金融緩和の限界と輸出減のリスク回避、国土強靭化のために財政出動は不可避

安倍首相に今後3年間、日本の行く末のかじ取りを任されることが決まり、明るい未来にするためにわずかな希望となる報道が出始めています。

安倍氏3選後の課題は対米自動車問題、金融から財政に軸足

20日投開票された自民党総裁選で石破茂元幹事長を破って連続3選を決めた安倍晋三首相。通算の首相在任期間が歴代最長となる展開も視野に入るが、内外で直面する政策課題も多い。中でも日米間の通商問題は、今月中に開催予定の首脳会談で米側から早急な改善を求められる可能性がある。特にトランプ大統領の関心が高い自動車問題で、日本からの輸出規模について注文が付いた場合、対応に苦慮する展開も予想される。

外需主導の経済構造からの転換

第二次安倍政権が発足したのが2012年12月ですから、あと3カ月で丸6年を迎えることになります。その間、景気は回復してきたといわれていますが個人消費は低迷したままで、主に米国を中心とした好調な経済にけん引された外需主導による景気回復でした。近年は世界的に10年ごとにバブル発生と崩壊が繰り返されており、バブル崩壊からの回復期にタイミングよく乗ったのがアベノミクスだったという側面が大きいのです。

しかしリーマンショック後10年が経過し、そのボーナス期間も終わろうとしています。先進国では金融緩和により債務を膨らますことで景気を支えてきましたが、土地や株の高騰という副作用が表面化してきているため引き締めに向かい始めています。さらに冒頭の記事でも紹介したように、トランプ大統領が米国の巨額な貿易赤字の是正のために、関税を引き上げようとする動きが活発になってきています。今後も日本が、外需主導で景気回復していける可能性が低くなっているのです。その懸念は以下の通り、自民党内でも表面化してきています。

首脳会談を含めた日米交渉で、日本の自動車産業に大きな影響が出るような結果になれば、株価や為替の変動だけでなく、雇用問題にも波及しかねない大きなインパクトを持つと与党関係者の一部は、大きな懸念を示す。

「遅いよ」と突っ込みたくなりますが、これでは外需主導で景気回復し4%まで下がっていた失業率が、リーマンショックで5.5%まで急上昇した10年前の二の舞じゃないですか。

出典:NIPPONの数字

といはいえ悲観していたは何も始まらず、一刻も早く内需主導の経済構造へ転換する必要があるのです。

内需拡大と国民の安全を高める国土強靭化

外需主導の経済は、グローバルな競争力を維持するため労働者の賃金が上がりにくく、かつ不確実性の高い世界経済のため企業は不況に備え、積極的な設備投資をしにくくなります。それが安倍政権下での鈍い賃金上昇と、過去最高水準にある企業の内部留保が示しています。日銀の量的金融緩和は、企業にインフレ期待を持たせることで積極的な設備投資を促すものでしたが、うまくいっていません。日本のバブル崩壊やリーマンショックで痛い目を見た企業のデフレマインドは、予想以上に強固だったのです。

では、どのような環境になると企業は積極的に人材を確保し設備投資をするのかといえば、今後安定した需要が確実に見込めるようになることです。日本では企業だけでなく、個人の消費も低迷しています。そんなとき需要を増やせるのは政府だけです。発足当初から国土強靭化を掲げる安倍政権は、積極的に公共投資を増やしているというイメージがありますが、実はピークからの下がり続けてきた公共投資は下げ止まりはしたものの、増加したといえるレベルではないのが実情です。

出典:NIPPONの数字

豪雨や台風、地震などの自然災害で被害が拡大する惨状をみると、本当に国土強靭化を5年以上も進めてきたのか疑いたくなりますが、安倍首相は今後3年間を集中投資期間として、国土強じん化に注力する姿勢を鮮明化しているといいます。

国土強靭化により今後安定的な公共事業が見込めると、土木建設業者は安心して設備投資と人材確保に動くとこができます。デフレの状況から民間の設備投資や個人消費を増やすためには、財政出動による需要拡大を呼び水にするしか方法はありません。国土強靭化はそのための有効な手段となり、国民の安全性を高めるだけでなく内需拡大にも寄与する、まさに一石二鳥のソリューションなのです。

これまでは自民党内では財政健全化の声が強く、財政出動による景気対策に賛同が集まらなかったといいます。しかし自民党内では近年、デフレ脱却のためにも大幅な財政出動を求める声が高まっているといいます。安藤裕衆院議員らは7月に「早期デフレ脱却のため2019年度予算で10兆円の特別枠が必要」「企業貯蓄が減少に転じるまで、政府は負債の拡大をちゅうちょすべきでない」などの提言をまとました。安藤議員らの尽力もあり、自民党内の財政を巡る再建派と拡張派のバランスも、拡張派が力を増大させる方向にシフトしているといいます。「財政再建に積極的だった与党議員にも、変化が出て来た」との声があるほどです。

まとめ

5年以上日本のかじ取りをしてきた安倍政権ですが、金融緩和や新自由主義的な経済政策の限界が見え始めてきました。それでも国民からの支持率は高く、今後3年も続くとすると憲政史上最長の政権になることは確実です。安倍政権の評価は、これからの3年で決まります。楽観的な見方かもしれませんが、安倍首相は5年以上の経験で日本経済に本当に必要なことが何かが見えてきたのではないでしょうか。冒頭の記事にも「政権におけるマクロ政策の重点項目に変化がうかがわれる。それは、金融政策から財政政策へのシフトだ」とあります。安藤提言が経済政策に取り入れられることになれば、日本経済の復活が現実味を帯びてくるはずです。