本当の目的は貿易赤字の是正ではない?トランプ大統領は中国を潰そうとしている

2018年9月25日

米中貿易戦争が泥沼化しています。メディアでは米中だけの問題に留まらず、世界的なリスクに拡大するとの悲観的な見方が強いようですが、実際のところはどうでしょう。個人的には仮想敵国の中国が弱体し、グローバル化の流れが変わることをになれば歓迎したいと思うのですが、そう単純な話でもなさそうで今後の動きには注意が必要です。

下がる中国株と上がる米国株

米国のトランプ政権は日本時間の9月24日、中国の2000億ドル(約22兆円)分の輸入品に10%の追加関税を課す第3弾の制裁を発動しました。対象は、家具や家電、衣類などの日用品などで、既に対象となっている500億ドルと合わせて、中国からの輸入額のほぼ半分の2500億ドルに追加関税が課せられることになります。これまでは中国のハイテク産業振興戦略が重点とする品目を主な標的にしていましたが、第3弾は生活必需品にまで広げました。

中国も報復措置として、米国から輸入している液化天然ガスや食品などおよそ600億ドル相当に5~10%の追加関税をかけると発表しています。過去の実施分と合わせた報復対象は、米国からの年間輸入実績(約1300億ドル)の8割以上に達しています。トランプ大統領は中国が報復措置をとれば輸入品全てに追加関税を課すとも表明していましたので、米中の貿易戦争は長期化するとの見方が大勢のようです。

貿易戦争に勝者はいない」といわれるように、メディアでは米中どちらにとってもデメリットが大きいとの報道が目立ちますが実際のところはどうでしょう。参考指標として、景気の先行きを表しているといわれる株価をみると、この一年で大きく値を下げた中国株に対し、米国の株価は上昇の一途をたどっています。

中国株チャート
米国株チャート

それでも第3弾の制裁でこれまでの追加関税25%ではなく10%にしたのは、米国内の経済に与えるデメリットに考慮したことだと思われ、米国にも貿易戦争による「痛み」が伴うのも確かなようです。米国内の中国からの輸入に依存していく企業は、追加関税分の値上げを商品に転嫁しなければならないため、売り上げ減につながる可能性が高まります。また日本を始め中国に生産拠点を持つ外国企業は多く、ベトナムやカンボジアなど近隣諸国への拠点移転を真剣に検討しているといいます。また、名目上は中国の知的財産権の侵害に対抗した措置としていますが、トランプ大統領が強硬に貿易戦争に突き進むのは別の目算があるとの見方もあります。

米中冷戦は既に始まっている?

親中だったオバマ大統領からトランプ大統領に変わり、中国への対決姿勢が鮮明化しています。その理由としては、このままのペースで中国が経済成長を続けていけば、遠からず米国のGDPを抜くことは確実で、米国の覇権が脅かされていることが大きいでしょう。しかも相手は選挙の自由もない共産党独裁国家です。日本では考えられないほど、中国に対する脅威を感じているのが米国であり、トランプ大統領ではないでしょうか。

最近ウイグルの問題を米国が取り上げてきたのは、貿易戦争と呼ばれるものが実は貿易だけの問題では無いということを如実に示しているといいます。現代でも人権弾圧をしている非民主主義の国が存在していることを、トランプ大統領は毛嫌いしているのではないでしょうか。批判の多いトランプ大統領ですが、日本の北朝鮮による拉致問題にも真剣に取り組む姿勢を見せたように、不公正な貿易や人権侵害に対する正義を絶対的な価値観として持っているように感じます。そのためには戦争も辞さないという覚悟があるのではないでしょうか。

しかも米国は、中国が太刀打ちできない最新兵器に裏打ちされた強大な軍事力だけでは無く、血を流さない戦争、無血戦争においても圧倒的な強さを持っています。貿易戦争もそのひとつで、また経済制裁も長期的に対象国の国力を奪う有効な戦術であり、対北朝鮮では最近効果が見え始めています。

さらに見逃しがちではありますが、米国最大の武器は「金融」です。基軸通貨を有し、世界の資金の流れを支配している米国は絶対的に有利な立場にあるのです。貿易戦争の裏で、中国への締め付けは厳しさを増してくるはずです。そう考えると、中国には勝ち目のない戦いなのかもしれません。

まとめ

貿易戦争だけに目を奪われていては、米中の冷戦の本質を理解できないでしょう。軍事や金融では圧倒的な有利な立場にある米国ですが、国民を犠牲にしてでも共産党の意向で何でもできる独裁国家であることが中国は唯一の強みです。民主主義国家である米国は、国民からの支持を失えば強硬な手段がとれないという弱みもあります。日本だけでなく、米国のメディアも反トランプが大勢を占めています。中国はトランプ大統領が退任するまで強硬な対米姿勢を控え、静観する戦術をとる可能性もあります。そして、次期大統領が親中国派になるような工作を仕掛けてくるでしょう。日本でも、長期的な視野で中国との付き合い方を真剣に考える必要がありそうです。