ファーウェイ幹部逮捕とカナダ人拘束の裏にある次世代モバイル通信方式「5G」競争

カナダで華為技術(ファーウェイ)の幹部が逮捕されてから、中国で3人目のカナダ人が拘束されるという異常な状況が続いています。

中国またカナダ人拘束 3人目 孟容疑者の米への引き渡し阻止

カナダ紙ナショナル・ポスト(電子版)は19日、中国で新たにカナダ人が拘束されたと報じた。中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の幹部が米当局の要請によりカナダで逮捕された今月1日以降、中国でカナダ人の拘束が確認されたのは3人目となる。

記事にもあるように、カナダで逮捕されたファーウェイのCFO孟晩舟(もう・ばんしゅう)容疑者は保釈を認められましたがカナダ当局の監視下に置かれており、今後、カナダの裁判所が米国への引き渡しの可否を判断します。中国側は拘束したカナダ人を事実上の人質として、カナダ政府に対し、孟容疑者を米国に引き渡さないよう圧力をかけているわけです。

ファーウェイ幹部の逮捕とカナダ人の拘束の裏にある5G競争

米国の要請によるファーウェイ幹部の逮捕と、その報復としての中国によるカナダ人の拘束には、次世代モバイル通信方式「5G」を巡る開発競争が大きくかかわっています。

5Gは世界各国で、2019年から2020年にかけての商用化に向けた準備が急速に進められています。5Gを実現するためには、ネットワークインフラや端末を開発するための機器やチップが必要となり、それらの開発競争も急速に激しさを増しています。その中でリードするのが、2020年の東京五輪に合わせてサービスの提供を予定している日本のほか、既に平昌五輪で5Gの試験サービスを実施した韓国、米国や中国などです。

通信機器ベンダーとして世界的に大きなシェアを持つ企業は、エリクソンやノキアなどの北欧勢と、ファーウェイやZTEなどの中国勢になります。米国としては、事実上敵国の中国のベンダーが米国の通信インフラに入り込むことは絶対に避けたいと考えています。昨今報道されるように、中国製の通信機器には情報スパイウェアなどのバックドアが仕掛けられている可能性があり、情報漏洩による国家の安全保障が脅かされかねないからです。

米国は安全保障上の問題を理由に、同盟国を中心にファーウェイなど中国製の通信機器を使わないよう要請しており、各国で中国製の通信機器の締め出しが始まっています。そんな中起きたファーウェイ幹部の逮捕とその後続く中国による報復措置が、「5G」を巡る競争に関係ないと考えるのは無理があるはずです。

5Gって何がすごいの?

出典:総務省

次世代モバイル通信「5G」のGは「Generation(世代)」を意味します。モバイルネットワークの第5世代技術となり、Wi-Fi並みの低電力で10Gbpsの超高速通信が可能になります。

第1世代(1G)は、80年代から90年代にかけて日本、米国、欧州の地域別に技術開発が進められ商用化された「アナログ無線技術のモバイルネットワーク」です。90年代になると、デジタル無線による携帯電話システム第2世代(2G)が登場します。

その後、3Gのコア技術となる「CDMA(Code Division Multiple Access、符号分割多元接続)」を用いた「cdmaOne」が商用化され、国際連合の専門機関であるITU(国際電気通信連合)が標準化を進めたのが3Gです。3Gの技術をベースに、10M~20Mbpsクラスの高速化をする方法が3.5Gと呼ばれ、さらなる高速化のために4G向けの新技術を先取りした3.9Gと呼ばれる高速化技術「LTE」が開発されました。

そして現在、現行LTEの100倍10Gbpsクラスの超高速無線通信を目指した5Gの開発が進められています。1Gから4Gが携帯電話からスマーフォンのための通信技術だとすると、5Gは「2020年代の社会を支えるすべてのアプリケーションのためのモバイルネットワーク技術」になります。(参考

接続機器数は現行LTEの100倍の100万台/km²、遅延は現行LTEの1/10の1ミリ秒程度となり、2時間の映画を3秒でダウンロードできるといいます。また、利用者が遅延(タイムラグ)を意識することなく、リアルタイムに遠隔地のロボットなどを操作・制御できるようになるため、生産性の大幅な向上が期待できます。さらにスマホ、PCをはじめ、身の回りのあらゆる機器がネットに接続できるようになり、ぼくたちの生活を一新するようなインパクトを与える革新的技術になります。それだけに各国の開発競争は熾烈になり、民間だけでなく、各国の政府も逮捕や拘束という手荒な手段で競争を勝ちぬこうとしているのです。

まとめ

技術力では世界に負けない日本ですが、半導体やパソコンのOSなど国際的なスタンダードになるような開発競争では分が悪いのがこれまでの日本でした。今回は中国排除の動きで日本が多少優位になっていますが、米国との利害が一致したことによる幸運でしかありません。国際的な影響力の低さは国民性が影響しているのか軍事力が相対的に弱いためか分かりませんが、そのことで国民は不利益を被っています。せめて政治には「世界のために」といった偽善的な発言ではなく、たまには保護主義的と批判されようが国民の利益を最優先する姿勢を見せて欲しいものです。