育てることで、お客さんが入りやすい店舗になります。そのような環境が整った店舗では、新しいスタッフが入っても同じような質の高い接客ができるような人材に育ちます。そして、見込みのないスタッフはすっぱりと切る決断も必要だといいます。

参考:コンビニ経営の仕組み!元本部社員だから語れる成功の秘訣とは

個人的には、このような高い意識が求められるコンビニのスタッフでも、ほぼ時給900円という待遇で働かざるを得ない状況は不健全だと感じます。コンビニ間で時給に格差があれば、より待遇の良い店舗に行くのでしょうが、本部はそれだけは避けたいのが正直なところでしょう。自然に、時給を抑えるカルテルが結ばれていると同じ状況になっているともいえそうです。

オーナーの平均年収は約700万円だそうで、コンビニ運営の大変さから妥当な金額ともいえそうです。やはり本部へのロイヤリティなどを考慮するとスタッフへの待遇を上げるのも難しいという状況もあるのでしょうが、最下層の労働者の低賃金化が固定されるビジネスモデルと言わざるを得ません。

最近の正社員雇用の増加と賃上げの動きは、非正規労働者の確保が難しくなったのが理由かもしれません。それは完全雇用を意味し、これから労働者全体の賃上げ、消費の増加に伴う物価上昇につながる前触れなのかもしれません。ただ、その動きを抑制するのがビジネスモデルのシステム化で、賃金上昇を避けたい出資者や経営者が、さらなる効率化と省人化を促進するためにシステムをブラッシュアップするのは確実です。

そして、今後訪れる可能性の高いAIやロボットによる労働の置き換えも相まって、大失業時代がやってくる可能性も考える必要があります。そうなると、これまで進めてきた人手不足対策とはまったく違ったソリューションが必要になります。

今後は目まぐるしく変わる経済環境の中、ベーシックインカム(BI)やヘリコプターマネーなど、これまでの常識に囚われない政策決定が重要になりそうです。

まとめ

  • 好調な企業業績と人手不足でも、賃金上昇は低迷している
  • 賃金上昇の低迷は、人手不足対策のため加速するビジネスモデルのシステム化が影響しているのでは?
  • システム化されたビジネスモデルでは、出資者が取り分を減らすのを嫌うため賃金が上がりにくい
  • コンビニ経営では完全にシステム化が進み、優秀なスタッフでも賃上げに限界がある
  • 今後はシステム化がより強化され、労働者が余る可能性がある