脱デフレと財政再建の両立は可能?不可能なことを求める中国新聞

2018年9月23日の中国新聞の記事に、「安倍一強の行方 連続3選後の課題 脱デフレ・財政再建遠く」とうものがありました。記事は、「自民党総裁選に勝利した安倍晋三首相は、公約とするデフレからの完全脱却を果たせないまま新たな総裁任期に入った」の一文から始まります。

出典:PAKUTASO

脱デフレと財政再建の両立は可能?

第二次安倍政権が発足し6年になろうとしていますが、中国新聞の指摘するようにデフレからの完全脱却には至っていません。最優先課題のデフレ脱却ができていない以上、安倍政権には退陣して欲しいと思う気持ちはありますが、退陣後に安倍政権以上にデフレ脱却をできそうな有力政治家が見当たらないのが悩ましいところです。石破氏、岸田氏、野田氏、小泉氏など次期首相候補と呼ばれる人たちは、いずれも増税・緊縮財政による財政再建派であることに絶望的な気持ちになります。

新聞も気楽なものです。「脱デフレはまだか、財政再建はまだか」と批判さえしておけば消費増税時の軽減税率適用のカギを握る財務省からも目を付けられず、国民からも賛同を得ることができます。そもそも「脱デフレと財政再建の両立は可能なのか」という問題があるにも関わらず、そこには一切タッチしません。冒頭の中国新聞の記事にしても、「広く負担増を求める消費税率10%への引き上げを2度先送りしてきた対応は、財政再建の道に影を落としている」と無知をさらけ出す始末です。

デフレ脱却するためには需要増が不可欠です。デフレとはモノやサービスの価格が下がることを意味するので、モノやサービスの需要が増えないことには価格が上がらないのは明白です。広く負担増を求める消費増税をしたらモノやサービスが売れなくなり、デフレが加速してしまいます。お金持ち限定で増税をしても消費や生活レベルは落ちませんが、貧困層や余裕のない子育て世代にまで広く負担増を求める消費増税は、もともと所得に占める消費の割合の高い人たちの負担割合が増え、貧しいものはもっと貧しくなります。「弱者の見方中国新聞」が消費増税を支持するのは、まったく理解できません

デフレ下で財政再建に本気で取り組むには、富裕層限定で相続税や固定資産税などの負担を増やし再分配機能を高めるしか方法はないのではないでしょうか。いま政府が取り組む社会保険料の増額や年金受け取り年齢の引き上げ、消費増税などは消費を落ち込ませるだけでなく、若い世代の将来不安を高め、元から強い日本人の貯蓄指向をさらに強化する結果になりデフレを促進します。

デフレから脱却できないことには財政再建などできない

貨幣理論の原則「誰かの負債は誰かの資産」がある限り、家計や企業が消費・投資を増やさないデフレ下では財政再建はできません。日本では政府の負債が問題になっていますが、一方で家計や企業の資産は膨らんでいます。こんな状況で政府の負債を減らすという財政再建を強行すると家計や企業の資産が目減りし経済活動が減速しますので、財政再建を強行したギリシャのようにGDPをピークから2割減らし、失業率を20%高めてもいいという覚悟が必要です。当然歳出は抑えられるので社会保障費は大きく減らされ、年金や失業手当がもらえる保障はありません。GDPが20%減るということは、所得も同程度減ることになります。

デフレ下での財政再建とは、家計や企業への分配を減らし資産を吸い上げることを意味するので当然の結果です。そのため財政再建は、まずデフレから脱却してから経済成長による税収アップにより実現するべきなのですが、なぜかマスコミからそのような声はあまり聞こえてきません。デフレから脱却するには一時的に政府支出を増やす必要があるため、財政再建は遠のきます。しかし景気が成長軌道に乗り適度なインフレ傾向になれば税収が増えますので、財政再建の道筋が見えてきます。もしデフレ下で財政再建した結果国民がもっと貧しくなったとしたら、「国民の痛みを恐れずよくやった」とマスコミは政府を評価するのでしょうか?あり得ませんよね。

まとめ

脱デフレ・財政再建の両立という不可能なことを求めながらその有効手段を示さず、「財政再建をひとまず置いといてデフレ脱却に全力を尽くす」とう正しいソリューションに対して激しくバッシングをする。マスコミって本当にいい加減なものです。そもそも、「デフレ下で政府支出が減ればGDPが落ち込み、税収が減る」という基本原理さえ理解しているのか怪しいものです。デフレ脱却が見えても財政が悪化したら叩かれ、財政が健全化しても国民が貧しくなったら叩かれる。叩かれて仕方のない政策もあるのは確かですが、安倍政権が気の毒にみえてきます。それどころか、どんな政権であろうとデフレ脱却と財政再建を追求する限り、日本が豊かになることはないでしょう。