わざとチープに作っている?『黄昏流星群』が別の意味で面白い

熟年夫婦の不倫を描いた『黄昏流星群』ですが、色々な意味で話題になっています。原作は弘兼憲史の漫画で、ぼくはまったく読んだことがなくドラマにも興味がなかったのですが、嫁さんが毎回録画しているので仕事の合間に観ています。どの視点で嫁さんがこのドラマを観ているのか怖くて聞けませんが、何となく面白さが分かってきました。

雑な合成とストーリーが非現実過ぎて気楽に観られるドラマ

第一話で、佐々木蔵之介演じるエリート銀行マン滝沢完治が、予期せぬ左遷宣告を受けたショックから、家族に内緒で単身スイス旅行へ向かいます。原作を知らないぼくは、その展開に違和感ありありだったのですが、ネットではスイスのマッターホルンでの合成映像が雑過ぎると話題になりました。

滝沢がマッターホルンで出会ったのが黒木瞳演じる目黒栞です。二人は意気投合し、いわゆる「一線越え」手前まで行きますが気まずくなり、そのまま別れてしまいます。そして帰国した滝沢は、左遷先の食堂で働く栞と偶然出会うことになります。原作がそうなのでしょうが、あまりの天文学的確率の低い偶然に、恐らく多くの視聴者はついていけなかったのではないでしょうか。『島耕作』シリーズを描いた弘兼氏の作品に馴染みのある人であれば、「まあ、そうだろうな」と思うのでしょう。

さらに中山美穂演じる滝沢の妻の真璃子や、娘の美咲とその婚約者が登場するのですが、婚約者は真璃子に好意を持ち、美咲は高田純次(それだけで面白い)演じる大学の恩師と付き合い、婚約者はそのことを知っていますが、病気の母親を安心させたいために結婚の準備を進めている、というストーリーです。もう、なにがなんだか。

平然と自分を棚に上げて説教できる中年が妙にリアル

あまりにも相手を尊重しない人間関係が展開されるため、「不倫がばれようが、誰が不幸になろうが知ったこっちゃない」という気楽な視点で観ていられるのがぼくの感じるドラマの魅力ですが、制作側がそれを意図しているのかは分かりません。

またドラマでは、滝沢と栞の不倫は、これまた偶然に美咲が知るところになり、滝もまた、美咲が恩師と付き合っていることを知ることになります。そして前回の放送では、滝沢が娘の美咲に「恩師とは別れなさい」と説教する場面があります。ここで誰もが、「お前が言うな」と突っ込むはずです。案の定娘からは、「分かった。その代わりお父さんも分かれてね」と告げられます。そこで滝沢は、「え?」という意外そうな顔をします。そこで再び視聴者は、「そりゃ、そうなるわな」と突っ込むことになります。

偶然が重なりあい、非現実的な展開が逆に魅力になっているドラマですが、登場人物たちの自己中心的な行動がやたらとリアルに感じます。滝沢が怪我をして入院したときは、不倫相手の栞が軽率にも病院を訪れて面会しようとします。「いや、家族がいるからばれますよ」と視聴者は思います。案の定、娘の美咲と出くわします。自分たちの立場をわきまえず、相手に好意を持ち行動を起こす感覚も自己中心的な考えがもたらすものであり、現実社会でも日常的に繰り返されているのかもしれません。実は非現実的だと思っている世界が、妙にリアルだったりするのです。

まとめ

今までは日本のドラマをあまり観る方ではなかったのですが、最近は意識的に観るように心がけており、その面白さが分かってきました。ネットが普及してテレビの役割が終わりつつあるという見方もありますが、まだまだテレビの存在感は大きいようです。ネットの動画はテレビのコンテンツが多く、ネットニュースでもテレビの報道が元になったものが多いのが現状です。視聴者側としてはテレビやネットとは関係なく、視聴者争いの競争が高まり、コンテンツの質が上がることは歓迎したいと思います。