加速する規制緩和とグローバル化路線。好調な経済指標からは見えない落とし穴

2010年の、辛坊 治郎氏、辛坊 正記氏兄弟による著書、 『日本経済の真実―ある日、この国は破産します』は、新自由主義者の考え方を知るには好著です。「このままだと日本は財政破綻する」とか、「ハイパーインフレになる」とか内容はアレなんですが、新自由主義者が小泉政権を評価している理由が分かりやすく書いてあるので紹介したいと思います。さらに小泉政権の新自由主義路線が後のリーマンショックのダメージを大きくしたこと、そしてその路線を引き継ぐ安倍政権が同じ轍を踏む可能性についても触れたいと思います。

新自由主義者が小泉政権・安倍政権を評価する理由

新自由主義とは、「経済活動は国の関与がなく自由にやらせた方がうまくいく」という考えです。そのため「小さな政府」を是とし、小泉政権イコール郵政民営化だったように、国が担っている事業を民営化することを経済政策の重要課題とするのが特徴です。新自由主義路線は、雇用の規制緩和や水道事業民営化を推進する安倍政権でも継続されているのです。

辛坊氏の著書では、丸々1章を割いて「日本沈没を食い止めた小泉・竹中改革」と小泉政権の経済政策を評価しています。小泉政権の功績は、2001~2006年のデータを見れば明らかだといいます。そして、小泉政権下での経済の好転は、安倍政権下のそれと似たような傾向があることにもt注目しましょう。

株価

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名目GDP

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失業率

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財政収支

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小泉政権・安倍政権とも株価を回復させ、GDPは1%と低成長ですが伸び、失業率は改善し、財政赤字が縮小していたことが分かります。両政権とも、経済面では一定の成果をあげていることは確かなようです。

外需主導の企業業績改善の一方で低迷する内需

では、両政権の経済成長に最も寄与しているものとはなんでしょう?経済成長には好調な企業業績が欠かせません。両政権下では、企業業績の上昇が顕著です。

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一方で、民間消費の盛り上がりに欠けているのも特徴です。

民間消費支出推移(名目・実質)
民間消費支出推移(名目・実質)

消費の低迷は、企業業績の上昇に対して賃金上昇が低迷しているのが理由と思われます。これは、雇用の規制緩和が進み、賃金の安い非正規雇用が増えたことも一因です。

名目賃金1990~2018年(2015=100) 出典:NIPPONの数字

国内の民間消費が低迷しているのに企業業績が回復しているということは、コストカットや生産性の向上、輸出企業が好調であることを意味します。

出典:世界経済のネタ帳

上記のデータの輸出額はドルベースなので為替の影響を受けている一面がありますが、リーマンショックで一時期落ち込んだものの、小泉政権以降の上昇傾向が顕著です。つまり、日本経済は内需が低迷する一方で外需依存度が高まっているのです。財政赤字の縮小も一見すると好印象ですが、それだけ国内の投資が減ることを意味するので、内需縮小につながるのです。

まとめ

表向きは経済成長しているため、小泉政権や安倍政権を評価する声がありますが、実体は外需依存による経済成長なため、リーマンショックのような世界経済へ悪影響を与える大きなイベントが発生すると、一気に景気が悪くなるという危険性が高くなります。グローバル化が進むリスクはリーマンショックで学んだはずですが、財政出動による内需拡大を約束していたアベノミクスでも修正されていません。「企業業績が回復して賃金が上がる」との安易な見方は、世界経済の冷え込みで簡単に吹っ飛ばされるリスクがあることを肝に銘じておきましょう。