結局「高プロ制度」ってどうなの?適用範囲の拡大で貧困化が加速する可能性も

高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)」をGoogle検索すると、以下のサイトがトップページに表示されます。

高プロ制度の解説をします

この「働き方改革」関連法案には、裁量労働制の対象拡大と高度プロフェッショナル制度(高プロ)の2つの毒が仕込まれていましたが、裁量労働制についてはデータ問題によって、今回の法案から外されました(健康確保措置という規制強化部分もなぜか削除されました)。しかし、残っている高度プロフェッショナル制度・・・これぞ猛毒なのですが、残念なことにこれは残っています。

高プロ制度を猛毒と断定しているので、当然記事の内容も高プロ制度のデメリットを強調しています。これだけで高プロ制度について判断するのは危険なので、いくつかのサイトを参考にメリット・デメリットについて考えてみました。

単純に悪法と決めつけられないから質が悪い

「働き方改革」関連法案が審議され、高度プロフェッショナル制度が採決されました。高プロ制度のデメリットを強調した冒頭の記事では、労働時間の規制がなくなることを問題視しています。

例えば、現行の1カ月平均80時間、1日8時間、1週40時間までという時間外労働の規制が高プロには適用されません。また、6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を与えるという規制も外されます。高プロの労働者には労働時間の規制という概念がないので、どれだけ働かせても残業代を払う必要ががないため、「残業代ゼロ法案」とも呼ばれています。

とはいえ無制限に働かせてもいいわけではなく、年間104日以上、4週間で4日以上の休日を与えることが健康確保措置として規定されます。また健康確保措置として、「勤務間インターバル制度と深夜労働の回数制限制度の導入」、「労働時間を1ヵ月又は3ヵ月の期間で一定時間内とする」、「1年に1回以上継続した2週間の休日を与える」、「時間外労働が80時間を超えたら健康診断を実施する」の中から一つ選び実施しなけらばなりません。

現時点では対象となるのが、年収1075万円以上の高度専門職とされていますが、職種についての定義はあいまいで、実質年収要件だけになるとみられています。また、年収要件をクリアしたすべての人が対象となるわけではなく、会社と個人の合意も必要となるため、年収が下がらないよう交渉することが可能だとされています。

じゃあ誰にとってメリットのある制度かというと、既に成果主義に基づいて働いている真の高度プロフェッショナルと、残業代を抑えたい企業になると思われます。既に成果主義で働いているプロフェッショナルは労働時間より成果が重要なので、むしろ労働時間の規制がなくなることでメリハリのある働き方が可能となり、より成果を出しやすくなるかもしれません。逆に残業時間を確保することで年収の高かった人たちは、残業という概念がなくなるので厳しくなるでしょう。残業費を抑えたい企業にとってはメリットしかありません。

今後は高プロ制度の対象範囲が広がる可能性も

冒頭の記事でも指摘していますが、高プロ制度の対象となる労働者の範囲が広がることは十分に考えられます。そもそも高プロ制度は、経団連からの強い要望が始まりです。つまり、主に経営者側にとって都合の良い制度であり、人件費を削減できるのであれば自社でも採用したいと考える経営者は多いはずです。

労働規制に対する緩和は、小さな穴から始まります。「蟻の一穴」と表現されるように、一度開いた穴は徐々に広がっていきます。1985年に可決された労働者派遣法は、専門的知識などを必要とする13業務を対象としていましたが、いまでは専門知識をまったく必要としない単純労働にも適用され、低賃金の労働力を確保できる経営者にとって都合の良い制度に成り下がっています。外国人労働者の受け入れについても同じで、徐々に対象となる業種は緩和され、受け入れ人数も増加しています。高プロ制度が同様に、適用範囲が広がるのは誰でも容易に想像できるでしょう。

まとめ

現状では年収1075万円以上と全体の4%程度の話なので、あまり人々の関心も高くありませんし、経済に与える影響もそれほど大きくないかもしれません。しかし、当初経団連が求めていた400万円以上の労働者に対象範囲が広がると、その影響は無視できないものになるでしょう。この20年間で非正規雇用の割合の高まりとともに下がり続けてきた実質賃金のさらなる下げ圧力となり、国民の貧困化が加速する可能性もないとは言えません。無駄な長時間労働の対策としてある程度の正当性はあるのかもしれませんが、その副作用はについても真剣に考える必要がありそうです。