『健康で文化的な最低限度の生活』を観て思うこと。やっぱりBIを導入すべき

健康で文化的な最低限度の生活』は、柏木ハルコによる生活保護を対象とした新人ケースワーカーの日々を描いた漫画で、現在ドラマが放映されています。

ケースワーカーは生活保護受給者の生活をサポートするのが仕事で、個々の受給者に対し面談や訪問を通じアドバイスしたり、就労指導で受給者が安定した所得を得られるよう支援したりします。8月6日放送分では、意図せず不正受給していたシングルマザー家族を巡るお話でした。

生活保護対象者の2割程度しか受給していない現実

ケースワーカーは一人当たり、約80世帯を担当するといいます。ドラマの主人公は、約110世帯の担当をしているので、多い方の部類に入るでしょう。ケースワーカーの総数は約1万4000人で、標準数に対する充足率は全国平均で89.2%なので、ここでも人手不足が問題になっています。計算や書類作成など事務仕事に追われ、実際にはドラマのような担当世帯への丁寧な支援は難しいといいます。

現在の生活保護受給者数は約210人約164世帯で、バブル崩壊後右肩上がりだったのが、5年程前から減少傾向にあります。しかし、アベノミクスの成果だ、なんて楽観していられない現実があります。

生活保護受給者の推移 出典:JIJI.COM

生活保護基準を下回る経済状態の世帯のうち、現実に生活保護を利用している割合「捕捉率」は2割程度だと言われています。実際には、この数の5倍以上の人数と世帯が生活保護を受ける資格があるのです。もし、本来受けるべきすべての人が制度を利用したとすると、年間の生活保護費は今の5倍、約20兆円必要になる計算です。また現状でさえ不足しているケースワーカーも5倍は必要となるわけで、現実不可能な負担額と人員増です。そもそも本来受け取るべき人が受け取れない、いまの生活保護の制度は既に破綻しているといえそうです。

人としての尊厳を守るためにも必要なベーシックインカム

では、なぜ生活保護を受ける資格があるのに受けていない人が多いのでしょう?それは、生活保護受給者に対する世間の冷たい目があり、また受給者にもそれを恥と考える風潮があり、心理的な抵抗感が大きいからといいます。さらに政府や自治体の広報が不十分で、制度の正しい知識や理解が伝わっていないことも理由です。あるにも関わらず、利用しにくい制度になっているのが現状のようです。

『健康で文化的な最低限度の生活』のタイトルは、憲法25条の定める生存権(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)からきています。つまり、先進国とされる日本の多くの世帯で生活保護の捕捉率が低いということは、多くの人たちが必要最低限の生活が保障されないまま放置されていることを意味します。

解決策として真っ先にぼくの頭に浮かぶのが、ベーシックインカム(BI)の導入です。BIは、生活のため必要最低限のお金を、すべての国民に配る制度です。BIが実現すると、憲法25条の定める生存権が保障され、『健康で文化的な最低限度の生活』の物語が成立しない世界になります。

財源はどうするんだ?との声は必ずあがりますが、1億2000万人に年間100万円を支給した場合の総額は100兆円になります。現在の年間の社会保障給付費は約120兆円です。BIにすると、年金や各種保障や手当をひっくるめた支給になるのでそれほど非現実的な金額ではないはずです(医療費の負担はどうなるかなど、テクニカルな問題は残りますが)。しかも生活保護や年金などに携わる職員が削減されるので、かなりの行政の簡素化が可能になります。そのコスト・人員削減効果は莫大になるはずです。一時的に失業者が大量に出たとしても、BIがあれば余裕をもって次の仕事を探したり起業したりするなどが可能になり、精神的にも楽になります。

BIにすることで支給額が減る年金受給者や、仕事が大幅に削減される公務員、生活が保障されることで雇用の流動性が高まることから企業などから抵抗はあるでしょうが、日本全体の幸せ、経済成長、社会保障制度の持続性を考えると決して突拍子のない提案ではないと思います。憲法違反を放置しているのは、ぼくたち日本国民すべての責任なんです

まとめ

今回の記事を書く当たり、生活保護の捕捉率が2割程度だということにショックを受けました。ぼくも生活保護に対しては、怠け者の制度だとか不正受給だとかネガティブな印象をどうしても持ってしまっています。そのようなイメージが、生きるために本当に生活保護を必要としている人たちに、制度を利用することを躊躇させているのです。中には生活苦から、自ら命を絶つ人たちもいるでしょう。国の根幹である憲法の違反を放置しているこの状態は、真っ先に解決すべき問題だと気づきました。それなのに、最低限度の生活も保障されていない人たちからも消費増税で負担を増やそうとしているいまの状況は、異常としかいいようがありません。