目先の損得では理解できない貿易戦争。古き良き時代を取り戻そうとしている米国

特に日本の新聞とテレビでは、「トランプ大統領が仕掛ける貿易戦争で先行きが不透明な世界経済」との報道で留まっています。

貿易摩擦、米への打撃最大=日本の成長も0.2%下げ-IMF

国際通貨基金(IMF)は9日発表した世界経済見通しで、「米中貿易戦争」などの通商摩擦が深刻化すれば、米国の成長率が長期的に0.9%押し下げられるとの試算をまとめた。制裁関税を各国・地域に仕掛ける米国が、最も大きな打撃を受けると分析した。日本にも成長率を0.2%押し下げる影響が及ぶとした。

反トランプが主流のメディアでは、いわゆる「保護主義」を掲げるトランプ大統領を批判的に報じています。しかし米中対立は、最低でもリーマンショック後からの流れを見ないと現状は理解できないし、今後の予測もできません。「トランプ大統領はけしからん」と単純に片づけられる話ではないのです。

リーマンショック後、世界経済をけん引してきたチャイナマネー

2008年にリーマンショックが起き世界経済が低迷する中、中国だけはむしろ経済成長を早め、2010年に日本を抜き去り、その差は3倍にまで広がろうとしています。ちなみに中国の統計はフェイクで、実際のGDPは日本の倍の約1000兆円との説が有力になっていますが、日本より上なのは確実です。

出典:世界のネタ帳

リーマンショック後で世界経済が落ち込む中なぜ中国が成長できたかといえば、約4兆元(現ルートで約64兆円)もの大規模経済対策を打ち出したためです。この対応の速さは日本とは対極的で、リーマンショックの影響を軽く見積もり対策が後手後手になった日本から見たらうらやましくも思えます。

リーマンショックの影響で世界的に需要が落ち込む中、鉄鉱石や石炭などの鉱物資源や化成品などの工業製品を積極的に輸入したため、世界経済は回復に向かいます。また、裕福になった中国人が世界中を観光するようになり、彼らの「爆買い」は日本でも社会現象になりました。しかし一党独裁の中国では再分配機能が働かず、低所得者層にまで十分豊かさが行き渡らなかったため国内消費が伸びず、土地や株などの資産が膨らむバブルへと向かいます。また、副作用として生産過剰や国有企業の腐敗、汚職が蔓延し、貧富の格差は看過できないレベルまで拡大しています。

それでも経済大国に育った中国は、その有り余る生産力で他国のインフラ整備を担うなど拡大路線を突き進み、一帯一路政策やAIIB設立でハードと金融面で世界的影響力を増す戦略を増長させます。これまでそれを看過するどころか、チャイナマネーや人(工作員)の米国への浸透を許したオバマ大統領へのアンチテーゼとして登場したのトランプ大統領です。メディアでは批判の対象となるトランプ大統領ですが、米国の世論は反チャイナでは一致しているといいます。

世界を敵に回した中国の未来は厳しい

冒頭のIMFの予測でも、米国以外のサプライチェーンを見つけられるので中国にとっては貿易戦争の影響は少ないとありますが、事態はそう甘くありません。中国自身がそれを重く認識しているのでしょう。再び、景気刺激策を講じるとの報道が目立ち始めました。

中国、景気支援へ強力な刺激策講じる必要=環球時報

中国共産党の機関紙、人民日報系の環球時報は論評で、中国は経済を安定させる「重要な」時期にあり、景気支援に向けた強力な刺激策を講じる必要があるとの見解を示した。

米国からは貿易の制裁だけでなく、中国人の入国や金融面でも制裁を強化しています。世界各国が、米国が潰そうとしている相手とこれまで通りビジネスを継続したいとは普通考えないでしょう。人民軍の武器調達部も制裁対象となっていますので、もし金融機関が取引した場合、その金融機関まで致命的な制裁が課せられてしまい、危なっかしくて中国企業とのビジネスを控えることになるでしょう。既に中国からの企業の流出は始まっています。蜜月とされていたドイツとの関係も冷えつつあります。

また、マレーシアではマハティール氏が再び大統領に就き、モルジブでは親中国の現職大統領が破れました。通貨、株、土地の下落が始まっており、これまでのチャイナマネーの威力は失われつつあります。日本も、いつまでも成長する中国という幻想を抱いている場合ではありません。

トランプ大統領が掲げるのは保護主義ではなく、思想としてのグローバリズムの否定です。グローバリズムが常に善というのは間違いで、自国にとって善となるグローバリズムであれば受け入れると、ごく当たり前のことを主張しているだけです。グローバリズムで国内産業が空洞化し、モノは安くなりましたが賃金が上がらず国民が貧しくなってきた代表国が米国なのです。トランプ大統領は大統領選でも呼びかけたように、「再び米国を偉大な国にしよう」としているのです。

まとめ

トランプ大統領がここまで反グローバリズムを明確に打ち出しているのに、安倍首相が思想としてのグローバリズムを継続しようとしているのは残念であり間違っていると思います。政権を維持するために経団連などの支援団体の意向には逆らえないのも分かりますが、そうであればせめて外需だけでなく、内需の拡大にも力を入れて欲しいところです。なぜか日本のメディアは、国民を貧しくするグローバリズムや中国を無批判で受け入れる向きがあります。じわじわ表にでてきた中国の実態をしれば、決して付き合うべき相手ではないことが理解できるはずです。