「社会保障と税の一体改革等による財政健全化」の正当性は既に崩れている

財務省は、国民の負担を増やすことを金科玉条としています。

「社会保障費の伸び 6000億円から極力抑制」 31年度予算で岡本薫明財務次官

7月に就任した岡本薫明(しげあき)財務次官が28日までに産経新聞のインタビューに応じ、編成作業が本格化する平成31年度予算について、社会保障費の前年度比の伸びを「(自然増分の)6000億円から極力抑えさせていただく」と述べ、社会保障制度の見直しで財政健全化を進める重要性を強調した。

増税と社会保障費の削減で余裕のない家計はさらに貧しく

日本は財政破綻の危機にある、だから年々増加する社会保障費を削減し増税する必要がある」と聞けば、多くの国民は賛成してしまいます。その結果、ぼくたちの所得に対する負担率は年々上昇しているのです。

国民負担率(対国民所得比)の推移
国民負担率(対国民所得比)の推移 出典:財務省

では、負担が増えていけば国の財政は健全化していくのでしょうか?残念ながら、悪化はしていませんが健全化といえるような改善はみられません。それも当然で、負担が増えれば家計は消費を抑えるため、GDPの約6割を占める家計消費が伸びず、税収が増えないためです。富裕層は消費税が数%高くなり、社会保障費が削られようと十分な資産があるため消費を抑える行動をとらないかもしれませんが、低所得層の人たちはさらに可処分所得が減額しますので、さらなる節約に走るしかありません。消費税は全国民から均等に徴税するため公平と思われがちですが、所得の大部分を消費に回さざるを得ない低所得者層の負担割合が大きくなる逆進性が働くのです。

過去最高利益を上げている大企業や莫大な資産を有する富裕層の負担を増やすのであれば理解できますが、弱者の負担を増やそうとしている財務省の罪は大きいと思います。「将来にツケを残さない」という誤ったメッセージを信じ、貧しい中日々真面目に暮らしている人たちのお金を吸い上げようとしている財務省の行為は詐欺だと個人的に思います。

経済成長すれば増税や緊縮財政しなくとも財政健全化は可能

本当に「将来にツケを残さない」ことを望むのであれば、経済成長により税収を増やせばいいのです。増税や緊縮財政が経済成長を鈍化させ税収を落ち込ませるのは、日本の20年を振り返れば容易に想像できます。消費税が3から5%になり、本格的な緊縮財政が始まったのは1997年です。この20年間は、ゼロ経済成長のため「失われた20年」と呼ばれているではありませんか。

実は恐ろしいことに、財務省は経済成長を意図的に抑えていたのではないかいう疑義があります。以下は、平成24年(2011年)の財務省の「経済成長による財政収支の改善」に関する見解です。

経済成長による財政収支の改善

経済成長すれば増税しなくても財政再建は可能という説がありますが、どのように考えていますか?

前半略

高い経済成長を実現し、税収が増加したとしても、
(1) ただでさえ高齢者数の増大により毎年1兆円の自然増が見込まれる社会保障費等に、成長に伴う物価上昇などのためさらなる増加圧力がかかること、
(2) 名目成長と同時に国債金利も上昇するが、現在の債務残高は既に巨額に達しているため、国債の利払費が急速に増大すること
など、成長に伴って歳出も増加することに注意が必要です。

当時財務省は、高い経済成長を実現しても、(1)(2)の理由から財政健全化につながらないと考えていることがわかります。では、実際のところどうでしょう?以下は財務省のHPに掲載されている、一般会計税収の推移です。

奇しくも平成24年より経済は回復基調にあり、税収が伸びています。一方で財務省が懸念していた物価上昇や金利上昇は起きていません。インフレ率は目標に遠く及ばず1%前後で、金利はいまだに史上最低レベルで推移しているのです。むしろ健全な経済成長のためには、物価上昇と金利上昇が必要とさえ思えるほどです。平成24年の財務省の見解は完全に間違いであることが証明されているのに、いまだに同じ方向を目指そうとしているのです。

中途半端に成長しているため、あたかも政府と財務省が正しかった証とされる危険性があります。実際には、増税と社会保障費の削減をしなかったら他国と同じ水準での経済成長ができていたはずです。もし、1997年から増税と緊縮財政に走らなければGDPは1000兆円、税収は100兆円を超えていたとの見方もあります。個人的には、少なくとも、低成長率のドイツ程度の成長でGDP750兆円、税収75兆円はいけていたと思いますし、その場合、財政健全化もかなり進んでいたはずです。

まとめ

安倍政権下で堅調に経済成長しているとの見方もありますが、実際のところは小泉政権時と同じように好調な世界経済による外需主導の経済成長です。貧しい家計から裕福な家計すべての負担を増やす一方で、大企業優遇を進めてきたため企業業績は最高水準にありますが、所得が増えないため消費は伸びず、内需は低迷しています。そんな状況で消費増税を2019年10月に控え、さらなる社会保障費の削減が進められようとしています。「財務省亡国論」が現実味を帯びてきているのです。