お金に関するとんでもないミスリード記事。日本人の貯蓄率は平均すると約20%

日本の景気がいまいち低調なのは、家計消費が伸びないことが要因のひとつです。「国際的にも日本人の貯蓄志向は高い」とのイメージはみなさなんが共有していると思いますが、どうもOECDのデータでは「日本人の貯蓄率は他国と比較して低い」ことを示しています。

日本では2000年から貯蓄率が下がり始め、2013と2014年にマイナスになってからは回復傾向にあります。増税や社会保険料の増加、賃金低迷による可処分所得の減少により貯蓄率が下がるのは理解できますが、さすがに近年の3%前後でも低すぎるように感じます。

Wikipediaによると、貯蓄率の算出方法には3つの方法があるそうです。それが「国民経済計算の家計貯蓄率」、「家計調査の平均貯蓄率」、「家計調査の黒字率」で、OECDが採用しているのが国民経済計算の家計貯蓄率ですが、より実体を表しているのが家計調査の黒字率といわれています。近年の家計調査の黒字率は約27%で、OECDの数値約3%と大きくかけ離れています。

採用するデータで大きく変わる結論

このOECDの貯蓄率を出してきて、アベノミクスを批判するという手法は度々みられます。以下は2015年1月の、日本ゲンダイの記事です。

大メディアはスルー「日本人の家計貯蓄が初マイナス」の衝撃

アベノミクスの失敗を挙げていけばきりがないが、これぞ、決定的な数字ではないか。そう思われる経済指標が昨年12月25日、内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部から“こっそり”出された。

一時的にマイナスになった要因はさまざまですが、OECDの貯蓄率には収入のない人や年金受給者など貯蓄を切る崩して生活している人たちも含まれており、どうしても勤労者世帯中心に算出している家計調査の黒字率より低くなります。ちなみにOECDの貯蓄率でマイナスを記録した2013と2014年は、黒字率でも低下傾向にありますが約25%は維持しています。記事では、勤労者世帯が貯蓄を切り崩さないと生活できなくなったかのようなイメージを植え付けたいのでしょうが、それはいかにもミスリードでしょう。確かにそのような家計が皆無とはいいませんが、平均すると所得の25%は消費に回さなくてよい程度の余裕はあるのです。

以下の記事も、OECDの貯蓄率を真に受けたミスリードをしている記事です。

日本の貯蓄率は世界41か国中「34位」(下から8番目) なぜ日本の貯蓄率は低いのか?

「経済協力開発機構」であるOECDでは、いろいろな統計を取っていますが、その中には世界各国の貯蓄率の比較というものもあります。この統計値はGDPに対するパーセンテージとして示されています。2011年から2014年の41か国で比較されている統計を見ると、日本はほぼ34位、下から8番目という順位になっています。常に20%を誇っているノルウェーをはじめ、10%前後をキープしているスコットランドなどの北欧・欧州と比べると、日本の2011年から2014年までの平均0.9%という数値はあまりにも少なく感じます。

二級ファイナンシャルプランニング技能士の小柳 結生氏によって書かれた記事ですが、平均的な日本人は「ほとんど貯蓄できない」ことを前提にしています。そして結論として、北欧・欧州の人たちと日本人の違いは、習い事などの教育に高額な金をかけたり、週末に外出して多くの出費をしたりする日本の国民性の違いにあると結論付けます。しかし、OECDの貯蓄率とは違う家計調査の黒字率という統計があることを知っていれば、同じ結論を導いていたのか怪しいものです。

平均的な日本人の貯蓄率は約20%

貯蓄率に関するサイトをざっとチェックすると、昨日タイミングよく現実に即した貯蓄率を提示しているものがみつかりました。

平均貯蓄率は22%。20代、30代の貯蓄グセがキモ

平均貯蓄額、平均収入といったお金に関するデータは、各省庁が発表する統計データのほかに、金融機関や調査会社などによる独自調査データが多くあります。こうしたデータを見ると、「現実離れしている」という声が上がります。確かに平均値はあくまでも平均で、自分の生活実態にそぐわない面もあります。それでも、統計データを自分事としてとらえることが、マネー管理の面では役に立つことも多いのです。

以下は、同サイトに掲載されている二人以上世帯の家計収支(月額平均)です。

出典:マイナビニュース

2016年の貯蓄率は21.3%で、2017年は22.3%とわずかに上がっています。また、以下は別サイトに掲載されていた年代別の貯蓄率を出したもので、全体平均に前述のデータとは多少の違いがありますが、日本人の平均的な貯蓄率は20%だとわかります。また、若い世代ほど貯蓄率は高く、結婚して子どもの教育費が高くなる世代ほど、貯蓄率が低くなります。

年代別家計収支 出典:All About マネー

まとめ

日本人の平均家計貯蓄率は約20%で、まあそんなものだなと理解できます。OECDの約3%の貯蓄率が非現実的なのは、消費支出や家計の総貯蓄額などのデータとの整合性をみれば明らかですが、同データを基にしたミスリードをする情報がネットでは溢れています。かといって、OECDのデータが出鱈目というわけではなく、国際基準の算出方法で出しているのは間違いありません。ただ、各国の雇用や年金など社会保障制度の違いなども理解した上で取り扱う必要があるようなので、一般的に貯蓄率について語るときは、OECDのデータは有効ではないといえそうです。