細々と使われているモールス信号。郷愁感のある「トンツー」音が人々を引きつける

テクノロジー系海外ニュースの翻訳ライターを副業でやっています。この仕事を請け負うに当たり、トライアルの合格を経て採用されたわけですが、実はこれまでテクノロジーに関係する職に就いてきたわけでもなく、どちらかといえば英語のスキルが評価されてライター陣の一人に加わることになりました。

案件の内容は多岐にわたり、まったく知らない分野でも、ネットで調べながらなんとか対応しているような状態です。始めた頃はまさに手探り状態で、編集にざっくりと内容変更されるという憂き目にもあってきました。それでも翻訳ライター歴3年目になり、調べ方や書き方のコツ、分からないことでもごまかしながら説明するスキル(-_-;)などが身についてきました。

しかし、テクノロジー知識の浅さは埋めがたく、もっと深い理解に基づいた記事作成ができればと日々考えています。そこで、先日の案件にあった「モールス信号」について、今回は調べたいと思います。

モールス信号とは

モールス信号とはモールス符号を使った信号のことで、主に電信(電気通信)で用いられます。モールス符号とは符号化された文字コードのことで、和文の場合「イロハ・・・」を、欧文の場合「ABC・・・」を単純な電気信号として送信できるようコード変換したものになります。

符号は短点を「トン」長点を「ツー」と表現するため、モールス信号は俗に「トンツー」呼ばれます。例えば「A」の符号は「・-(トンツー)」となり、連続で符号を送信することで文字が単語・文章になり、相手に何かを伝えることができます。短点と長点の組み合わせだけで構成される単純、かつ世界共通(欧文の場合)の符号なので、電信でなくとも相手が確認できる音響や発光信号でも会話できるという特徴があります。

モールス信号の歴史

モールス信号を開発したのは、米国のサミュエル・フィンレイ・ブリース・モールス氏です。1837年に符号を使って電信実験をしたのが始まりです。当時は電線を使えばかなり遠くまで電流が送れることが判明したため、その原理を使って遠距離通信ができないかと模索されていました。複数のアイデアがあり実験が行われましたが、その後淘汰が進み、紆余曲折を経て実用化されたのがモールス信号でした。

1900年代前半までは、電報などの文字通信に多く使われていましたが、符号でなくても文字や音声を伝えられる技術が発明され普及が進むと、モールス信号は徐々に使われなくなってきます。今では一部の漁業無線、陸上自衛隊、野戦通信、アマチュア無線などで使われるのみです。

モールス信号に必要な機材

モールス信号を使うためには、モールス符号を出力する電鍵(でんけん)が必要になります。電鍵には、主に「縦振れ(縦振り)」と「横振れ(横振り)」があり、縦振れ(英語:ストレート・キー、シングル・キー)は、つまみを上下に動かすことでモールス符号を送信するタイプで、短点・長点のタイミングの調整は全て手動なため、正確な符号を送信するには相当の訓練を必要とするといいます。

縦振れ電鍵(第二次世界大戦期にアメリカ軍で使用されたモデル)photo:Wikipedia

一方横振れは、板状のつまみ(レバー)を左右に動かすことでモールス符号を送信するタイプで、
扱いやすさから現在ではこちらが主流になっています。電鍵で信号を送受信するには、電信機が必要になります。符号の送信もそうですが、受信にも符号の音から単語を解読する必要があるので、相当なトレーニングが必要になります。

ぼくが先日書いた記事はディスプレイ表示付きのモールス信号トレーニングデバイスに関するもので、受信した符号をデコードしたものをディスプレイに表示する機能があり、初心者には役に立ちそうです。

廃れるモールス信号と可能性

モールス信号を実際に利用している人は限られます。音声や文章が、自由に送受信できる時代なので当然でしょう。傍受されにくいという特徴から、諜報活動の送受信手段としてスパイがモールス信号を使っているという話も聞きます。映画やドラマ、小説ではそんな場面もありますが、本当かわかりません。また、あえてアマチュア無線でモールス信号を使っている人たちもいるようで、何かしら人を引き付ける魅力があるのでしょう。今ではモールス符号を理解している人は少なく、何か特別な通信を楽しんでいるようなスリル感や優越感がいいのかもしれません。

また近年では、中東で人質になって殺害されたとみられる後藤健二氏が、犯人のビデオメッセージの際不自然な瞬きをしたことから、モールス信号でメッセージを送っていたと話題になりました。結局フェイクニュースだったわけですが、専門家によると瞬きでモールス符号を表現するのはかなり上級者でも難しいようです。

このように廃れつつあるモールス信号なのですが、その原始的な原理から、衛星や電話回線など通信手段が破壊されたときにはもしかしたら最後の通信手段として役に立つかもしれません。

まとめ

インターネットの普及により情報収集が容易になり、専門分でなくともそれなりの内容の記事が書けるようになってきました。むしろ専門知識がないからこと、素人目線の平易で分かりやすい文章で説明できるというメリットもあると思いますが、デメリットとしては、誰もがぼくのような「にわか」ライターになれる可能性があり、ライター業の単価が下がってきていることです。

そこで必要なのがやはり得意分野や技術で、ぼくの場合英語がそれに当たるわけですが、さらにテクノロジー知識という武器を手に入れれば「にわか」から脱出できるのかなあと思います。