ゴミはまとめて焼却して発電した方が環境に良い?リサイクル信仰の怪しさ

先日テレビで、「ごみのマルサ」と呼ばれる人たちがいることを知りました。東京都杉並区のごみ集積所に、6人の作業員が一心不乱にごみ袋の中身を約20分調べています。どうやら「ごみ出しのルールを守らない」、「集積所が汚い」との苦情が市に寄せられたようです。

マルサたちは、分別のルールが守られていないごみの中の郵便物から身元を特定し、家まで分別の徹底のお願いをしに出向きます。その姿がマルサ(国税局査察官)と似ているため、ごみのマルサと呼ばれているそうです。

正直、「そこまでするか」と引きました。確かに、ぼくの住む片田舎でもごみ出しのルールを守らず、業者が回収してくれないケースがたまに起こります。ある地域では、統一されたごみ袋に名前を書いて出さないと引き取ってくれないルールがあるそうです。

杉並区がごみ出しのルールの徹底にこだわるのは、ごみ問題でトラブルを抱えていた過去の経緯があるそうです。1970年代、江東区のごみ埋め立て地「夢の島」には焼却処理能力を超えたごみがそのまま埋められたため、ハエやゴキブリが大量発生し、ひどい悪臭が漂っていました。そこで清掃工場の建設が進められることになったのですが、杉並区では反対され建設が止められてしまいます。そのため江東区の住民が杉並区のごみの受け入れを拒否し、路上にバリケードを築くなどした
東京ごみ戦争」に発展します。そのような経緯があり、いまでは杉並区は1人当たりのごみ排出量が23区で最少だといいます。

リサイクルが環境にやさしいわけではない

実は最先端の焼却炉は、分別されなくても大抵のごみを燃やせます。それでも杉並区が分別にこだわるのは、リサイクルが進まないことや、ごみの中身がわからないと危険だからといいます。ごみに危険物が含まれていれば怪我をする可能性があるため、作業員はヘルメット、長袖・長ズボン、手袋の重装備で仕事をしています。分別が進めば、確かにそのリスクは低減されるでしょう。

しかし、リサイクルを進めることが正しいのかについては疑問が残ります。きっちりと分別していればリサイクルされるというわけでもなく、空き缶中の吸い殻や古紙中のラミネートなど、純度を下げるものが回収物の中に入ってしまうと品質が落ち、リサイクルのたびに不純物濃度が増加します。また、有害物質が混入した場合、薄く広く拡散させてしまうこともあります。さらに、焼却処分したり、新たに製造したりする以上にリサイクルの工程でコストとエネルギーを余計に使う場合は環境負荷が大きくなる、などの課題が挙げられます。

このように、まだクリアすべき課題があるリサイクルなので、家庭で使われたプラスチック製容器包装の約20%程度しかリサイクルされていません。一方で、焼却して発電される熱利用の割合は60%と、リサイクルされるより3倍も多いのです。

出典:北九州市HP

家庭で分別され回収されたプラごみは、処理場でさらに作業員の手作業によりリサイクルに使えるものだけ分別されます。分別が進めばごみ収集車はそれだけ回収などの運搬頻度が高くなり、燃料と人件費のコストが高くなります。時間、コスト、労力を要してリサイクルした結果がこれですから、リサイクルがどれだけ非効率な作業なのかがわかると思います。

海外でもリサイクル活動は進んでいますが、2010年代資源ごみの最大輸入国だった中国は、2016年には廃プラスチックの輸入量は730万トンに及んでいましたが、資源ごみに含まれる汚染物質がリサイクルの過程で国内環境に与える影響は座視できないレベルとなったため、2017年7月18日、中国当局はWTOに対して2018年より廃プラスチックや未分別の古紙などの一部廃棄物の輸入を停止することを通告したといいます(Wikipediaより)。決して順調に進んでいるとは言い難いのです。

ごみを燃やして電気をつくる廃棄物発電

ぼくは「プラごみも燃やしてしまえばいい」という考えを持っていますが、これは武田邦彦氏の「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」に影響を受けてのことです。同氏も概ね、上記で述べたことのような理由から「金属」と、「その他のゴミ」2種類で分別すれば良いと提言しています。

近年は、ごみを焼却した熱を使う廃棄物発電が進められています。廃棄物発電は、燃料が石油や天然ガスなどの化石燃料からごみに変わっただけです。化石燃料の使用削減につながるのは確かですが、火力発電の約50%の発電効率に対して、廃棄物発電は約12%と低いという課題は残っています。

小規模な焼却炉では発電施設の設置が難しいため、国はごみ焼却施設の大規模化を推進しています。また、プラスチック類も燃えるごみとして回収し、熱量を上げて発電量のアップを図る動きが各地であるといいます。しかし、プラスチックは焼却炉やボイラーを腐食させる塩化水素やダイオキシンの発生源ともなるため、利用にあたっては適切な対策を取らないと有害物質を空気中に放出する原因になります

廃棄物発電の場合、どんなに努力しても約3分の2以上のエネルギーは捨てられてしまい、焼却後の残渣も大量に出てしまうため、どんどんごみを燃やして発電すればよいという話ではなく、引き続きごみを削減し、環境への負荷を減らすことは重要になるといいます。しかしこれらの課題も、今後の技術の進歩で改善する可能性もあり、リサイクルとは別のごみ対策として進めるべきだと思います。

まとめ

「リサイクルはいいことだ」と現状に満足している人は多いと思いますが、その後の過程を見てみると、そんな単純な話ではないことがわかります。分別、運搬の手間やコスト増加、そしてリサイクル施設を建設し作業員を確保する必要があります。それだけのコストをかけて、プラごみの再生率は2割程度です。その割合をもっと高めるのであれば、さらなるコストアップを許容するという国民的コンセンサスが必要になります。また、リサイクルはコストだけの問題ではなく、循環型の社会をつくることが目的という見方もあり一筋縄ではいかないテーマですが、ごみのマルサが登場する現状には、大きな違和感を抱くのが正直なところです。