日本はAI後進国?テクノロジーの普及を邪魔するのは変化を恐れる人々のマインド

最近、『三和ゴッド』と呼ばれる中国の若者の動画を見て驚いたのですが、彼らはほぼすべての支払いをスマホで済ませていました。三和ゴッドと呼ばれるのは、1日働いた1500円程度のお金で3日間をネットゲームなどでダラダラ過ごす、広東省深センに出稼ぎに来る日雇い労働者の若者たちのことです。そんな最貧層に属する若者でも、すっかりとテクノロジーの恩恵に預かっているのです。

スマホがあれば借金も容易にでき、テクノロジーの進化が若者を堕落させたとの見方もありますが、その話は置いておきます。中国人は合理的な考えをする人が多く、便利なものは積極的に取り入れていくようです。また、中国ではかなりの高い割合で偽札が流通しているため、新たな信頼できる支払い手段としてのスマホ決済が広く普及しているのかもしれません。

現金を異常に信用している日本人

日本ではその利便性にもかかわらず、スマホ決済は6%程度しか普及していません。また、支払いに現金を使う比率も他国より高い水準にあります。以下は民間最終消費支出における、各国のカード決済比率です。意外にも韓国が80%以上と突出して高く、日本とドイツは20%以下と低い水準にあります。

各国のカード決済比率 出典:MS&AD基礎研究所

日本がAI後進国といわれるのは、このような事情からかもしれません。正確にはAI以前の、ITも十分に普及していない段階です。今ではコンビニでもクレジットカードを使え、1万円以下はサインも不要で、利用者にとっても店側にとっても利便性は高いはずです。レジ係をやったことがある人はわかると思いますが、現金のやり取りはとても手間がかかります。常にお釣りのための紙幣や硬貨を揃えておかなければならず、閉めるときは1円まで揃うよう確認しなければなりません。

特にサービス業における人手不足は深刻化しており、生産性の向上は急務となっています。そのためにはスマホ・カード決済が不可欠なのですが、日本にはかなりの高い割合で現金至上主義者がいるようです。ぼくの同世代の知り合いにも、「クレジットカードは信頼できない」といい、インターネットショッピングはいつも代引きを利用しているといます。

どうも日本人は、他国と比較して新たなテクノロジーの受け入れに消極的な人が多いような気がします。しかし、そうもいってはいられません。これからは生産年齢人口の減少が進み、代わりにAIやロボットが働くような時代は確実にくるはずです。そして、それはもっとも身近な「車の運転」から始まる可能性が高いのです。

テクノロジーへの理解が進まないと、テクノロジーの普及が進まない

クレジットカードを信頼していない人は、クレジットカードのリスクを異常に恐れているように感じます。盗難などで不正に利用されることはあっても、現金とは違い使われたお金はちゃんと手続きすれば戻ってきます。利便性でも安全性でも、決して現金より劣ってはいないのです。

実用化される日が近づいている自動運転車に関しても、同じことがいえそうです。以下の記事もそのことを危惧しています。

安全な自動運転社会の実現を妨げるもの、それは「人間」かもしれない

自動運転中の自律走行車に、人が運転していた自律走行車両がぶつかる事故がサンフランシスコで起きた。実はこうした小さな事故や事件は立て続けに起きている。そこから見えてくるのは、安全な自動運転社会の実現には「人間の不完全性」を考慮することが不可欠であるということだ。

自動運転車の実験走行中に、様々な場面に遭遇するといいます。タクシー運転手に車体を平手打ちされたり、歩行者からゴルフボールを投げつけられるケースもあるそうです。そのような行動は、「人間の不完全性」から起こされるもので、そのような行動をする理由は本人にしかわかりません。

自動運転車は交通ルールを守り、人に怪我をさせないようにプログラムされています。しかし人間は、例えば以下のような人のリスクを高めるという理不尽な行動を起こします。

遭遇した悪質ドライバー(白バン)

そのような相反する行動原理を有する存在が、同じ路上で共存することがどんなに困難なのかは、自動運転車の開発者が実感している事でしょう。

個々の人間は、これまで培われてきた常識の中で生きています。現金を使ってきた人はカードを使うことに抵抗を感じ、自分で運転をしてきた人は自動運転車に違和感を感じるでしょう。10年後には、生まれたときからそれが当たり前になっている世界が訪れるかもしれません。しかしそのときがくるまでは、変わりたくない人々の抵抗によりテクノロジーの普及が順調に進まないことが予測されます。

その抵抗を低減するには、「こんな便利なテクノロジーが誕生しました」という結果ではなく、なぜそのようなテクノロジーが必要なのか、また利用者にとってどのように便利で安全性が確保されているのかを周知させる活動が重要になるような気がします。

まとめ

  • AI後進国と呼ばれる日本は、ITの普及さえ十分に進んでいない
  • 日本のカード決済比率は20%以下と低いが、カードの利便性が周知されれば高まるのでは?
  • 自動運転車の開発は、「人間」との関わり方が大きな課題に
  • 人の変化を受け入れる姿勢がテクノロジーの普及に欠かせない
  • 今後は、テクノロジーの普及の必要性と利便性を訴える活動が重要になる