政府紙幣の有効性を巡る議論。過度なインフレにならなければ問題ない政府紙幣

日本の財政が破綻しない理由として、「政府は通貨発行権があるから」というものがあります。通常流通しているのが日銀が発行する通貨ですが、それとは別に政府が発行する通貨政府紙幣です。政府紙幣と聞いてもいまいちイメージがつかみにくいので、Wikipediaを参考に簡単にまとめてみます。

政府紙幣の乱発で物価が不安定に

1945年(昭和20年)の靖国神社50銭政府紙幣 出典:Wikipedia

各国で政府紙幣が発行された歴史があり、日本でも特に戦費調達の手段として発行されてきた経緯があります。明治維新後の明治政府は、戊辰戦争時に太政官札、西南戦争時には明治通宝を発行し、その後日本銀行が設立されたことで、各種の政府紙幣は流通が停止し使用禁止になりました。

当時の政府支出の大部分は政府紙幣の発行によって賄われていましたが、当初はデフレギャップが存在していたので物価も上昇せず、経済も順調に拡大しました。しかし1877年(明治10年)の西南戦争の戦費が膨大になったため政府紙幣が大量に発行されインフレが起きました。そこで政府は、増税などによって政府紙幣の回収を始め、物価動向が落ち着いくことになります。しかし新たに登場した松方内閣(松方首相が大蔵大臣兼任)は、さらに多くの政府紙幣の回収したため、大幅に需要が減りデフレになりました。

政府紙幣の流通量で物価が不安定になるのを防ぐため、「通貨の番人」として日本銀行が登場します。日本銀行発足後に発行された政府紙幣はいずれも小額政府紙幣であり、戦時での金属不足などの特殊な状況下日本政府が発行する硬貨の代替との性格が強いものであったといいます。

誰の負債にもならない政府紙幣

一般に流通している通貨は、日銀が発行しています。日銀が発行する通貨は誰かの資産になりますが、日銀にとっては負債になります。「お金は誰かの負債から生まれる」という原則があるからです。しかし、この原則から外れて通貨を発行できるのが政府なのです。「通貨発行権」を有するとは、誰の借金を増やすことなく資産だけを増やせることを意味します。

Wikipediaでは政府紙幣の導入について、以下のように説明します。

近年、一部の経済学者ないし政治家が、ケインズ主義の立場などから、政府紙幣を発行すべきと主張している。政府紙幣は国債とは違い償還不要で金利が付かず債務にならない利点があるからである。また通貨供給量を増大させる手段でもある[11]。裏づけのない政府紙幣を無制限に発行すれば猛烈なインフレーションを発生させる危険性がある。なお日本では硬貨は政府発行であるが、これは国庫の預金を引き当てた上(裏づけとして)で発行している。

裏づけのない政府紙幣を無制限に発行すれば猛烈なインフレーションを発生させる危険性がある」とあり、また実際に日銀発足前の政府紙幣の乱発によるインフレーションが起きたように、政府紙幣の発行で一番の問題になるのが過度なインフレを招きかねないという点です。

しかし日本は20年来の根強いデフレマインドに悩まされてきました。近年は改善の兆しもみられますが、今後もインフレに振れるという期待感は薄く、家計は消費を抑え企業も設備投資に消極的です。その解決策としてインフレを促進する政府紙幣は有効だと個人的に思います。また、国債を発行して政府債務が膨らみ、利払い費の負担が増えることを心配している人も多いようなので、いくら発行しても債務にならないため、利払いの責務も生じない政府紙幣で政府支出をまかなうことも一案だと思います。

このような主張はケインジアン的な経済政策として、消費増税が実施された1997年以降有識者により述べられてきました。Wikipediaではノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ氏や高橋洋一氏、渡辺喜美氏の名前があり、消費増税に賛成する榊原英資氏や竹中平蔵も、当時は政府債務拡大やデフレ対策として政府紙幣の有効性を主張していたというのは意外に感じました。

また、日本で政府紙幣を発行するためには通貨法の改正が必要となるなどの意見もありますが、高橋洋一氏によると政府は通貨法で記念事業として1万円までの通貨(記念貨幣)を発行できるので、記念貨幣であれば法改正は必要ないといいます。

まとめ

以上、政府紙幣について述べてきましたが、現状の景気の停滞や膨張する政府債務のソリューションとして最適だと感じます。ただ、国民にその有効性が認識されるかといえば、厳しいような気もします。確かに普通に考えれば、「そんなおいしい話があるわけない」と感じるかもしれません。通貨の乱発でハイパーインフレになっているベネズエラの実例もあります。しかし生産力が高く、お金がいくら手元にあってもなかなか消費しようとしない日本においては、政府紙幣、BI(ベーシックインカム)、ヘリコプターマネーは景気対策に有効な手段だと思います。経済環境も法律も制約するものはなく、過半数以上の国民でその有効性を認識できさえすれば一気に良い方向に進むという希望を持っています。