未来のNASAも予算の制約に悩まされている?お金の発行量に限界があるという誤解

歴史に「物語」を求めることの危険性を説いた、興味深い記事です。

「歴史に学ぶくらいならワンピースを」日本史学者・呉座勇一の警告

「本能寺の変」や「関ケ原の戦い」などを巡り、世にはびこる様々な陰謀論や俗説を、専門家の視点から“ガチ検証”した『陰謀の日本中世史』(角川新書)が11万部のベストセラーになっている。著者で日本史学者の呉座勇一さんは「歴史『を』ではなく、歴史『に』学ぶのは危険」と訴えます。「『物語』が欲しいなら、ワンピースやスラムダンクを読んで」とも。

呉座勇一氏は、源義経の戦術が大東亜戦争で日本軍が「奇襲」を多用した背景のひとつにあったことを例に、歴史の俗説が実社会に害を及ぼすことがあることを説明します。この記事を読んで思ったのが、元寇(蒙古襲来)の勝因が「神風」だったとする俗説も、日本に蔓延る精神論の元凶のひとつではと思いました。

人々の精神に根付く漫画文化

呉座勇一氏は歴史の俗説を史実として誤解することの危険性を説き、俗説、つまり「物語」の要素が欲しければ「ワンピース」などの漫画を読んだ方がいいと主張しており、ぼくもまったく同感です。「ワンピース」はほとんど読んだことないので知りませんが、恐らく「神風」的な一発逆転や、努力は報われるという精神論的な物語で溢れているため人々を感動させるのだと思います。しかしそこには現実世界との一線が明確にあるため、実社会に悪影響を与えるには至らないのかもしれません。

しかし漫画の影響力は大きく、日本文化を世界に発信している最大のメディアが漫画やアニメだと思います。以前、日下公人氏が「ポケモン」が世界に日本精神を根付かせるという感じの主張をしていましたが、当時は「?」って感じでしたが、いまではその可能性もあるように思います。インバウンドが好調なのも、アニメをきっかけに日本に興味を持った外国人が多いことも要因のようです。

ぼくの大好きな「宇宙兄弟」もアニメ化され、某大手動画サイトでスペイン語(?)版がアップされており、世界中で観られているのだと知りました。「宇宙兄弟」の物語も「運」が物語を大きく左右するのですが、その運を引き寄せるものが「実力」や「人間性」であることを丁寧に描いているので、歴史の俗説を学ぶより現実的なストーリーとして楽しめる良作だと思います。息子が高校入学するときのプレゼントは、「宇宙兄弟」全巻しかないと決めています。

お金の発行量には限界があるという誤解

前置きが長くなりましたが、「宇宙兄弟」を読んでいると、未来のNASAやJAXAが予算の制約に悩まされている場面が度々でてきます。宇宙飛行士候補生の選考過程において、ある識者がメディアで喧伝する「国内に問題が山積しているのに、宇宙開発している予算的余裕はない」との声に、どう反論すべきかという課題が与えられます。2026年になっても、「予算が~」とやっていることに漫画ながら怒りがこみ上げてきました。

以下の「一般会計予算の概算要求が100兆円超え」の報道に対するヤフコメでも、「公務員と議員の数と給与、社会保障費を削減すべし」との声が主流となっているのが現状です。

概算要求102兆7658億円、初の当初予算100兆円超えへ

財務省は7日、各省庁が提出した平成31年度一般会計予算の概算要求額が102兆7658億円になったと発表した。28年度要求額(102兆4099億円)を上回り過去最大で、総額が100兆円の大台を超えるのは5年連続。30年度当初予算比では約5・2%増えた。政府の重点施策に配分する「特別枠」の要望も4兆3175億円と、記録が確認できる23年度以降で最大となった。

残念ながら、ほとんどのコメントが緊縮財政を求めており、「借金=悪」のイメージから抜け出せていないのがわかります。もし本当に財政健全化が必要なほど財政が悪化しているのであれば、なぜ日本国債の金利が世界最低水準であり、世界経済が怪しくなれば日本円が買われるのかを説明する必要がありますが、そのような意見は皆無です。

やはり、「お金」に対する世間一般の考え方に誤解があるようです。いまだに、金本位制の延長線上の考え方に捉われています。金本位制を採用していた時代は、お金の発行量は「金」の量に制約されていたため、モノやサービスの生産量が増えてもお金の量を増やせないためデフレになる宿命にありました。世界的なデフレで世界大恐慌になったため、国々は次々と金本位制から離脱していきます。

かといって無制限にお金を発行していけば、いまのベネズエラのように生産力に対してお金が増え過ぎハイパーインフレになってしまいます。そこで過度なインフレを抑制するためお金の発行量を調整する中央銀行が必要になります。財政健全化も、過度なインフレを抑えるためか、他国への借金返済を確実にする手段に過ぎません。日本では過度なインフレどころか、適度なインフレ率とされる2%も達成できていませんし、国債も他国に依存せず国内で余裕で消化しています。むしろ、お金(国債)をもっと発行し、財政を悪化させお金の価値を下げる必要があるのです。

じゃあ増え続ける「国の借金(正確には政府の借金)」はどうするんだ、との声もあると思いますが、どうしても借金を返済したければ、インフレ率が高まり経済が過熱したときに増税や政府支出の削減をすればいいし、法律の改正が必要になると思いますが、1兆円の政府硬貨を必要に応じて発行し借金を帳消しにすることも主権国であればできるはずです。その際問題となるのが円の信認低下や、いま財政拡大ができないのと同じで国民の反対が大きくなることです。

円の信認低下については相対的に国の信用力が高い間は大きな心配はなく、国民の理解さえ得られれば、生産能力の高い日本は自らあらゆる手段が講じられるのです。それなのに、無理解なため自ら手足をしばってじり貧になっているのが日本の現状なのです。

まとめ

冒頭で、歴史の俗説から学ぶ危険性について述べましたが、高橋是清のインフレ政策はいま見直されるべきではないでしょうか。史実とストーリーを織り交ぜた漫画で発信してくれる人が現れるのを期待しています。一時期三橋貴明氏が高橋是清を題材にした小説を試みましたが、お世辞にも成功したとはいえません。麻生太郎氏と思わせる人物を、現代の高橋是清として登場させたのが失敗かもしれません。この状況で高橋是清が、麻生太郎氏のように消費増税に賛成するわけありませんから。