近年の税収弾性値は平均2.62。経済成長による財政健全化は可能

1カ月前に、2017年の税収についての報道がありました。

17年度の国の税収、58兆円台後半 26年ぶり高水準

2017年度の国の一般会計の税収が58兆円台後半となり、バブル期直後の1991年度の59・8兆円以来、26年ぶりの高水準になることがわかった。世界的な好景気で企業業績が上向き、所得税や法人税などが伸びた。財務省が7月上旬に発表する。

財務省は当初、17年度の税収を57.7兆円と見込んでいたといいます。なぜ、財務省の税収の見積もりが少なかったのかというと、名目GDPの伸びに対して税収がどれだけ伸びるかの指標となる税収弾性値の設定が低いためです。

安倍政権下での税収弾性値は2.62

税収弾性値については、4程度あると主張する人もいれば、財務省のように1.1だと主張する人や組織もあります。ちなみに財務省はHPで、以下のように主張しています。

なお、近年の税収弾性値は高くなっており、経済成長により大幅な税収増が見込めるとの指摘もありますが、比較的安定的な経済成長を実現していたバブル期以前の平均的な税収弾性値は1.1です。研究者の分析では、近年は分母である成長率がゼロ%前後であることなどから数字が大きく振れやすくなっており、所得税の累進性が緩和されてきたことや、比較的弾性値の低い消費税のウェイトが上がってきていること等を踏まえれば、本来の税収弾性値は低下傾向(1強程度)と見られています。

いつからこのように主張しているのかは不明ですが、現在でもHPに掲載されているということは、現在でも同じ見解を持っていることと理解できます。では、実際の近年の税収弾性値はどの程度になっているのかみてみましょう。

公式に税収弾性値が発表されておらず、実際のデータに基づいてぼくが作成したものなのですが、大きく外れてはいないはずです。安倍政権下では堅調に名目GDPが伸びており、それに伴い税収も伸びています。平均すると税収弾性値は2.62となり、財務省の設定値がいかに非現実的かが理解できます。

税収弾性値1.1を主張するのは財政出動の効果を認めたくないから

税収弾性値は、景気が好転しているときには高くなる傾向があります。特に近年では企業業績と失業率の改善により、法人税と所得税が増えています。これまで赤字だった企業が法人税を払うようになり、失業者が職を得て所得税を払うようになるからです。

2017年の税収の伸びが示すように、わざわざ消費増税しなくても名目GDPが伸びれば税収が増え、財政健全化が実現できるのです。むしろ、減税で民間の消費や投資を促し、財政出動で企業活動を活発化させることで名目GDPの成長率は高まり、税収の大幅な伸びが見込めるのです。

こんな簡単な方程式が成立するのですが、財務省だけでなく、識者の中にも税収弾性値は1.1が正しいと主張する人たちがいます。それが、このブログで度々攻撃している池田信夫氏が主宰するインターネットメディア『アゴラ』の執筆陣です。代表が、法政大学経済学部教授の小黒 一正氏です。

税収弾性値は3.13もあるのか

高橋洋一氏が、直近10年間の「税収弾性値」は3.13という記事を掲載した(注)。「成長による税収増があれば、増税をしなくても財政を健全化できる」との議論は根強い。拙書『アベノミクスでも消費税は25%を超える』(PHPビジネス新書)でも指摘しているように、こうした議論の鍵となるのが、「税収弾性値」という概念だ。

この記事が書かれたのは、2013年8月です。その後、税収弾性値は平均すると2.62で推移しているので、黒田氏の「現在の税収弾性値は1強程度と結論付けている」ことを支持する論拠は間違っていることが完全に証明されています。

なぜ財務省や一部の識者が、このような非現実的な税収弾性値を主張するのかといえば、財政出動の効果を認めたくないからです。財政出動で税収が増えると証明されてしまえば、増税という悲願が達成できなくなります。一部の識者は単に財務省のお抱え論者となっているのか、または過去の発言の間違いを認めたくない人たちなのです。

こんな馬鹿馬鹿しい理由で、公共事業は削られ増税が強化される緊縮財政が進められてきたとしたら、財務省と一部の識者の罪は極刑では収まらないほど重いはずです。国のインフラが弱体化することで震災による被害者が増え、企業が儲かる一方で賃金格差は広がり、可処分所得が減ることで貧困層が増えているわけですから。

まとめ

  • 2017年の税収は26年ぶりの高水準に
  • 財務省の税収の見積もりは、低い税収弾性値のために低くなる傾向に
  • 財務省の設定する税収弾性値は1.1だが、実際は平均2.62で推移
  • 財務省が低い税収弾性値を設定するのは、財政出動の効果を薄め増税の必要性を説きたいから
  • 間違った前提で緊縮財政が進められてきたとしたら、国民を不幸にしてきた財務省や政治、一部の識者の罪は重い