消費増税分の8割が借金返済へ使われている。借金を返すと国民の資産が減る

安倍晋三首相によると、10%の消費増税において借金返済への割合を消費増税分8割から5割まで減らすそうです。

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「そして大切なことは、人生100年時代を迎える。そういう中で、少子高齢化という国難とも呼ぶべき、この難題に真正面から立ち向かわなければならないと考えています。そこで、来年消費税を引き上げる際に、消費税の使い道を今まで8割を借金返しに使っていたものを、半分を子供たちの世代に教育の無償化、そして幼児教育の無償化等にふり向けてまいります」

5から10%の消費増税分の8割を借金返済のために使うことは、2012年の民主党政権時代に、民主、自民、公明の三党合意に基づいて行われた「社会保障と税の一体改革」によって決められました。安倍首相はその割合を5割に下げ、教育の無償化と幼児教育の無償化などにふり向けることを明言しました。

借金を返すと国民の資産が減ります

消費増税分は社会保障費へ回されるとのイメージが一般的ではないでしょうか。それが8割も借金返済のために使われていたのです。その割合を5割に下げ、教育の無償化と幼児教育の無償化などにふり向けるのは歓迎しますが、まだ5割も借金返済に使おうとしています。一方で国民の年金支給年齢を遅らせたり、社会保険の負担を増やしたりしているわけですから、国民の負担を増やしてでも借金を返済しようとしているのです。

国民への配分を減らしているため、国民が消費を減らし貯蓄をする節約志向はさらに強まります。安倍政権は、完全に経済成長による財政健全化の選択肢をつぶそうとしているようにしかみえません。減税をし社会保障を手厚くすることで老後の不安が緩和されれば、国民は消費を増やそうかという気分になります。20年以上植え付けられたデフレマインドを払拭するのは困難ですが、本気でデフレから脱却をしようとしているのであれば、1990年代の前半のバブル崩壊からいまだに回復していない家計と企業の消費と投資意欲をカバーするために、政府がもっと借金を背負わなければいけないのです。

そもそもアベノミクスの肝である量的金融緩和は、民間にインフレ期待を抱かせマネーストックを増やすことを意図した政策です。マネーストックは現金や預金通貨のことで、民間が使える資産のことを意味し、信用創造でマネーストックは増えるため、誰かが借金を増やす必要があります。

マネーストックを増やすとは、民間か政府が借金を増やすことを意味するのです。つまりアベノミクスがは、民間に借金を促しながら政府は借金を減らそうとしているのです。以下のマネーストックの増減率をみれば明らかですが、1990年代前半のバブル崩壊で、バブル期に借金をしまくっていた民間が一気に借金返済に動いたことがわかります。

出典:NIPPONの数字

バブル期に年10%以上で増えてたマネーストックが、崩壊後0%まで落ち込み、その後は4%以下で推移しています。バブル崩壊の影響はいまでも続いており、量的金融緩和で超低金利にもかかわらず、家計も企業もできるだけ借金をしないように慎ましい経済活動を送っています。

それでも近年は世界的な好景気と人手不足に引っ張られて、大企業を中心に設備投資を増やす動きもみられるためマネーストックも3%程度で伸びていますが、もし今後世界経済が冷え込んだときに政府まで借金をしないどころか返済までしようとすると、マネーストックは縮小の一途をたどり、日本経済は落ち込み国民の貧困化は避けられないのです。

インフレにならなければ国はいくらでも借金ができる

家計や民間と同じで、国(正確には政府)が借金を返済することはいいことだ、とのイメージは当然あるでしょうが、上記で説明した通り、借金返済すると誰かの資産が消えることになります。借金返済、もしくは財政の健全化を強行に進めると国民の資産が大幅に減りますので経済も縮小し、ギリシャのようにGDPが20%近くも減り、失業率も20%と高くなります。

ギリシャと日本の大きな違いは、ギリシャには国内の生産力が低いため輸入に頼る経済構造であること、共通通貨ユーロを採用しているため通貨発行権がないこと、そして国内で国債を消化できないことです。日本とは真逆の国情なのです。ギリシャはドイツやフランスを中心とした海外からの借金に頼った経済成長をしていたため、金融危機で一気にデフォルトのリスクが高まりました。

また近年ではベネズエラがハイパーインフレになりました。やはりベネズエラも国内の生産力が異常に低く、紙幣の印刷も自国でできないほどの技術後進国なのです。日本でもお金を刷り過ぎて歯止めの効かないインフレになると主張する識者がいますが、たとえお金を刷ったとしてもそれが生産力を超えるだけの消費につながらないとインフレにはなりません

日本に必要なのは国民全体にお金が十分行き渡り、消費をできるだけの安心と余裕を与えることです。民間の消費と投資が低迷する間は所得の伸びも低調になるため、家計は消費を増やそうとしません。そのため政府は借金を増やしてでも、国民にお金が行き渡るような政策をとらなければならないのです。景気が良くなれば税収が増え、財政健全化に近づきます。インフレが加速した場合は、増税などで経済活動を冷やせばいいのです。

最悪なシナリオはインフレを恐れるあまり借金返済に走り、経済活動が縮小することで生産力が弱まることです。生産力が弱まることで、逆にインフレの可能性が高まります。いま必要なのは政府が借金を増やすことで内需を増やし生産力を高めることですが、超低金利という絶好の機会に、借金を返すという愚策によりみすみすチャンスを逃しているのがいまの日本なのです。

まとめ

現在起きている北海道の電力不足は、地震前から需要をまかなうのがギリギリだった電力生産力のため起きた人災です。スリム化とは聞こえがいいですが、非常事態で必要になるのは普段無駄だとされがちな余剰の生産力です。借金返済、無駄の削減など聞こえのいい政策を進めることで、大震災が起きたときに被害が拡大する上、自国だけで復興できない発展途上国になってしまう可能性が高まるのです。