公共事業を減らし続けた日本。財政危機という間違った認識のため災害に弱い国に

今回の「平成30年7月豪雨」と命名された西日本豪雨で、ぼくの住む広島県でも甚大な被害が出ています。洪水や土砂災害が出始めたのは7月7日の夜で、昨日7月12日も池が決壊して避難指示が出るなど被害は継続して起きています。広いエリアで道路や交通機関が不通になり渋滞は深刻化し、一部の地域では断水や避難が余儀なくされ、生活や経済活動に大きな影響が出ています。

7月7日は、山に囲まれたぼくの住む地域では真っ先に避難勧告、続いて避難指示が出され、家族でも避難すべきか話し合いました。結局、家にとどまるべきとの結論になりましたが、翌日の被害を目の当たりにすると正しい選択だった確信しました。

まず、避難する場合は川沿いの道路を通らなければなりませんが、7月7日の夜に崩落していたのです。

そして、避難指示が出ていた時刻には、既に各地で洪水や池の決壊が始まっており、避難のために外に出ることでリスクが高まっていたでしょう。嫁さんの実家近くでもこのとき、住宅から女の子が流され、翌日の夜に遺体で発見されるという悲惨な事故が起きています。

通勤途中の山道でも土砂崩れが起き、今でも土砂が完全に撤去されていません。このように寸断された道路は多く、連日渋滞が続いており、メディアで不要な外出を控えるよう呼び掛けています。

災害で負担を強いられる国民

災害が起きて以来、ローカルラジオでは連日災害関連の情報で一色になっています。悲惨な状況を目の当たりにしたラジオDJは感極まって涙声になるし、それを慰めたり、多くの困っている人たちを助けてあげられない虚しさを訴えたりするリスナーもいます。災害直後ということもあり、エモーショナルな感情に流されるのは仕方がないのかもしれません。

それでも冷静なDJやリスナーはいて、「被害が軽く日常生活ができる人は、自分の生活を優先してください」と呼びかけています。また中にはボランティア精神から、被災地を訪問しようとする人もいるそうですが、そういった行動が渋滞を悪化させたり被災者の負担を増やすことになりかねないので、控えるよう呼び掛けています。

ぼくも家族も災害により日常生活に支障が出ているわけではありませんが、スーパーやコンビニへの配送が遅れ、商品が少なくなっているなどその影響は実感しています。また小さなことですが、娘が通う小学校用の牛乳が生産できなくなり、しばらく中断することになりました。中学生の息子は、被災者のためにランドセルを提供するといっています。

災害が起きたときの風潮として、「やっぱり絆が大切だよね」という話になり、復興はボランティアに頼るといった状況になりますが、普段から納税や勤労で真面目に生活している国民が、ここまで負担をしいられなけらばならないのかという釈然としない気持ちに襲われます。

防災の国や自治体の役割を見直すとき

未曾有の災害が起きると、真っ先に対応するのが国や自治体ですが、それが適切に機能しているのかの判断はとても難しい作業です。どうしても対応は被害が差し迫ってから、もしくは被害が出てからになってしまうので、「もっと早く対応できたのでは」との声は免れません。

国民側は、実際に災害が起きてみないと、どこにどれだけのリスクがあったのかを認識できないのが現状です。ですが本当に必要なのは、災害が起きない、または起きても被害が拡大しないような対策を普段からすることなのです。

政府はハザードマップを公開するなど災害対策は進めてきたはずですが、過去数十年、またこれから数十年をかけて災害に強い国土を作るプランがあったのかは疑わざるを得ません。それは、以下のグラフから明らかです。

公共事業関係費の推移
1978年~2019年(案)の公共事業関係費の推移 出典:国土交通省

1998年(平成10年)をピークに、公共事業関係費は削られてきました。安倍政権になって下げ止まりましたが、低い水準のままです。当然公共事業関係費が削られると、関連企業の廃業は進み、技術者が減っていきます。これから共事業関係費を増やそうとしても、人手不足の中業者や技術者を急に増やすのは無理な話です。このような状況で、今回のような大災害に迅速に対応するのは難しくなり、数少ない土木関係の技術者や作業員、もしくはボランティアに負担がいくことになります。

なぜ公共事業関係費が削られてきたのかというと、高齢化で増える社会保障費を確保するためという見方があります。また、公共事業費の対GDPが他国と比較して高かったのも要因の一つです。削減を進めてきたため、対GDPで3%程度と他国と同水準まで低下しました。しかし地震や台風など災害が多い日本で、他国と同水準にすることの意味があるのでしょうか?

日本は平地が少なく、急峻な山が多いのが特徴です。川は短く大雨が続くと一気に増水し、洪水などの水害が起こりやすい地形なのです。そのためダムで水をせき止める必要があるし、地震が多いため耐震化もしないといけないので、どうしても他国より公共事業費がコスト高になるのです。

無駄な公共事業」キャンペーンが功を奏し、「事業仕分け」の名の下、ダムやスーパー堤防の建設が中止されてきました。このような大災害が起きないと、それがどれだけ愚かなことか実感できず、当時は多くの国民が支持していました。絆を大切にする国民が、なぜか公共事業を請け負う業者に対してとても冷たかったのです。

今回のことで、公共事業が多くの命を救うこともあると認識した人は多いと思います。メディアでは、いまだに「無駄な公共事業」キャンペーンは間違っていたのと認識は広がっていないようですが、「日本は財政危機」キャンペーンと共に、メディアのデマであることが国民の間で認識されることで、未来の人たちが住みやすい社会になるはずです。

もう一度いいますが、普段から納税や勤労で真面目に生活している国民が他国より多い日本が、借金まみれの貧しい国であるわけがありません。単に、メディアや財務省が喧伝する「借金大国」というイメージに騙されているだけなのです。人の死につながる誤ったイメージを植え付けるメディアや財務省の罪は重いのですが、それに騙される国民も無責任ではいられません。

日本は他国より幸福な環境に恵まれています。ただ不幸なのは、それを認識できていない国民が多いことなのです。

まとめ

  • 西日本の豪雨災害の影響で、多くの国民に負担が強いられている
  • 災害後に自治体と国の役割が重視されるが、震災が起きる前に防災を強化すべき
  • 公共事業を20年前から減らし続けた国は、防災を真剣に考えているとは思えない
  • 公共事業が減らされたのは、増える社会保障費の確保と他国の水準に合わせるため
  • 「日本は財政危機にある」という間違いが是正されない限り、正常な防災対策はできない