統計所得に関するとんでもないミスリード記事。厚生労働省は丁寧に説明しています

西日本新聞が、所得関連統計の精度に重大な疑義があることを指摘しています。

統計所得、過大に上昇 政府の手法変更が影響 専門家からは批判も

政府の所得関連統計の作成手法が今年に入って見直され、統計上の所得が高めに出ていることが西日本新聞の取材で分かった。調査対象となる事業所群を新たな手法で入れ替えるなどした結果、従業員に支払われる現金給与総額の前年比増加率が大きすぎる状態が続いている。補正調整もされていない。景気の重要な判断材料となる統計の誤差は、デフレ脱却を目指す安倍政権の景気判断の甘さにつながる恐れがある。専門家からは批判が出ており、統計の妥当性が問われそうだ。

ネットで簡単に見つけられる1次ソース

「政府の所得関連統計の作成手法が今年に入って見直され、統計上の所得が高めに出ていることが西日本新聞の取材で分かった。」とありますが、そのことについては取材するまでもなく厚生労働省のHPで解説しています

毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)

厚労省によると、従来、調査対象事業所のうち30人以上事業所は2~3年ごとに、新たに無作為抽出した事業所に総入替えを実施していましたが、平成30年からは毎年1月分調査で一部を入れ替える方式、ローテーション・サンプリング(部分入替え方式)に変更したそうです。その結果、生じる差についても公開しており、ローテーション・サンプリングにより2086円高く振れているようです。

ご丁寧に、入れ替えの対象にならなかった事業者のみの集計結果も参考値として提示し、公表値との差をわかりやすくグラフ化までしてくれています。

確かに2018年(平成30年)1月の入れ替え後から公表値が参考値を上回り、5月のギャップが異様に大きくなっているためデータの信頼性については疑問があるのがわかります。しかしローテーション・サンプリングとはそういうもので、厚労省もHPで丁寧に説明しており特に問題はないと思うのですが、記事では「景気の重要な判断材料となる統計の誤差は、デフレ脱却を目指す安倍政権の景気判断の甘さにつながる恐れがある。専門家からは批判が出ており、統計の妥当性が問われそうだ。」との一文があるため、あたかも安倍政権が自分たちに都合のよいように数値をねつ造しているような印象を与えるものになっています。まあ、障害者雇用者の水増しの件もあるので、その可能性は皆無ともいいきれませんが。

賃金は増えていてもおかしくない経済状況

そもそも対象者が50万人程度(全労働者の1%未満)の統計なので、対象者が変われば連続性がある程度失われるのが仕方がないのが毎月勤労統計調査だと思います。しかし昨今の経済状況では、安倍政権下でGDPが約50兆円増加し(これも水増し疑惑はありますが”(-“”-)”)、人手不足で失業率は2.5%、好調な企業業績と賃金が増えていても不思議ではありません。

一方で社会保険料の増加や増税などによる可処分所得の減少、雇用の規制緩和による非正規労働者の増加、企業業績の増加に対して鈍い賃金上昇など、賃金が上がりにくい社会構造になっているのも事実です。これから賃金上昇基調になる可能性もありますが、外需主導による好調な企業活動は世界経済の減速で一気に低迷し、非正規雇用の雇止めやリストラ、さらなる賃金の下げ圧力になる可能性も無視できないほど高まっていると思います。

アベノミクスを批判したいのであれば、データの信憑性という「モリ・カケ」と同じで「悪魔の証明」を求めるようなものでなく、家計が消費を増やせない社会構造に焦点を絞った方がいいと個人的に思いますが、メディアは消費増税や緊縮財政など消費を減らす政策には無批判なのが残念です。

まとめ

どうしても安倍政権を批判したい人は、一次ソースを確認することなく冒頭の西日本新聞の記事を鵜呑みにしがちです。この件に関しては、アベノミクスを普段から評価している人たちの論調は概ねぼくが説明した通りで(ぼくもネット情報の受け売りですが)、正しいと思います。ただしその人たちも、以前は「2%以上の賃金上昇でアベノミクスの正しさが証明された」とローテーション・サンプリングの影響を無視していた節があり、どっちもどっちなのかなあとも思います。そんなぼくだって、いま考えるとブログで間違ったこと書いたかな、なんて反省することが度々あります。確実に間違いが判明したら訂正するつもりですが、気づかない(気づきたくない)場合もあるかも。みんな「人間だもの」、あるよね。