財政破綻と原発リスク。限りなく低い確率のリスクに国民生活が影響される虚しさ

東京五輪関連の支出が膨らんでいることに対し、SNSでは多くの批判があがっています。

東京五輪・パラ経費3兆円超か 検査院指摘、国支出8011億円に膨らむ

2020年東京五輪・パラリンピックをめぐり、会計検査院は4日、平成29年度までの5年間に国が支出した関連経費が約8011億円に上ったと明らかにした。これまで国の負担分は会場整備費を中心に1500億円としていたが、大きく上回った。検査院は30年度以降も多額の支出が見込まれるとしており、大会組織委員会と東京都が見込む事業費計2兆100億円を合わせると、経費の総額は3兆円を超える可能性が出てきた。

個人的には、ビッグイベントなので節約せずにエンターテイメントを盛り上げるため、来場者の安全性と利便性を高めるためにお金を使って欲しいと考えていますが、「当初の見積もりとの差がっ激しすぎる」、「何に使ているのか国民に説明して欲しい」、「そんなお金があるなら税金減らしてくれ」と憤慨する気持ちもわかります。ただ、「将来に負担を残すな」、「無駄遣いはやめろ」、「公務員の給料を減らせ」との指摘には抵抗を感じます。

限りなく低いリスクを心配し過ぎることで国民生活に悪影響が

まず、東京五輪に反対する人たちの多くが共有しているのは、「日本は財政破綻の危機にある」というものです。もし多くの人が、「日本には投資先がなく無駄に有り余っているお金がたくさんある(だから国債の金利が世界最低水準)」という事実を認識し、「バブル崩壊後民間がお金を使わなくなっている」という本当の問題を認識していたら、オリンピックや公共事業などのビッグプロジェクトに国が支出することに対して、それほどの不満が上がってこないのでは、と感じます。

また、多くの人たちがお金に対する認識に誤解があることも、日本の経済成長を阻害する重しになっています。「国の借金」と呼ばれるものは正確には「政府の借金」です。そのため、政府が借金を増やすことに抵抗を感じているのですが、政府が借金をすることでそのお金は民間に移ることになります。政府の借金が大きいことは、それだけ国民の資産が大きいことになります。好景気とされるのは、政府ではなく民間が借金を増やしている状況のことで、そうなると税収が増えるので政府の借金は自然と減っていきますが、民間の借金が増えているので、実際には「国としてのトータルの借金」は減っていないのです。

そこまで理解できたら、「財政破綻」という小さなリスクを大げさに捉え、政府の支出を絞るよう求める行動が、国民を貧しくしている実態が理解できます。また、オリンピック関連の支出は特定の土木建設業者に渡るとのマイナスイメージもありますが、スタジアムの建設だけでなく電気自動車や5Gの通信技術への投資など支出対象は幅広く、将来的に国民の生活の質を高める効果もあります。「政府も節約しろ」との声が、自分たちが将来豊かになる可能性をつぶす本末転倒な結果になることも理解する必要があるのです。

天文学的に低い確率を心配しながら車を運転できる矛盾

原発に反対する人たちは、よく車を運転できるなあと思ってしまいます。福島の原発事故は確かに大きな被害を出しましたが、一人でも直接的な犠牲者が出たのでしょうか?エネルギー資源が乏しい日本は、リスクはありますが安全技術を高めることで原子力を発電に利用することに成功しました。

人類の歴史は、どのように利便性を高めるのかという課題との闘いでした。代表的なのが原子力発電や自動車です。どちらもリスクがありますが、そのリスクを超える利便性を授受できるため普及してきたのです。なぜか日本では原子力のリスクを過大評価する人が多いのですが、原子力発電と車による犠牲者の数を比較すれば、車による死亡や怪我のリスクが高いのは歴然です。それでも、原発に反対する人たちが、車社会に反対するという運動は聞いたことがありません。

また、原子力発電を止めることによる火力発電の増設が引き起こす二酸化炭素の排出量増加、それによる地球温暖化のリスク、北海道の地震で明らかになった発電需給のひっ迫の状態化によるブラックアウトのリスク、価格が高騰する原油輸入量増加による貿易赤字拡大リスクなど、原子力発電反対の人たちは考えているのでしょうか。

約9万年前の大規模噴火を想定した判決で差し止められていた原発の再稼働が認められました。ある新聞は批判していますが、常識的な判断でしょう。

伊方原発3号機再稼働認める 広島高裁決定 四電の異議認め差し止め取り消し

四国電力伊方(いかた)原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を差し止めた広島高裁の仮処分決定を不服とした四電の申し立てによる異議審で、広島高裁(三木昌之裁判長)は25日、四電の異議を認め、仮処分を取り消す決定をした。3号機の運転が法的に可能になる。

2017年12月広島高裁は、約9万年前の大規模噴火を想定した上で「火砕流が原発に到達する可能性が小さいとはいえず、原発の立地に適していない」として原発の運転を差し止めていました。同原発から熊本県の阿蘇カルデラ(阿蘇山)は約130キロ離れています。大規模な噴火が起きたのは約9万年前です。そんなリスクまで考慮していたらどこにも家を建てらず、日本では人が生活していくのは不可能でしょう。

まとめ

テレビや新聞だけでなく、ブログも含めたメディアは人々の不安を高めることで集客する営利目的の一面があります。個々で冷静にリスクを検証するのは不可能で、多くの人が報道を鵜呑みにしてしまうことは珍しくありません。昨今話題になっているフェイクニュースがそうで、後で間違いが訂正されたとしても一旦報じられてしまうと、そのインパクトの方が大きいため拡散されてしまいます。日本では「国の借金」問題が代表例で、フェイクニュースが国民生活に制約をかけるという馬鹿馬鹿しい状況になっています。インターネットメディアの発達で騙されない人も増えてきましたが、冒頭で紹介した記事に対する反応をみると、まだまだ根強いものがあると思い知らされます。