概算要求が100兆円超えで過去最大に。歳出を削ればGDPと税収が減る

各省庁からの概算要求の締め切りが8月末に迫り、メディアでは要求額が100兆円を超えることを大きく取り上げています。

来年度予算の概算要求締め切り(31日) 「歳出100兆円」どう効率化

財務省は31日、2019年度当初予算案に対する各府省の概算要求を締め切る。要求総額は5年連続で100兆円を超え、過去最大となる可能性が出ている。

予算を増やしたい各省庁と削減したい財務省の綱引き

毎年8月末に次年度の一般会計の概算要求が締め切られ、財務省はそれを12月末までに精査して予算の政府案を作ります。政府案は翌年1月から国会で審議され、3月末までに成立して当初予算となり、4月から予算が執行されるという工程を経ます。

概算要求には財務省が示す予算方針として基準(シーリング)が設けられ、実質的に歳出の上限を決めてしまいます。そして当初予算は、概算要求をおおむね4%程度カットした水準で調整するよう決められており、足りない分は年度途中に補正予算が作成され、当初予算への上乗せによる修正が行われます。その場合の歳出総額は、わざわざ当初予算で概算要求を4%カットしているのにもかかわらず元の概算要求と同じ水準になるのが恒例化しています。

この辺りの駆け引きは、できるだけ予算を増やしたい各省庁と、削減したい財務省との綱引きが見えるようです。

歳出を削ればGDPと税収が落ち込みます

プライマリーバランスの黒字化を悲願とする財務省が歳出削減をしたいのは分かりますが、冒頭の記事でも、「歳出圧力が強まるなか、財務省は年末にかけて財政規律にも目配りした査定が求められる」との一文があるように、メディアでも歳出を削ることがあたかも善であるような論調が目立ちます。しかし、歳出削減には大きな副作用があることの認識が完全に欠落していることが気になります。その副作用とは、歳出を削ればGDPが落ち込み税収が減ることです。

参考までに、2015年と古いデータですが、財務省のHPにあった政府予算の内約グラフを示します。

高齢化に伴い、医療費や年金などの社会保障費の拡大が問題とされており、年金の支給年齢の繰り上げや医療費負担の増加などで社会保障費増加の抑制を図ってきました。また、社会保障費の増加分を補うため、公共事業などの抑制も同時に進められてきたのです。

このような方針が20年来続けられてきたのは、日本は少子高齢化が不可避なため経済成長が鈍化し、税収増が望めないという財務省の認識に基づいています。しかしそこには、社会保障費や公共事業関連費が経済成長の一助になるという観点がすっぽりと抜け落ちています。GDPは民需+政府支出+貿易収支の総額であり、その政府支出を削ればGDPが落ち込むのは当然なのです。GDPが落ち込むと、税収が減るのもまた然りです。税収が減れば、さらに歳出を削らなければならなくなるという悪循環を続けてきたのがこの20年間なのです。

まとめ

政府債務残高が増加するため政府支出を削るという考えは一見正しいのですが、20年来の緊縮財政にも関わらず政府債残高の増加を止められなかった事実は重く受け止める必要があります。GDPは民需+政府支出+貿易収支の総額であるため、政府支出を削減してもGDPを伸ばすためには民需か貿易収支の増大が不可欠になりますが、貿易収支は自国の努力では限界がありますので民需に頼らざるを得ません。しかしバブル崩壊で落ち込んだ民需が回復する前に政府支出を削るという失策を続けてきたため、他国よりGDP成長率が低いという憂き目を見てきたのです。以上のことが理解できれば、いますべきは政府支出の増加(財政出動)だというソリューションを導くことができるはずです。