生産性向上のカギは、ストレスの少ない自然な働き方を追求できるかどうか

働きアリの法則というものがあります。簡単に説明すると、よく働く・働くが時々さぼる・働かないアリの割合は、2:6:2になるというものです。面白いのは、よく働く2割だけを集めても、その中でやはり2:6:2に分かれてしまうところです。

働かない2割の存在を許さない不寛容な日本社会

なぜそのような割合になるのかといえば、それがもっとも生産性が高く組織を維持できるバランスだからと考えられています。普通に考えれば、さぼる2割は無駄だと思いますが、働く8割の一部が働けなくなった場合、いつもさぼっている2割の中から働く者が現れます。そうすることで、一定の生産性をキープすることができるのです。常にみんなが働いている状態だと、その中から怪我などで働けない者が出てくるとこれまでの生産性は維持できなくなります。長期的にみると、やはり2:6:2のバランスが最適だということになります。

企業のブラック化が問題となっていますが、かつては必要悪だと容認してきたあまり働かない人たちの存在を許さなくなったのが一因だと思います。20年来の不景気の中、企業は利益を確保するのに四苦八苦してきました。売り上げが増えないのですから、できることといえばコスト削減しかありません。その中でも人件費は削減効果が高く、リストラで不必要な人間をバサバサ切っていったのです。

昨今では景気が回復傾向にあり人を増やす企業も増えてきましたが、将来的に好景気が続くのか確実でない現状では、非正規や低賃金などで人件費を抑えるマインドは根強く残っています。そして、できるだけ余分な人は雇わないようにし、一人一人の生産性を高めることで増える仕事をカバーしようとします。そうするとさぼる人を容認するわけにはいかず、やはり労働者の尻を叩くような働かせ方になってしまいます。

おかげで企業業績は過去最高水準まで高まりましたが、それに見合う賃金上昇はなく、働く人たちからお金と気持ちの余裕は奪われてきました。とくに、若者や非正規などにしわ寄せがきます。この状況は企業にとっても良くなく、仕事や企業に対する労働者の愛着は、他国と比較し極めて低くなってしまったのです。

出典:内閣府

個々のペースでストレスなく働けるかが生産性向上のカギ

人は働きたくないわけではなく、したくない仕事はしたくないのです。尊敬できない上司から怒鳴られながら働くのが普通とされてきた日本の職場ですが、それは地獄でしかありません。パワハラやセクハラが許されない社会になり、日本の職場も変わりつつあると思いますが、価値観の違う人たちがひとつの職場に集まるのですから、どうしてもストレスフルな要素をすべて取り除くのは不可能なのです。

日本の職場は生産性が低いといわれていますが、ストレスのある状況で生産性を高めることは難しいのです。生産性を高めるためには、どのようにストレスを取り除くかが重要なカギとなります。そのヒントとなるような「働き改革」のケースが、たまたま2つほど報じられていましたので紹介します。

日立がテレワーク10万人 社員の過半、生産性向上へ

日立製作所は2~3年以内に、10万人規模の社員が自宅や外出先で働ける体制を整える。国内で働くグループ社員の過半に当たる異例の規模だ。社外の業務拠点を増やすほか、情報漏洩などのリスクが少ないシステム環境を整える。通勤時間を減らし生産性を高めるほか、多様な人材確保につなげる。海外大手に比べ遅れていた働き方改革が広がるきっかけになりそうだ。

社内調査では、9万人がこうした働き方を希望しているといいます。やはり、出社して働くことのストレスがかなり大きいことを伺わせます。テクノロジーの進化が、より人々を幸せにする働き方を可能にしている一端がみえます。

出退社が自由、休みも連絡不要の職場がある

働く時間も自由、当日欠勤も自由。働く人に徹底的に優しいエビ工場が大阪にある。なぜ、こうした仕組みを取り入れたのだろうか。好きな時間に出社してOK、それでいて帰る時間も自由。休む日も連絡なしでいいし、嫌いな仕事はしなくていいという働く側にハッピーすぎるエビ工場がある。

これまでの常識と逆の働き方で、しかも作業効率は上がった上に人件費は3割削減できたというから驚きです。今後も同じ働き方で持続して成長できるかは分かりませんが、まさにアリのように自然に任せることの正しさがある程度証明されたのではないでしょうか。

手前みそではありますが、ぼくの働き方もこのエビ工場のモデルを追求したものです。パートの配送の仕事は、働きたいときだけ働くというわけにはいきませんが、仕事は配達だけに限定され残業はなしです。合間の空いた時間は、(暗黙ですが)ネットをしようが寝ようが自由です。ストレスなく自由な反面、どうしても賃金は低くなります。それを補うために、本当にしたい仕事であるテクノロジー分野の翻訳やライティングで小銭を稼いでいます。

まとめ

人には個々の役割があり、会社に不要だとされる人でも実は見えない成果を出しているのかもしれません。ただそれが数字に表れないと、企業は切らざるを得ません。しかしそんなことを続けていては、人手不足が深刻化するとされる将来、持続可能な職場や社会を維持していくとは難しくなるのではないでしょうか。いまこそ、これまでの常識に捉われないマインドシフトが必要とされています。