44年ぶりの高水準の有効求人倍率なのに賃金上昇が鈍い日本の不思議

雇用環境の改善を表すデータが報じらていますが、個人的にはまったく実感できませんし、もちろん恩恵も受けていません。「実際に売り手市場になっている。お前の努力不足だ」と突っ込まれそうですが、どうも個人の努力だけでは片づけられない構造問題もあるような気がします。

完全失業率、9月は2.3%に改善 有効求人倍率44年8カ月ぶり高水準

総務省が30日に発表した9月の完全失業率(季節調整値)は2.3%となり、前月の2.4%から低下した。厚生労働省が発表した同月の有効求人倍率(季節調整値)も1.64倍に上昇。1974年1月(1.64倍)以来、44年8カ月ぶりの高水準となった。雇用情勢は改善を続けている。

44年8カ月前との大きな違い

「有効求人倍率が1.64倍に上昇。1974年1月(1.64倍)以来、44年8カ月ぶりの高水準」と聞けば、「日本はどれだけ好景気なんだ!」と思いますが、44年8カ月前の日本と今の日本では、「本当に同じ日本なのか?」と思うほど大きな違いがあります。そう、「賃金」です。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構

44年前の1974年は、労働者は現在からは信じられないほどの賃金上昇という恩恵を受けていました。グラフでざっと見る限り、1年に1万円ほど上昇しています。なぜそれほど賃金が上昇していたのかといえば、人手不足だったからです。企業は賃金を上げないと、人を確保できなかったからです。

でもおかしいですよね。昨今の人手不足は深刻化しているのに、賃金上昇は鈍いままです。その要因は様々あると思いますが、大きな要因は「低賃金でも人の確保が可能な雇用環境」になったことが大きいと思います。非正規労働者の割合は全体の4割程度まで高まり、外国人労働者の受け入れも拡大しています。人手不足とはいえ、専門職以外はわざわざ賃金を上げなくてもなんとか人を確保できる雇用環境になったことが、44年前とは大きな違いなのです。

実際に低賃金のパートで気楽に働くぼくは人手不足による賃金上昇を期待しているのですが、今の職場ではまったくありませんし、求人をみても賃金が上がっているような感じはまったくありません。企業の多くは、「人手不足だから求人は出すけど、賃金を上げる気はないよ」という姿勢の表れではないのでしょうか。

消費税、緊縮財政、グローバル化で進む国民の貧困化

雇用の規制緩和に加え、1990年代後半から賃金が下落傾向になった要因がいつくかあります。そのひとつが1997年の3%から5%への消費増税です。グラフをみると、消費増税を境に見事に賃金が下がっています。それだけ消費増税は、景気を冷やす効果が大きいのです。バブル崩壊後の「失われた10年」から回復しようとしていた矢先だったため、そのネガティブインパクトは絶大なものでした。

バブル崩壊の影響が本格化するのは、消費増税と公共事業などの政府支出が削られる緊縮財政が本格化した1997年以降です。バブル崩壊後、家計や個人の消費・投資が落ち込む中、政府支出の拡大でなんとか持ちこたえてきたのに、政府支出まで削減したため日本経済全体に大きな悪影響が及び、企業はこれまでのような賃金上昇を継続できなくなります。

また、グローバル化も賃金上昇の足かせになっています。グローバル化により輸出企業は業績を伸ばしていますが、グローバルで競争力のある製品を作るためには、より人件費の安い国へ生産拠点を移し、徹底的なコスト削減を進めることになります。内需が縮小して消費が落ち込んでも、海外で稼げるので関係ありません。輸出で稼げる企業は、むしろ内需が拡大し賃金上昇してしまっては迷惑なのです。経団連が内需を縮小する消費増税に賛成なのも、それが理由だと思います。

まとめ

雇用の規制緩和、消費増税、緊縮財政、グローバル化が賃金上昇を抑えてきたのは明らかですが、いまだに日本はその路線を突き進もうとしています。しかしそれは決して既定路線ではなく、国民の多くが望めば止められることなのです。米国のトランプ大統領の誕生がそうですし、EUでも日本と同じ路線を進んできたドイツの凋落が目に見えてきました。そろそろ日本でも、これまでの間違いに気づいてもいいころだと思うのですが。