国債に関するとんでもないミスリード記事。超低金利でも旺盛な長期国債需要

アベノミクスに諸手を挙げて賛成しているわけではありませんが、反アベノミクスの多いメディアのミスリード記事にうんざりしています。正しい経済政策に導くには、アベノミクスのメリット・デメリットを正しく評価しなければなりませんが、安倍政権の経済政策はすべて悪というのではフェアではありません。

以下の記事が、最近では代表的な反アベノミクスの記事です。

2022年までに日本経済は破綻する。アベノミクス成功でも終焉でも未来は同じ=高島康司

今回はアベノミクスの終焉で、2022年までに日本経済が苦境に立つ可能性について解説したい。(中略)

「長期金利の上昇」が暴落スイッチに
景気を失速させるスイッチになると考えられるもっとも重要なものが、長期金利の上昇である。

長期国債の買い手が減っているというミスリード

記事の中で高島康司氏は、金利の高騰でアベノミクスは終焉を迎えると主張しています。そして、その兆候は既に出ているそうです。

予兆のひとつは、国債の下落である。8月2日、上昇が続いている長期金利は、一時0.145%となり、1年半ぶりの高値になった。また、8月4日、長期金利の指標となる「10年モノの新発国債」は、値がつかず取引が成立しなかった。売買が成立しないのは今年になって6回目だ。アベノミクスが実施される前の2001年から2013年には、売買の不成立は1日もなかった。2017年も2日だけだ。半年間で6回もあるのは、やはり異例である。値がつかないのは、国債の主要な買い手である銀行が、将来の下落を警戒して買うのを手控えたからだ。

0.145%程度の金利上昇なんてまったく問題にならないレベルです。これについては後述します。ここでぼくが大きな問題だと思うのが、”8月4日、長期金利の指標となる「10年モノの新発国債」は、値がつかず取引が成立しなかった。売買が成立しないのは今年になって6回目だ。”の部分で、これを普通に読むと「10年モノの新発国債の札割れ」が起きたことを意味し、事実なら大ニュースになっているはずです。

しかし、ネットで情報を探しても見つかりません。どうやら高島氏は、以下の記事のことを自分なりに解釈して述べているようです。

新発10年国債が取引不成立、日銀政策修正後で初めてー今年7回目

29日の債券市場で新発10年物国債351回債は、業者間の売買を仲介する日本相互証券で取引が成立しなかった。日本銀行による大量の国債買い入れで市場に流通する国債が減少して取引が成立しづらくなる中、当面の買い入れオペ運営方針の発表を週末に控えて取引に慎重姿勢が強まった。

まず、高島氏の言う「8月4日に取引が成立しなかった」事実はなく、7月4日の間違いのようです。確かに新発10年物国債351回債取引が成立しづらくなっているようですが、それは「日本銀行による大量の国債買い入れで市場に流通する国債が減少している」のが主な理由で、高島氏の主張する「国債の主要な買い手である銀行が、将来の下落を警戒して買うのを手控えた」は間違いの可能性が大きいのです。そして重要なのが、取引の不成立が起きているのは「業者間の売買を仲介する日本相互証券での取引き」であり、財務省の発行する10年国債の入札については、2002年9月20日以来、札割れが起きていないことです。

それは財務省のHP(国債等関係諸資料)で確認できます。

国債の入札結果をクリックすると、エクセルファイルをダウンロードします。以下が今年の10年債の入札結果ですが、2002年(平成14年)9月20日に札割れを起こして大きなニュースになりましたが、2018年は発行予定額に対し応募額が3倍以上もあり、市場が国債を求めていることがわかります。

この通り、財務省が発行する国債は堅調に消化されていますが、日銀の国債引き受けにより市場に出回る国債が品薄になり、業者間の取引は不調になっているのが現状です。取引の不調は決して国債に魅力がなくなったことによる金利の上昇の兆候ではなく、むしろ旺盛な国債需要を満たすだけの国債を財務省が発行していないことを意味するのです。

高島氏は、慶應義塾大学名誉教授金子勝氏の受け売りでこのような記事を書いているようです。金子氏は、メディアで「長期国債売買不成立が今年〇回目の異常事態」などと喧伝しています。確かに異常事態なのですが、それは前述した通り、国債の品不足による売買不成立であり、あたかも金利上昇の兆候であるようにアピールする高島氏や金子氏の主張は、ミスリード以外の何物でもないのです。

長期国債金利が上昇しているというミスリード

最近の反アベノミクス記事では、最近の長期国債金利の上昇を必ず指摘してきます。一般の人たちも、以下のような記事を読むと、「長期国債金利は上昇している」とのイメージを持つはずです。

長期金利上昇0・110%

10日午前の国債市場は、長期金利の指標である新発10年債(351回債、表面利率0・1%)の利回りが前週末終値より0・005%高い0・110%で始まった。

確かに、過去1年の推移でみると最近は上昇傾向にあるように見えます。

しかし過去10年の推移では、異常に低い水準で推移していることがわかります。

これでよく、長期国債金利が上昇しているといえたものです。また金利の上昇は、景気が回復し国債以外に資金が向かっていることを意味するため、決して常に悪いことではないのです。景気が回復すれば税収も増え、財政健全化に向かいますから。

まとめ

「長期国債金利が上昇している」、「国債が売れなくなっている」という記事は、ほぼ反アベノミクスを目的としたデマ記事と判断してよいでしょう。そのような記事は、長期のグラフを出さない、どの国債取引市場のことかを説明しない、という特徴があります。また、金利が上昇するということは景気の回復を意味しますが、それによる税収増加の可能性についても言及しません。アベノミクスには突っ込みどころがたくさんあります。国債が不足しているのに増発しないこと、消費が低迷しているのに消費増税しようとしているところなど。ぜひ反アベノミクスの識者には、「国債増発と消費増税反対」を訴えてもらいたいものです。